おじさんの恋

椎名サクラ

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番外編

僕の大好きな不器用な人4

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 本当にレイプされているような感覚に陥っているのだろう、拒んでくる舌を無理矢理に快楽へと引きずり込む。どこを擽れば感じるかを知り尽くした遥人のテクニックに勝てるはずもなく、嫌がっていた隆則は次第に身体の力を抜き口づけを受け入れていく。うっすらと目を閉じるといつものように舌を差し出して自分から快楽を求め始める。

 けれど、今日はいつもと違うプレイだと教えるように、分身への動きを乱暴にする。

「ひっ……やだっやだっ!」

「嫌じゃないくせに。気持ちいいとすぐドロドロになるんですよね」

「ちがっ!」

 開いた目に眼鏡を掛けた顔を近づけた。ただ透明な薄い板と銀色のフレームが顔に飾られているだけだというのに、隆則にとっては別人に見えてしまうのか。どんな反応も見たくて、唇を舐めてそのまま頬を、首筋を、そして鎖骨を舌で辿った。

 身体の下にある痩身がまた震え始めた。快楽にではないとわかる。

 本当に遥人以外に犯されている気分になっている。

 自分が育て感じる場所になった胸の飾りの尖った先端を舐めた。

「ぃやぁぁぁっそこだめっ! やめてくれぇぇ」

「感じるんでしょう、膨らんで弄って欲しそうにしてる」

「ちがうっちがうからっ!」

「こうしても?」

 チロチロと先端を舐めてから口に含み、吸い上げる。

「ゃっ……あぁぁぁあ!」

 可愛く淫らな悲鳴が上がる。胸の飾りは遥人が一から育てたスイートスポットだ。今では指で弄るだけで達ってしまえるほどに感度がいい。特に先端は噛まれると腰が上がってしまうほどいい反応を見せてくれる。眼鏡を掛けた遥人を相手にどんな表情をするのか見たくて、前歯で甘く噛んだ。

「ぃっ……やぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 いつものように腰を跳ね上げ、けれど逃げようと身悶える。それを体重で抑えつけグミを噛むように歯を立てきついほど吸えば、嬌声を上げながらポロリと涙を零した。

「やだっ……はると……はるとぉぉ」

 名前を呼ばれて、言い様のない痺れが全身に広がる。分身を弄っていた手を放しもう片方の胸の飾りを苛めば悲鳴が高くなり両腕がいつも以上に力が入るのを感じた。

「ぃやだ……はると、たすけて……」

 それが目の前にいる自分を止めるための言葉でないのに気付いて慌てて顔を上げた。本当に無理矢理犯されたような悲愴な顔に変わっていた。

「俺ですよ、隆則さんが世界で一番大好きな俺です」

「ちがっ……やだっやだっ」

 眼鏡を掛けただけなのにこんなにまで拒絶するのか。同時に、いつもの自分以外が同じ事をしても、この人は必死に抵抗して感じないように頑張って、けれど感じやすい身体は言うことを聞かずに快楽に流されては、裏切られた気持ちでこうして自分に助けを求めるのだと思うと、この上なく心が満たされていくのがわかる。

 欲望がビクンと跳ね上がった。

 自分はこんなにも隆則に愛されているのか。

 たまらず風呂場で綺麗にした蕾に指を挿れた。

「そこはだめぇぇぇっ、はるとだけっはるとだけだから!」

 いつも交情の時に誓わせている言葉が悲鳴のように上がる。隆則とキスをしていいのもセックスをしていいのも、感じる顔を見せていいのも全部、恋人である遥人だけだと無理矢理に言わせていた。その言葉が隆則の心の深い部分にちゃんと染み込んでいるのだと思うともう、いてもたってもいられなかった。

 乱暴に眼鏡を外し、扉へと投げる。

「泣かないで隆則さん、俺だから。恋人の俺だから感じていいんですよ」

 うっすらと涙を纏わせた目が開き、いつもの遥人の顔を確かめるとぐにゃりと歪んだ。子供が泣くのを堪えているようにも見えるその表情が可哀想で愛おしくて、拘束した手を放しきつく抱きしめた。

「泣かないでください……ごめんなさい、意地悪しすぎました」

「ひどっ……やだ、こういうことするの、遥人じゃなきゃ、やだぁ」

 四十も過ぎた年上の恋人が、子供みたいにしがみ付いてきた。涙に濡れた目元を肩に擦り付けて泣きじゃくる。

「いつもの俺じゃないとダメなんですね。ごめんなさい、意地悪しちゃって本当にごめんなさい」

 ただ眼鏡を掛けただけ。それだけだというのに不器用なこの人には受け入れることができないのか。そして、心の底から自分を求め操を立ててくれているのが嬉しくて、強く強く抱きしめた。濡れた頬にキスをして涙を吸い取る。

「遥人だけっ遥人じゃなきゃ、やだぁぁ」

「そうですね、隆則さんがこういうことをするのは俺だからですもんね。もう眼鏡掛けて帰ってこないから許してください」

 泣いて縋り付いてくる可愛い人の背中を何度も撫でた。それからゆっくりと彼が一番感じる場所へと滑っていく。

「んっ……ぁ!」

 先程とは違い、拒絶の反応はない。むしろもっと奥まで弄って欲しいとばかりに足を開こうとする。

「ごめんなさい、いつもの俺でいっぱい気持ちいいこと、しますね」

「んっんっ……もうあれやだ」

「わかりました、めちゃくちゃ隆則さんを気持ちよくするから俺の顔を跨いで」

「……え?」
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