命の恩人

あやこ

文字の大きさ
4 / 5

4話

しおりを挟む
「その和菓子美味しそうだね」

スーツの男はそう言うと、花子の隣に腰を下ろした。

突然の出来事で彼女は固まっていると、スーツの男は自分の名前をタダシと名乗った。

仕事でこの辺に来たが、小雨だった雨が強くなったので急遽ここに避難してきたと話しする。

「それ、有名な創作菓子店のものだよ。確か【菊乃】っていう店だったかな」

タダシはそういうと、目の前にある吊るされたロープに目をやった。

「今から、死ぬの?」

ストレートな質問に何も言えず固まっているとタダシは話しを続ける。

「なぜ死のうと思ったの?」

もう2度と会うこともないと思い、
初対面の水知らずの男性に対して、花子は素直に現在の自分の境遇を話した。

すると男性は彼女に尋ねた。

「本当に友達がいないの?」
よく考えると私には翔子がいる・・・。

「持病の薬は本当に高額なの?」
来週から低価格で購入可能だ・・・・。

「で、でも貯金はなくなったままだし死ぬ理由としては十分だと思う。四面楚歌なのよ!本当に!」

花子は死ぬ理由はまだ有るとばかりに大声で叫んだ。

「四面楚歌ねぇ。周りは敵ばかりだけど天井は空いてるよね。上に登ってみたら道は開けるかもよ。」

花子は呆れたような顔をしている。

「もし上に登れても、私の場合は今日のように土砂降りの雨よ。」

彼は立ち上がると、大袈裟に手を広げた。

「雨が激しい程、大きな虹がかかる。君の頭上には必ず道が開けるよ。」

そういうとタダシは雨の止んだ窓の方を見ると廃墟をあとにした。

あの男になにがわかるんだと怒りながら、花子はロープの方に向かった。
台に乗りロープに首をかける。その時ふとタダシの言葉が気になり、上を見上げてみた。

天井の割れ目に何か挟まっているように見える。どうしてもそれが気になり、花子はロープを強く引くと手の力を使って上に登り始めた。

箱のようなものが見え、それを手に取るとバランスを崩し箱と一緒に花子は地面に落ちる。

中を開けるとそこには札束と花子の貴重品や預金通帳が入っていた。

「わ、私のだ・・・・。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...