おじさんの恋

椎名サクラ

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本編2

7-4

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 舌に絡まる残滓をすべて飲み込み、分身を綺麗にしながら煽るように嬲れば、力を失ったそれがまた堅く太くなっていく。気持ちよさに綻んだ蕾に潜り込ませ、ローションを塗り広げていく。何度も出たり挿ったりを繰り返し、指を増やし中からも刺激していけば、胸の飾りを弄るよりもずっと激しく乱れ始めた隆則の姿を見つめ続ける。

「ぁぁぁぁっ! だめっ……ぃく!」

 腰を揺らめかせながら身悶える表情は、なぜこの人を好きになる人間がいないのか不思議なくらい艶めかしく淫靡だ。

 遙人は分身を解放すると先端にキスした。チュッと吸われるだけでパンパンに張った分身はブルリと震える。もう一度したら、達ってしまうだろう。

 このまま達かせようかと思っていると、隆則は細く長い息を吐き出し腰を上げた。指が抜けた蕾に遙人の欲望の先端を当てる。

「隆則さん?」

「俺が……する、から……んぅ、ぁっ」

 まだ充分に解していない蕾が必死に長大な欲望の先端を飲み込もうとしている。苦しいだろうに、隆則は息を深く吐き出しながら、ずるり、ずるりと飲み込みながら腰を落としていった。

 遙人に言われてではなく自分から快楽を追う姿に、血管が浮き上がるほどに欲望が膨れ上がる。

「ぁっ……おっきく、するなっ」

「無理です……隆則さんが色っぽすぎて、そんな締め付けないでください!」

「あ! ぅごく……な」

 根元まで飲み込み、隆則は限界まで膨れ上がった欲望を中でじっくり味わうように、わざと蕾を窄めた。

「うっ……ちょっと!」

「こんなに焦ってる遙人、初めてだ……」

 いつも泣きそうな表情ばかりをベッドで浮かべる隆則は、見たこともないほど妖艶に微笑んだ。もし悪魔が本当にいるのなら、まさにインキュバスと言わんばかりのいやらしい表情に、視線も心も囚われていく。

 遙人に奪われるばかりの嗜虐心を煽る顔じゃない妖艶さに、この人はこんな顔もするのだと驚きながら一層穢してしまいたくなる。

「隆則さん……すげー綺麗だ」

 頬に両手を添え引き寄せれば、細い身体はゆっくりと倒れてきて当たり前のように唇を合わせてきた。

 互いを貪るようなキスをしながら、隆則は腰を動かし始めた。

「ん!」

 抗議の声すら吸い取られる。いつもとは逆の支配されている感覚に戸惑いながらも、溺れていく。抜くときにわざと中を締め付けてきてくるのに堪らなくなり、遙人も膝を立て下から突き始める。

「ぁっ……だめっだめ! ぅごくなぁぁ」

「無理です……いやらしい隆則さんが悪いんです」

「き、キスしてぇぇ」

 可愛い年上の恋人を抱きしめ口づけで翻弄し翻弄されながら、二人で腰を振り乱していく。まるで初めてセックスする思春期の少年が年上の女性に筆下ろしして貰っているような性急さを孕んでいるが、そんなことを考える余裕は二人にはない。

 心を通い合わせ本音を僅かに吐露したせいか、いつもよりも無防備になった感情が欲情を露わにしていく。

「ぁっ、ぃくっぃく!」

 パンパンと激しい音を立てる二人の間で揉まれた分身がもう絶えられないとばかりにどくんと膨れ上がり、隆則は口づけを外して遙人の喉元に顔を埋めて逞しい胸に縋り付きながら蜜を吐き出した。その瞬間のきついまでの締め付けに耐えられず、遙人も心地良い隆則の中に感情のありったけを想いと共に二度目だというのに大量の蜜を吐き出していく。

 初めて隆則を抱いたときよりも興奮して、すぐに賢者タイムがやってこないほど脳が麻痺した絶頂に、遙人は細い身体を強く抱きしめながら心ゆくまで味わった。

 こんなにも良いのかこの人とのセックスは。

 激しく胸を上下させ余韻を味わい、クタリと身体を預けてくる愛しい人の頬にキスをした。

「すっごい……こんな悦いの、初めてだ」

 感じたままを口にすれば、同じように息を荒くした隆則がくすりと笑った。

「うん、俺も……初めて遙人が俺で気持ちよくなってるんだって感じた」

 凄く興奮した。首元に顔を埋めたまま呟く掠れた声に、達ったばかりだというのにまたしたくなる。心に呼応して素直な欲望が僅かに膨れた。

「ぁっ……うそ」

「なんか今日の隆則さん、ちょっと雰囲気違って我慢できません」

 遙人を悦ばせた余裕か、くすりと笑った隆則は煽るように小さなキスを何度も何度も遙人に落としてくる。

 まだ日が高い中で蕩けるほど甘い雰囲気を醸し出しながら、ゆっくりと互いを高めていく。

 背伸びしようと必死に纏った心の鎧を剥ぎ取った遙人は、細い身体で包み込もうとしてくる隆則の愛情に溺れながら、最後に残った疑問を口にした。

「どうして矢野さんがゲイだって知ったんですか?」

「えっ!」

 ビクリと細い身体が飛び上がった。今まで慈しむように合わさっていた眼差しが急にどこともなくあちらこちらを見つめてキョロキョロとし始める。

「それは……」

 後ろ暗いときの隆則の反応に、遙人もまた不穏な空気を待ち始めた。

「そういえば仕事関係で知り合ったって言ってましたけど、矢野さんってどんな仕事してたんですか?」

「あ……」

「ねぇ隆則さん、教えてくれますよね」

「その……あの……、おこらない、か?」

「それは返事次第です、もう隠し事しないでください。俺、不安になりますから」

 わざと甘えるように告げれば言いにくそうに何度か口ごもった後、小さく何かを口にした。

「なに? 聞こえません」

「でりへる……」

 不穏な単語にすべてが繋がった。一瞬にして蕩けていたはずの遙人の表情が変わる。

「…………そう」

 それだけ言うと、隆則の下にあった身体を起こし、欲望を抜いた。

「あの、遙人と付き合う前だしそれに、正月に会うまで一回も会ってないし、矢野さんは隣にいた砥上とがみさんと付き合ってるから!」

 必死に言い募るのを無視して、サイドチェストからあるものを取り出した。

「正月以来ですけど、今日はこれを使いたい気分です」

 手にしたのは姫始めに隆則を苦しめた貞操帯。ビクリと細い身体が露骨に震え始めるのを見て、目を細める。

 逃げようとするのを捕まえて、無理矢理に分身の根元にリングを填めると縮こまったそこに貞操帯を被せる。しっかりと鍵をかけ上からなぞった。

「今度からあの店に行くときはこれ着けてくださいね。そしたら俺、安心できますから」

「ゃっこんな!」

「着け方分からなかったら、朝俺がやりますから」

 足の間に抱え込んだ隆則の首筋をスッと舐めた。

「で、あいつにどこまで許したんですか?」

「許したって……彼、仕事だったから!」

「分かってますよ……で、どこまで許したんですか? キスさせました? どこに触ったんですか? あいつも隆則さんにフェラしたんですか?」

「キスはしてないっ! 本当だから!!」

 分かっている。遙人が初めてキスしたときどう絡めて良いのか分からないほど不器用な口づけをしてきたから。

「他は?」

「フェラは……された」

「それから?」

「挿れて貰って……」

「一晩で何回達かされたんですか?」

「……おぼえてない……」

「じゃあパートナーの俺はもっと達かせないといけませんね、隆則さんが覚えられないくらいいっぱい」

「っ! もうしてるだろ!」

「足りません。もっと達かせないと」

 後ろから抱きしめた身体をうつ伏せに押しつけると、閉じた足の間に嫉妬で堅くなった欲望を潜り込ませた。

「ひっ!」

 寝バックはあまり好きではないが、先端が感じる一点を何度も突ける利点はある。

「俺を嫉妬させたらどうなるか、ちゃんとその身体で覚えてくださいね」

「ゃああああっ、だめっだめ! おかしくなる!」

「あなたの身体を知ってる男は、世界で俺だけで良いんですっ!」

 貞操帯で達けない隆則は、狂気を孕んだ遙人によって何度も何度も遂情しない絶頂を迎えた。言葉通り、今までにないほどの回数の絶頂を体位を変え与えられ、ひたすら啼き続けるしかなかった。

 遙人もその声に何度も己を奮い立たせ、攻め続けた。
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