短き者達

雨彩 色時

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弱さの先

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 俺は目の前の人に敵わない。自画自賛だけど勝てる自信があった。だが、実体験して自信を失う。最初は侮ったせいと思って次は構えた。本気で構えた。そのつもりだった。

「強くないな」
「もう一戦…お願いします」
「無理だ。これ以上やっても意味がない」


 意固地になっていた。自身のプライドを最小限に抑える為に次は勝つ気で挑む。何戦しても彼には勝てない。それがとてつもなく敗北感として自分にのしかかる。自惚れていたのだろう。

「クソッ! 何で…何で勝てないんだ」
「ここが戦場ならお前は死んでるぞ。悩む暇なんて無い。さっさと立て」


 容赦が無い言葉だった。真実だからこそ、俺は歯を噛みしめながら立つ。頭が整理出来てないから動きが後手に回る。そんな隙をまた彼につけ込まれる。絶対的な力を思い知った。彼と俺では比べる事すら、間違っていたのだ。

「早く立て」
「もう分かりましたよ…。俺はアンタに勝てない。降参です」


 俺は立ち上がってもないのに顔面を殴られる。手酷い扱いにさすがの俺も彼を睨みつけた。そんな彼は真顔で俺の目を見返す。

「私は降参しろとは命令していない。と言ったはずだ。命令を無視するな」


 どうやら弱者をなぶる事が彼の楽しみか。俺はこんな奴に負けない為に強くなったはずだ。でも、完膚なきまで負けている。もう自分自身の限界を感じていた。本当に彼は気に食わない奴だ。俺は何度も立ち上がった。彼の命令通り何度も。

「強いな」
「はっ? …よくもまぁ、こんなに嬲ってそんな事が言えた」
「戦闘技術を言ってる訳じゃ無い。心の強さだ。普通の奴なら、もう立ってない。負けると分かって何故立つ?」
「お前が大嫌いだからだよ」


 俺は口に血が溜まっていた。随分と威勢を張ったと思う。彼は手加減をして、俺が立ち上がる力を残しながら戦ったんだ。どんな理由であれ、それでも俺がまだ彼の目の前に立っている事には変わりない。お情けだろうとお遊びだろうとだ。

「大嫌いか。そうか。そんな奴はやっぱり倒したいか?」
「ああ、倒したいね。何年、何十年、生涯かけてもいい」
「その為には他の奴も倒さないといけない。私が君の目の前にいるのは本来なら有り得ないのだから」


 彼はしゃがんで俺の視線に合わせて言う。俺はギリギリの力を振り絞ろうと立ち上がる。やっと彼を見下ろせた。

「次に会うのが楽しみだ」

 彼は見上げて笑う。
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