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再会─廉Side
しおりを挟む留学を終えて再会した徹、俺の元恋人は昔と変わらずかっこよかった。
裕福な家庭に生まれた俺は、父親の後を継ぐため幼い頃から厳しい教育を受けて育った。
幼い頃から、醜い本性を隠して俺に近付こうとする大人達に囲まれ続けていた俺は、子供心を失くした。
何もかもが退屈だった俺を、大学で出会った徹が変えてくれた。
周りから羨望されるα同士だった俺達は、最初は普通に友人としてつるんでいたが次第にお互い惹かれていき、恋人になった。
α同士で付き合うことは世間にとってはタブーだった。
でも、そんなの関係なかった。
しかし付き合ってからは、徹を束縛するようになった。
徹は人気者で、俺と付き合っていても告白はやまなかった。
だからいつも心配で、特に徹がΩと話すのが嫌だった。
もしかしたらΩのヒートに当てられて、番関係を結ぶんじゃないか…そういう時は、強引に徹とセックスして不安を解消した。
そんな生活をしていたら、徹と喧嘩することも増えた。
すれ違いを重ねながら、それでも俺達は求めあった。
「留学してこい。」
「嫌です。」
俺は初めて父親に反抗した。
徹が以外は何もいらなかったから。
徹と別れたくなかった。
「恋人とは別れろ。
α同士で付き合うなんて認めない。
別れられないなら、そいつを殺す。」
しかしそう言われれば従うしかなかった。
父が徹に危害を加えないためには、それしかなかった。
「別れよう。」
「なぜ、だ?」
大学の卒業式の終わり別れを切り出すと、徹が傷ついたような表情へと変わる。
「留学することになったんだ。」
「それなら遠距離で…」
「無理だ。」
理由は言えなかった。
別れないと、徹が父に殺されるかもしれないなんて。
「…分かった。」
徹とはそれっきりだった。
飛行機の中で俺達がα同士じゃなかったら別れなくて済んだのかと、ふと思った。
…
5年後、偶然にも徹とホテルのロビーで再会を果たした。
「久しぶりだね、元気にしてた?」
俺は今すぐにでも徹を抱き締めたい喜びを抑える。
「ああ、元気だよ。」
徹は素っ気なかった。
でも大丈夫だと思った。
これからまた距離を縮めていけば…
「徹、」
しかしその期待は、徹の隣にいる男によってあっさり砕けた。
「初めまして、番の光です。」
その男は、曇りのない瞳で幸せそうにそう言った。
俺は衝撃を受ける。
「大学の同期なんだ。」
徹の言葉に、俺は奈落の底へと突き落とされる。
悲しみに震える心を押し殺し、なんとか取り繕う。
「…徹の同期で廉っていいます。」
笑顔を張り付けて、徹の番に挨拶する。
「そうなんですね!
いつも徹がお世話になってます。」
華奢な体格、愛くるしい容姿…いかにもΩらしくて腹立たしい。
嫉妬の感情が渦巻く。
羨ましかった、Ωだというだけで番になれることが。
当たり前に徹の隣にいられることが。
「今日は、何かの記念日ですか?」
多分、結婚記念日なんだろうな。
傷付くことが分かっていながらも聞いた。
「そうなんです、今日は結婚5周年の記念日で!」
「5周年、ですか。
おめでとうございます。」
5周年…?
浮気していたのか、徹は。
そのことに怒りが沸き上がった。
絶対に取り戻す、俺はそう強く思った。
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