おじさんの恋

椎名サクラ

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本編1

2-2

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「んっ」

 尖った先端を指の腹で押しつぶし、グリグリと回されればそれだけで勝手に身体は跳ね腰をもじつかせてしまう。替えたばかりの下着はもう先走りで濡れ色を変えているはずだ。でも遥人はチラリもそこを見ようとはせず胸の飾りばかりを可愛がり始めた。

 指の先で弄り続けさらに固くさせてから口に含むと、あの器用な舌で舐め転がしていく。

「ぃあっ」

 何度も吸われながら、反対側も指で存分に可愛がってくる。手の甲を口に押し当てなければどんどん高くなっていく声を押さえられない。そして綺麗にメイクされたシーツを掴み堪えなければもっと弄ってと口走りそうだ。だがそんな隆則の反応に遥人の愛撫はどんどんエスカレートしていく。舌でたっぷりと可愛がった胸の飾りを甘噛みしてくる。

「だめっ……それやだぁ」

 嫌がるそぶりをしても、本当はもっとして欲しいのを知っているのか、コリコリと甘く歯で転がし始める。同時に指は何度も爪で先端を引っ掻いてきて強い刺激を同時に与えてくる。

「ぃっ……ゃぁぁぁっ」

 右も左もたっぷりと弄られ、まだキスと胸への愛撫だけだというのに隆則は身体の中にたまった熱を逃すために首を振った。吐息で熱を出そうにも、それより先に甘い声が上がってしまう。

「本当、可愛い」

 指で弄られてばかりで赤みを増した先端にキスを落とすと、今度は指の刺激で敏感になっているほうを口に含み巧みな舌技で追い上げてくる。唾液をまぶされた反対の飾りを指で嬲られ、さっきと違う刺激にまた声が上がってしまう。

「だめぇぇ……ゃっだ……ぁぁぁっ」

「なんでそんなに可愛いんですか……もっと感じさせたくなるっ」

 強く胸の飾りを吸われ舌で嬲りながら反対も引っ張られる。

「ゃぁぁっ」

 勝手に上体が跳ね自分から胸を押し付けるようにしながらも、嫌だとばかりに首を振り続ける。そんなにしたら、触られることなく達ってしまう。それだけは嫌だ……恥ずかしすぎる。でも徹夜続きの納品後はいつもより性欲が増してしまう隆則はもう我慢できなかった。自分から腰を振り遥人の身体にそこを擦りつけた。ほんの僅かな刺激で達ける、はずなのに、さらりとかわされた。

「ぇっ……」

 思わず目を開け見つめれば、いたずらが成功した子供のような眼が飛び込んできた。

「今日はね、たっぷり隆則さんを気持ちよくさせてから。どろどろに感じまくった後に達かせてあげる。そのために風呂場で一回抜いたんだ」

「う……そ…………」

 ズンと蕾の奥に甘い痺れが走った。

 初めてじゃない、遥人が「どろどろ」という時は本当に時間をかけ身体中が溶けてしまうほどに感じさせられる。どこを触られても気持ちよくなって僅かな刺激でも甘い声が漏れてしまう。なのに挿れてもらえないのだ。物欲しげに蕾が収縮を始める。

「俺を一週間も放っておいた罰だからね、達かないでいっぱい感じてね」

「……やだぁ……」

「じゃあルール。隆則さんが上手におねだりできたらして欲しいこと、するよ。でもそれまでは俺のやりたいようにやる」

「そんなぁ……」

 上手く甘えられないと知っていてさっきの意趣返しか。だがすぐに遥人はそのルールで動きはじめ、隆則のへこんだ腹部を舐めまわし始めた。しかも分身に当たらないように巧妙に身体をずらしながらくすぐってくる。

「ゃっ……いいって言ってない……ぁっ」

 へその輪郭を辿りながらそこに舌がもぐり込んでくる。嫌なのに、くすぐったいはずなのに、どうしてか吐息は熱を帯びてしまう。舌で肌を舐めまわされながらゆっくりとパジャマのズボンが下着と一緒に下ろされていく。そして露になった部分を舌が這っては隆則を昂らせていった。でも明確な刺激はそこにない。ただジリジリと煽られるだけ。

「もっ……ゃだぁ」

 けれど一度出されたルールは覆らない。欲しいとねだらない限り達くための刺激は得られない。

(無理……言えないっ)

 頑なになっていく心と、早く気持ちよくなりたい身体とが隆則を苛んでいく。ただ、その中に自分で快楽を得るために己の手で慰めるという選択肢はなかった。そんなものを遥人に見せたら、男としていることを余計意識させてしまう。

(だってこいつ、元々ノンケだもん……そんなの見せたら嫌われるっ)

 だからひたすらシーツを握りしめ堪えた。ずるりずるりと下ろされ、滔々下着から飛び出すように分身が解放される。

「ぁ……」

 勢い良く跳ねたタイミングで先走りも飛んでシーツを汚す。若いころに比べたら角度は緩いが、それでも完全に勃ちあがったそれは刺激を求めて何度も跳ねた。

「今これ触ったらすぐに達っちゃいそうだ……でもダメだよ、もっとどろどろにならないと欲しいことしてあげない」

「ゃっ……」

「じゃあおねだりする?」

 それもできないから首を振る。

「どろどろになろっか。思いっきり気持ちよくさせるから覚悟してね」

 覚悟なんてしたくない、本音は早く達きたい。すぐにでも最奥に遥人の大きくて熱いものを咥え込みたい。

 でも言えるはずがなくて、隆則は奥歯を噛みしめぬるいまでの愛撫に堪え続けた。ズボンと下着が足から抜かれ敏感な内股を舐められては蕾が期待に収縮している。見ているはずなのに、遥人は触れてはこない。ただ足の付け根や内股をくすぐってくるばかりだ。

「ぁ……んんっ」

 思わず腰が上がってしまう……彼に見せつけるように。貪欲な蕾が早く刺激を欲しがっているのを見せれば、もしかしたら「して」くれるかもと淡い期待が頭を支配していく。

「隆則さんの声、本当に可愛い。すっごく気持ちいいって感じで……でもダメだよ、そんなことをしても。ちゃんとおねだりしないとしてあげない」

「そんなっ……ぁっ」

 際どい場所ばかりを刺激するばかりで本当に欲しいところには少しも触れてはくれない意地悪さに、隆則は涙を滲ませながらもどうしても可愛くおねだりができなくて、ひたすら甘くもどかしい刺激を受け入れるしかなかった。

「ゃぁ……もっ」

「うん? もうなに?」

 双球の傍をただ舐めるだけの優しい刺激は期待を孕んでしまい勝手に熱が帯びてしまうが、それでも確かな刺激がなければ達くことはできない。シーツを掴みながら悶えながら、ただ必死に甘い刺激に堪えるしかなかった。一言でも欲しいと言えばすぐに与えられるはずなのに、どうしてもその一言を口にできない。

 悶えに悶えながら、長い時間ただ舐められるだけの刺激に耐え続ける。

 もうどれくらい色んな所を舐められているだろうか。それすらもわからない。遥人の舌が這ったところがないというくらいに舐められ続け本当にどろどろにされてしまった。熱い息を何度吐き出しても身体の奥に燻る熱は逃げ出してはくれず、もうおかしくなりかけてしまっていた。このままでは本当に陥落して欲しいとねだってしまいそうだ。

 紅潮する頬を少しでも冷やしたくてシーツに頬を押し付けても、そこは既に隆則の熱で温まり身体を冷やしてはくれない。あまりにも引っ張りすぎたシーツはぐちゃぐちゃになっていくつも皺を作り自分がどれだけ悶えたかを教えるばかりだ。

「隆則さんは強情だな……もう俺の方が我慢できない……」

 遥人は身体を起こすと、手入れの行き届いた長い指で隆則の乾いた唇を撫でた。

「いっぱい喘いじゃったね、可愛い」

 指は唇だけではなくその奥の歯までをくすぐってくる。それだけで、隆則の身体はゾクリと快楽の兆しが背筋を走る。

「舐めて」

 じっと目を合わせながら命じられる。あまりにも長い時間焦らされ続けもう脳まで麻痺しかかっている隆則は素直に命令に従い、歯列を辿る指に舌を伸ばした。

「ん……」

 いつも綺麗に整えられている爪の形を確認するように舐めながら、口腔を硬いもので犯されている気持ちになる。

 大きな手を掴みながら舐めているはずなのに、自分のほうが嬲られている気分だ。器用なそれが時折舌を挟んできては絡めとろうとするからだ。自分が舐めて濡らしているはずなのに……。

「んんっ……ぁっ」

「俺の指より本当は別のものを舐めたいんでしょ」

 明確な言葉を口にしないくせに何を示唆されているのかが勝手に脳裏に浮かんでくる。

「んっ」

 たったそれだけ、なのになぜか今自分が含んでいるのが指ではなく熱いもののような気がしてきて、仕事で疲弊した脳がぼんやりとしていく。遥人の手を両手で包み、まるであれを頬張っているようにねっとりと舌が動き始めた。指の腹を尖らせた舌先でくすぐりながら徐々に奥へと飲みこんでいく。チュパッと吸いながら本当にあれを刺激していくように指を舐め続けた。

 その一部始終を遥人がどんな顔で見ているのかも知らず、どんどん熱心になっていく。

「もういいよ。指フェラしてる顔だけで達きそう」

「ぁ……っ!」

 濡れた指が引き抜かれ、名残惜しそうに追いかけた舌を遥人の口内に捕らえられる。巧みなキスをしながら、濡れた指は淫らに開いた足の間に行きつき、ずっと彼の訪れを待っている蕾をくすぐった。
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