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本編62
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このままじゃ、ただのエロBL同人まっしぐらだ。雌堕ちして悦がりながらおしまいなんて人生は絶対に嫌だ。
だが、前世もだが今生も、女受けする外見ではない。ゲオルクみたいに守ってくれそうな外見でもなければ、ザームエルのように恋愛慣れした雰囲気もない。
(そう言えば、しばらく自分の顔見たことなかった)
この世界では鏡は高価だ。王都でも所持している人間は多くないだろう。しかも一般的に使われる水鏡は、ソーマの場合、魚が反応して映らない。
21世紀の日本と違い、このファンタジーの世界では、硝子に映った自分の顔とか光源が少なすぎてできない。
だからソーマは自分を知らないままでいたのだ。
その外見が実は、二重の少し大きな瞳と髪が銀色で、桃色の唇は少し厚く、細く長い手足は日に焼けることがなく白いままだ。女性が理想とする容姿そのままである。しかも、ソーマ本人は気付いていないが、ふとした拍子の仕草が色っぽいのである。
しかも、ちょっと危ない性癖を持った人々にも大人気の脆さと儚さまで加わり、とても危険な存在となっている。
そんなことは全く理解していないソーマは、なにがなんでも王都へ行き、とにかく女の子に片っ端から交際を申し込もうと意気込んだ。
たくさんの人に声をかけたら、誰か一人は同情して筆おろしの相手をしてくれるかもしれない。
できればその相手が美人で自分好みだったらいいのだが……ついでに巨乳でエッチ慣れしたお姉さんで、上手に教えてくれたりなんかしたら嬉しいな……などと同人誌的な妄想してにやけていると、また頭に警戒音が鳴り響いた。
「えー……また侵入者?」
もうやだ……こんな身体では無理、絶対に無理。でも人がいなくなるまでずっと鳴り続けるのだろう……それでは休まらない。
「行くしかないのかなぁ……」
そっと瞼を閉じ、洞窟の様子を見ることにした。
「え……父さんっ!」
竜の石碑の側には父と、見慣れない中年男性、それに昨日から常駐している兵たちがこぞっていた。
「行かなきゃ……」
父には訊きたいことがありすぎる。無理矢理体を起こすとまた鈍痛が腰に広がる。
「あいつら好き勝手やってくれて……でも行かなきゃ……」
這いつくばるように壁伝いでなんとかリビングを出ると、扉の前にゲオルクとザームエルがいた。
「どうしたんだソーマ」
「何か慌てているようだが、私にできることがあれば言ってくれ」
「ぁ……洞窟に行かないと……」
「なんだ、また私の迎えが来たのか。よい、私が追い払おう」
「違うんだ……父さんがいるんだ」
兵士もいるのだが、それよりも重要なのはソーマの父、前竜王だ。
「なんと、お父上が来ているのか。妃の父上に挨拶をせねば」
ザームエルは慌てて服を身に着けに寝室へと飛び込む。残ったゲオルクは何も言わず、そっとソーマを抱き上げた。
「辛くて歩けないんだろう。抱いていってやる」
「ありがとう、ゲオルク」
ザームエルを置き去りにしたまま、館を出て、森の一角へと進む。そこが洞窟への入り口になっていた。
だが、前世もだが今生も、女受けする外見ではない。ゲオルクみたいに守ってくれそうな外見でもなければ、ザームエルのように恋愛慣れした雰囲気もない。
(そう言えば、しばらく自分の顔見たことなかった)
この世界では鏡は高価だ。王都でも所持している人間は多くないだろう。しかも一般的に使われる水鏡は、ソーマの場合、魚が反応して映らない。
21世紀の日本と違い、このファンタジーの世界では、硝子に映った自分の顔とか光源が少なすぎてできない。
だからソーマは自分を知らないままでいたのだ。
その外見が実は、二重の少し大きな瞳と髪が銀色で、桃色の唇は少し厚く、細く長い手足は日に焼けることがなく白いままだ。女性が理想とする容姿そのままである。しかも、ソーマ本人は気付いていないが、ふとした拍子の仕草が色っぽいのである。
しかも、ちょっと危ない性癖を持った人々にも大人気の脆さと儚さまで加わり、とても危険な存在となっている。
そんなことは全く理解していないソーマは、なにがなんでも王都へ行き、とにかく女の子に片っ端から交際を申し込もうと意気込んだ。
たくさんの人に声をかけたら、誰か一人は同情して筆おろしの相手をしてくれるかもしれない。
できればその相手が美人で自分好みだったらいいのだが……ついでに巨乳でエッチ慣れしたお姉さんで、上手に教えてくれたりなんかしたら嬉しいな……などと同人誌的な妄想してにやけていると、また頭に警戒音が鳴り響いた。
「えー……また侵入者?」
もうやだ……こんな身体では無理、絶対に無理。でも人がいなくなるまでずっと鳴り続けるのだろう……それでは休まらない。
「行くしかないのかなぁ……」
そっと瞼を閉じ、洞窟の様子を見ることにした。
「え……父さんっ!」
竜の石碑の側には父と、見慣れない中年男性、それに昨日から常駐している兵たちがこぞっていた。
「行かなきゃ……」
父には訊きたいことがありすぎる。無理矢理体を起こすとまた鈍痛が腰に広がる。
「あいつら好き勝手やってくれて……でも行かなきゃ……」
這いつくばるように壁伝いでなんとかリビングを出ると、扉の前にゲオルクとザームエルがいた。
「どうしたんだソーマ」
「何か慌てているようだが、私にできることがあれば言ってくれ」
「ぁ……洞窟に行かないと……」
「なんだ、また私の迎えが来たのか。よい、私が追い払おう」
「違うんだ……父さんがいるんだ」
兵士もいるのだが、それよりも重要なのはソーマの父、前竜王だ。
「なんと、お父上が来ているのか。妃の父上に挨拶をせねば」
ザームエルは慌てて服を身に着けに寝室へと飛び込む。残ったゲオルクは何も言わず、そっとソーマを抱き上げた。
「辛くて歩けないんだろう。抱いていってやる」
「ありがとう、ゲオルク」
ザームエルを置き去りにしたまま、館を出て、森の一角へと進む。そこが洞窟への入り口になっていた。
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