15 / 15
15
しおりを挟む「セス、私ルイとキスした。」
和やかな雰囲気をぶち壊すように私はそう告白する。
でも、セスの誤解が解けたのに私が嘘をつくことは…無理だから。
「それは…」
「私があなたに聞かれても答えなかったのは、その出来事があったからなの。」
「ルイ、何で黙ってたんだ?」
セスがルイを睨む。
「…だって、それを聞いたら傷つくかと思った。」
「何故メアリにキスを?」
「嬉しかったから…?」
それは…
私はキスされる前の状況を思い出す。
…そういうことか。
「お前は…」
「僕が留学した隣国ではマナーなんだ。」
ルイは、次期国王を支えるために生きてきた。
キスされる前に私がしたこととは、感謝だわ。
ルイはセスを支える、だけどそれをセスや周りが感謝として示してこなかった。
だから、わたしに感謝された時に嬉しくなったのね。
それなら…
「セス、ルイに感謝を伝えましょう。」
「感謝?」
セスが聞き返す。
ルイが今まで隣国に留学していた。
2人の関係性は兄弟というより、主従という感じに見える。
なら、今からでも遅くない。
「感謝をして、ルイとの兄弟仲を深めましょう。」
「…いや、なにいってんだ。」
ルイが驚いたようにそう言う。
「でも…」
私の声を遮るようにして、セスがルイに頭を下げる。
「ごめん、確かに今までルイを弟として接してこなかった。」
「でもそれは、幼い時から過ごしてなかったんだから当たり前だ。」
「それが間違ってたよ。
僕達はそれ以前に兄弟なのに…ルイを兄として慈しむべきだった。
これからは、本当の兄弟になろう。」
セスがルイに握手を求める。
ルイは戸惑ったように、でも嬉しそうにセスの手を握る。
ああ、なんと美しい兄弟なの。
あ、大事なことを忘れてた。
「セス、私ルイとキスした後に赤面してしまったの。
だから罪悪感で言えなかった。」
「なんで赤面したの?」
「…ルイの目がセスの目が似てるからセスと錯覚したのもあるかなって思ったんだけど、一番有力なのは私がそういう経験値が低いからだって思ったの。」
私、セスほど経験豊富じゃないし…
セス以外ならほぼ皆無。
セス以外に免疫がないから反応したんだと思う。
「…そうなんだ。」
うつむいて話すセスに私は焦る。
「ごめんなさい、私に免疫があれば…」
「いいんだ、今メアリが本当のことを話してくれた。
僕は信じるよ。」
セス…ありがとう。
「それと、君に誤解されてたら嫌だから言うんだけど…」
「…僕も君が初めてなんだよね。」
…ん?
初めてって、そういう男女の行為が?
でも、私この目で…
「メアリの気を引くためにしてたから、君と結婚した時まで貞操は守っておきたかったから少しのスキンシップくらいで何もしてないというか…」
「え、」
「本当に最後までも何も、女性の肌に触れるのもメアリが初めてというか…」
「アハハ…」
ルイの笑い声が聞こえる。
「いや、兄さんがそんなに純だと思わなかった。」
確かに…
なんか、拍子抜けした。
良かった。
そういうのがなくて…
「セス、可愛いわね。」
私はセスに微笑む。
「可愛いって、からかってるの?」
セスが拗ねたように聞き返す。
「からかってないわ、嬉しいの。
セスが私のためにしてくれたこと全てが。」
「そう?
それなら、僕も嬉しい。」
セスの安心した笑顔に私は胸をつかまれる。
私、いま幸せだ。
ここにくるで色々あったけど、良かったわ。
─終─
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
49
この作品の感想を投稿する
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる