おじさんの恋

番外編

僕の大好きな不器用な人5

　ベッドで仰向けになり、隆則を起き上がらせる。いつもの姿になった遥人には嫌がるそぶりを見せても、最終的にお願いを聞いてくれることは知っている。なにをされようとしているのかわかっていて、恐る恐る隆則が腰を近づけてきた。そして恥ずかしそうにベッドヘッドを掴むと怯えながら遥人の顔を跨ぐ。

「もう少し腰を落として……そう、これでたっぷりと隆則さんを可愛がりますね」

　いつも遥人のすべてを受け入れてくれる蕾に指を挿れ開くと、その間に舌を潜り込ませた。

「やだっきたない！」

「汚くないです……いっぱい洗いましたから……まだボディソープの匂いが残ってますよ」

　舌を伸ばしてグニグニと中を刺激すれば、高い位置で悲鳴が上がった。中を弄られるのが本当に弱い恋人は、腰を捩って悦がろうとするのを必死に堪えるように、きついくらいにベッドヘッドを握り混んだ。

　本当にいじらしい。その姿をもっと見たくて、舌を奥へと潜り込ませる。

「やっ……だめっだめっ！」

　眼鏡を掛けたときにも聞いた言葉だが、今は本当に甘く蕩けたのがわかるほど色を含んでいる。腰を掴んでいた片手を伸ばし、唾液で光る胸の飾りを摘まんだ。

「ひっ……はるとっ！　やっこしがうごく……」

　乱れるのを我慢できないと、細腰が妖しく揺らめいた。相手が遥人だとわかるとこんなにもすべてを預けて悦ぶこの人が愛おしくて、もっと悦ばせて自分に溺れさせたくなる。

　それは初めて抱いたときから変わらず遥人の胸を占め、未だに隆則を欲する根幹となっている。

　飽きる暇すらない。

　もっともっと欲しくて、もっともっと求めて欲しくて、ただひたすらに自分だけ見て欲しくて性技を濃厚にしていく。

　遥人の上で身悶える愛おしい人が感じすぎて力を失うまでひたすら可愛がる。感じる二カ所を同時に弄られ、膝立ちの隆則はその体制を長く保てなかった。ぐちゅぐちゅと指を動かすと音が鳴るようになるころには泣き言と同時に腰が落ちてきた。

「も……だめっ」

「気持ちいいですか？　この中に俺のを挿れてぐちゃぐちゃに掻き回して欲しくなりましたか？」

　ここ、と蕾に三本の指を挿れ乱暴に手首を動かして分身の裏を強く叩いた。

「ぃっやぁぁぁぁぁぁぁあ！　ぁっ……んっ」

　ビクンビクンと腰が前後し、中の刺激だけで絶頂を迎えた。

　内股の痙攣を視覚で堪能してからその下から這い出る。震えながらまだ恍惚として余韻を味わっている隆則を抱きしめた。頬を擦り付け、口づける。

「達っちゃった顔、本当に可愛い。大好きですよ、隆則さん」

　まだ強張っている腕を自分の首に回させ、膝の上に座らせる。こちらに戻ってこられない可愛い人の唇をまた塞いでたっぷりと堪能する。

　どんな表情も愛おしくてのめり込んで放すことができない。とろりと溶けた甘い顔をもっと溶かせるために、紅潮している頬を撫でた。

「ねぇ、どうして欲しいか教えてください、隆則さん。このまま俺の挿れる？」

　コクンと小さな頭が少しだけ動き、遥人の首にしがみついて涙を肩に擦りつけてきた。

　よほど怖かったのか、眼鏡姿の自分は。プレイの一環かと思ったのは遥人だけで、隆則にとっては嫌だったのだろう。

　申し訳ないことをした。

　残りの時間は可愛い人を満たすのに専念する。

　ゆっくりと欲望を飲み込む中の心地よさを味わい、動かずに慣れるのを待つ。唇を啄むキスから初めてゆっくりと時間を掛けて濃厚にしていけば、中が切なく締め付けてくる頃には隆則から舌を差し出し絡ませてくるようになった。腰が揺らめいていく。いつまで経っても動こうとしない遥人に焦れて、おっかなびっくりに腰を前後した。

「ぁっ！」

「ん、いいところに当たりました？　気持ちいいですか？」

「んっぃい！　とまらなくなる」

　言葉通り始めはおそるおそるだった腰の動きが大胆になっていく。自分から愉悦を貪り恍惚とした表情を見せてくる。

　気持ちいいことに弱くて、でも恥ずかしがり屋で、遥人に嫌われないようにこっそりとスカルプケアや加齢臭ケアをする健気な面があって、本音をなかなか口にしないし何でも一人で背負い込もうとする、本当に不器用なこの人が愛おしくて堪らない。

　特に交情の時に気持ちよすぎて自分をコントロールできなくなってる姿を目にすると、彼から愛されているとより感じられる。蕩けた顔をして貪ってくる一部始終を余さず脳裏に焼き付ける。

　誘っているかのように胸の飾りが、初めの頃よりも大きくなってピンと尖っている。一から遥人が育て上げた場所は、早く弄ってくれとばかりに膨らんでいる。赤く色づいた先端を揉みしだいて引っ張ればあっという間に隆則は達ってしまうだろう。わかっていて、遥人はぐっと堪えた。

　恐がらせてしまった隆則を強引な快楽に呑ませてしまうのは簡単だ。だがそうしたら何かが壊れるような気がした。

　今はただ隆則が心地よいと思うことをひたすらしよう。