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153≪国変え物語・13・緊急秀吉改造作戦≫
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てんせい少女
153≪国変え物語・13・緊急秀吉改造作戦≫
立ちションで家康の国替えが決まった話は有名になった。
気楽さ、人を喰ったところ、そして、何よりも秀吉に次ぐ勢力である家康を明るく有無を言わせず承知させたところに人は感心した。
「こんな芸当は、関白様やないとでけへんこっちゃなあ!」
道頓などは感心しきりで、元々の秀吉好きが、さらに高じて、頼まれもしないのに大坂の民生安定に努め、かねがね計画していた道頓堀の掘削計画を、一から練り直した。
「関白殿下の大坂や、もっとごっついこと考えならな!」
道頓は、大坂の主だった町人と相談し、浪速改造計画に没頭した。
美奈は、立ちション国替えが自分のプランであったことは誰にも言わなかったが、一人の例外がいた。
石川五右衛門である。
「目出度い話じゃないか。これで秀吉の元に天下が統一された。天下は平和になる。オレの商売も繁盛する。良いことずくめだ」
「それがね、その時の小便を、ちょっと検査してみたんだけどね……秀吉さんにボケの兆候が出ているの」
「どういうボケだ。ボケようによっちゃ、周りが固めてやれば済む話だ。長い目で見れば、天下の乱になりかねねえが」
「誇大妄想型……自分を実際以上にえらく思って、感情の抑制が効かなくなる」
「無用の死人や戦が起こりかねないぜ」
歴史通りにいけば、この1591年に、千利休が切腹させられ、あくる年には、なんの名分もない朝鮮への侵略が始まる。そして、そのあくる年には鶴松が死に、秀吉の誇大妄想と猜疑心は病的に進行する。美奈の正念場になってきた。
「大坂大祭りをやろ!」
秀吉の精神的な疾病は伏せたまま、天下統一の記念行事をやればと、美奈は道頓に持ち込んだ。道頓も秀吉も喜び、大坂や天下の人々の役に立つことを考えた。
「単なる祭りではのうて、天下が関白殿下の元に統一されましたること、また、これから天下発展の目標を指し示すドンチャン騒ぎをやってみたいとぞんじまする」
道頓は千利休を筆頭人として、大坂の商人たちが秀吉に申し入れる形をとった。
美奈は、その半月ほど前から、認知症の進行を抑える薬を秀吉に処方するとともに、国の内外の珍しいものを見せて刺激を与えておいた。これにはヒントがあった。長曾我部元親が土佐で獲れた鯨を秀吉に見せたところ、秀吉は大そう喜んだ。
その珍しがりに目を付けたのである。で、秀吉は閃いた。
「よし、期間を半年といたし、天下の物産会を兼ねた大祭りにいたそう!」
秀吉は、これに熱中した。
物産会は月ごとに十か国ほどにまとめ、日によって日本六十余州の日を決め、後世の万博のようなことを計画した。
そして、千利休の切腹も、文禄の役も起こらなかった。
秀吉改造計画は、とりあえずは成功した。
153≪国変え物語・13・緊急秀吉改造作戦≫
立ちションで家康の国替えが決まった話は有名になった。
気楽さ、人を喰ったところ、そして、何よりも秀吉に次ぐ勢力である家康を明るく有無を言わせず承知させたところに人は感心した。
「こんな芸当は、関白様やないとでけへんこっちゃなあ!」
道頓などは感心しきりで、元々の秀吉好きが、さらに高じて、頼まれもしないのに大坂の民生安定に努め、かねがね計画していた道頓堀の掘削計画を、一から練り直した。
「関白殿下の大坂や、もっとごっついこと考えならな!」
道頓は、大坂の主だった町人と相談し、浪速改造計画に没頭した。
美奈は、立ちション国替えが自分のプランであったことは誰にも言わなかったが、一人の例外がいた。
石川五右衛門である。
「目出度い話じゃないか。これで秀吉の元に天下が統一された。天下は平和になる。オレの商売も繁盛する。良いことずくめだ」
「それがね、その時の小便を、ちょっと検査してみたんだけどね……秀吉さんにボケの兆候が出ているの」
「どういうボケだ。ボケようによっちゃ、周りが固めてやれば済む話だ。長い目で見れば、天下の乱になりかねねえが」
「誇大妄想型……自分を実際以上にえらく思って、感情の抑制が効かなくなる」
「無用の死人や戦が起こりかねないぜ」
歴史通りにいけば、この1591年に、千利休が切腹させられ、あくる年には、なんの名分もない朝鮮への侵略が始まる。そして、そのあくる年には鶴松が死に、秀吉の誇大妄想と猜疑心は病的に進行する。美奈の正念場になってきた。
「大坂大祭りをやろ!」
秀吉の精神的な疾病は伏せたまま、天下統一の記念行事をやればと、美奈は道頓に持ち込んだ。道頓も秀吉も喜び、大坂や天下の人々の役に立つことを考えた。
「単なる祭りではのうて、天下が関白殿下の元に統一されましたること、また、これから天下発展の目標を指し示すドンチャン騒ぎをやってみたいとぞんじまする」
道頓は千利休を筆頭人として、大坂の商人たちが秀吉に申し入れる形をとった。
美奈は、その半月ほど前から、認知症の進行を抑える薬を秀吉に処方するとともに、国の内外の珍しいものを見せて刺激を与えておいた。これにはヒントがあった。長曾我部元親が土佐で獲れた鯨を秀吉に見せたところ、秀吉は大そう喜んだ。
その珍しがりに目を付けたのである。で、秀吉は閃いた。
「よし、期間を半年といたし、天下の物産会を兼ねた大祭りにいたそう!」
秀吉は、これに熱中した。
物産会は月ごとに十か国ほどにまとめ、日によって日本六十余州の日を決め、後世の万博のようなことを計画した。
そして、千利休の切腹も、文禄の役も起こらなかった。
秀吉改造計画は、とりあえずは成功した。
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