百合斬首~晒しな日記~

ミケとポン太

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第2章 確かなもの

第36話 予期せぬ邂逅

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 紗耶香の背後には、先にアジトまで帰したはずの葉月の姿があったー相変わらずのノーパン状態のままではあったようだが。
「先輩、ここにも獲物が潜んでたんすね・・・」
 スカートを気にしながら、しかし一方でやる気満々の葉月。そんな彼女に紗耶香は苦笑しながら、
「いや、お前先帰れって言ったろ?ったく、ノーパンのままやり合う気かよ」
「もう、あそこまで恥ずかしい思いをしたら吹っ切れましたっすよ!ノーパンだろうがマッパだろうが、戦える時には全力で戦うっす!」
「・・・お前、マジで立ち直り早いよな・・・」
 心底呆れたように呟く紗耶香だったが、一方で葉月の立ち直りが早いことに安堵した。
 ーまあ、今回ばかりはちょっとやりすぎたって、あたしも思ってるからなー
 学校に帰ったら、それなりにご褒美はやるか・・・擬体を纏わない程度なら、こいつのお相手をしてやってもいいだろう。
 しかし、今はー。
「氷上亜美・・・だっけ?あたしらの拠点に巣を構えている以上、いずれ近いうちにやり合うことになるだろうから、今のうちに挨拶しておく。さっきも名乗ったが、あたしは一条紗耶香。そして、こっちのノーパン娘は天内葉月だ」
「だから、先輩、ノーパンを強調しないでください!」
 スカートを抑えながら、葉月が激しい抗議の声をあげる。まあ、このくらい元気であれば、もう心配はいらないだろう。
「・・・おかしな組み合わせだこと・・・それにしても」
 氷上が窓から葉月たちを見下ろしながら、小首をかしげた。
「一条紗耶香ーどこかで聞いたような・・・ああ!」
 何かに思い当たったのか、突然素っ頓狂な声をあげる氷上。そして、紗耶香を指さしながら、
「道場で二人の女の子殺しちゃった犯人の名前が・・・よく見れば、その顔にも見覚えがあるわ!」
「・・・先輩、あの事件かなり有名っすね」
 今度は葉月が、今までの意趣返しと言わんばかりにからかうような口調で言う。
「・・・我が国の法律では、確か未成年は実名、顔写真とも犯罪者と言えども非公開のはずなんだけどな・・・」
「それだけ世間の注目を浴びる事件だったってことっすよ、先輩。有名人じゃないっすか」
「その直後に殺されちゃ元も子も無いだろうが」
 紗耶香と葉月がやいのやいのと騒いでいると、いつの間にか氷上が2階から降りてきて玄関を開けた。
 あまりにあっさりと玄関を開けたので、紗耶香の方が逆に面食らってしまった。
「おいおい、あんた、あたしがやばいやつだって知ってるんだろう?そんなにあっさりと敵の目の前に出てきていいのか?」
「敵・・・と言うなら、この島で現在暮らしている女の子たちが全て敵よ・・・尤も、どうせ私は優勝できないでしょうから、遅かれ早かれこの首を晒すことになるわ・・・だったら、今のうちに楽しんでおかなくちゃ」
「・・・ずいぶんと潔いんだな・・・いや、もう諦めてるのか?」
 紗耶香の問いかけに、氷上は皮肉気に口の端を歪めながら、
「仮に、私が優勝したとしても、元の生活になんて戻れないのはわかってるから・・・まあ、ただペナルティは受けたくはないから、昨日他の子をやっちゃったけど」
「あらま、あたしと同じっすね~あたしもお嬢様一人晒し首にしてやったっす」
 葉月が話に割り込もうとするが、氷上自身はちらっと彼女を一瞥しただけで、まるで興味でも失せたかのように、再び紗耶香へと目を向けた。
「むう・・・あたしは眼中になしってことっすか?」
 一人むくれる葉月は放っておいて、紗耶香が問いかける。
「あんたも勝利者ってわけか・・・相手の首はもう晒したのか?」
 氷上は頭を振った。
「いいえ、まだよ・・・なかなかいい場所が思いつかなくて・・・まあ、首を晒すのは後回しでもいいらしいから、とりあえずこの家に保管してあるけど」
「あたしらに投与された特殊薬物のおかげで、死体が腐敗することはないからな・・・」
「中に入ってみる?私の獲物を見せてあげるわよ」
 顔に酷薄な笑みを張り付かせながら、氷上は紗耶香たちを受け入れようとする。
 ーまあ、先輩も先輩っすが、この女も結構やばいというか、どっか頭のねじが飛んでそうっすねー。
 この氷上という女も、自分たちと変わらない側にいるーそれを実感した葉月であった。

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