短き者達

雨彩 色時

文字の大きさ
15 / 58

しおりを挟む
 僕はよく人にと言われる。その褒め言葉は大嫌い。僕は別に善意でやってる訳じゃ無い。嫌われない為だ。うまく生きていくのに必要なことである。
 頼みを断れば嫌な奴になるし、見て見ぬフリをしたら後味が悪い。なんて使ったことが無い。

「好きです。付き合って下さい」


 僕は屋上に呼び出された女子から告白される。好きになった理由はだからそうだ。この子には悪い事をしてしまった。ただ僕の偽善に利用されただけなのに好意を抱いて、勇気を出して告白してくれたのに付き合ったら幻滅して辛い思いをするだろう。
 そうならない様に僕は君の為にまた優しくならないといけない。

「気持ちは凄く嬉しい。でも、今は勉強や部活に集中したいから誰とも付き合う気がないんだ。君にはもっと良い人が見つかるさ」


 そう、人格を否定したらより傷をつけてしまう。あくまで彼女のせいではない事を伝える。彼女は少し悲しそうな顔をしていたが、付き合えば何回も悲しい思いをさせてしまう。それに比べたら最小限だ。

「悪い人ね。そんなこと微塵も思ってもない癖に」


 彼女が去ると物陰から姿を出した女子は言う。盗み聞きなんてタチが悪い人に言われるとは、おかしな話だ。

「悪い人で結構さ。じゃあね」
「学校で人望が高いから、告白も工夫しないと振れないのね」
「工夫なんてしてない。事実だ」
「あら? 話を続けてくれるの?」
「その煽り口調…気に入らないな」
「嘘吐きが本音を言うと怖いのね」


 彼女はニコニコしながら僕に近付き、人差し指を唇に置く。ペースを乱して僕の本性を出そうって腹らしい。

「ああ言わないとあの子は傷付いた。それだけだ」
「じゃあ、嘘は認めるのね」
「誰とも付き合う気がないのは本当だ」
「そ。あの子は貴方の偽善だろうが好きになった。想いは真実のはずよ? それを貴方は嘘で汚した。女の敵ね」


 彼女の言うことが図星のせいなのか、苛立ちが湧いて出る。ダメなのに、いつもなら怒りを声に乗せないのに彼女には言わないと気が済まない。

「じゃあ、本当のことを言えば良かったのか? あの子は酷く傷付くはずだ。そして、酷く傷付くと人は愚痴を漏らす。それは悪い噂に繋がる」
「じゃあ、噂が無ければあの子は傷付けていたのね」
「違うっ!!!! 君とは話にならない! もういい」


 これ以上、彼女と声を荒げて話していては人に気付かれる。僕のこんな姿は見せられない。

「次は誰に告白されて、どんな優しさを見せてくれるのかしら。ここで待っているわ」


 その言葉は魔法の様で、僕は頼まれごとを度々断るようになり、見て見ぬフリもした。最初は罪悪感や人に嫌われる恐怖があったが、以前よりは気を張らなくていいせいか心身が軽く感じる。彼女のおかげだ。

「優しい貴方が私に何の用かしら?」
「相変わらず意地悪だな。良かったら付き合わないか? 本当の優しさを見せれそうなのは君しかいないと思う」
「あら、誰とも付き合う気はないんでしょ? 嘘吐きね」


 彼女の前では嘘が付けないようだ。本当の自分をさらけ出せたあの日から、僕は彼女に惚れていたみたいだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...