短き者達

雨彩 色時

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その剣は汚れている

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 その戦いは実に長かった。目の前の魔王を殺せば全てが終わるのである。僕はずっとそう信じてきた。

「来たか。貴様が勇者か? それは聖剣だな」
「争いを終わらせに来た」
「これは争いだったのか」

 魔王は悲しい顔をした。勇者に背を向けて椅子へと歩きながら、語る。


「これは一方的な残虐だ。私達は縄張りを奪われた。それでも、争いを好まない我らは小さな領土で質素に暮らしていたのだ。しかし、それでも飽き足らず、人間は攻めてきた。許しを乞う者も人間は殺していたよ」

 鮮明に思い出すように椅子へ座ると上を見上げる。彼は泣き方を忘れたのか、もう涙すら出ないのか、どんなに悲しい顔をしても涙は一切出てこない。


「私の同胞も…両親も目の前で殺したよ。その忌まわしき剣にだ。聖剣?笑わせるなよ。その剣を手にした貴様は勇者ではない。大罪人だ」
「そんな…馬鹿な。僕が知る過去と違う!!」
「勇者よっ!! 魔王の言うことに耳を貸してはなりませぬぞ!!」

 勇者の剣先が地に着こうとした時、大賢者は声を荒げて魔王に魔術を放つ。爆煙が薄くなり、魔王の姿が見える。


「この魔力、覚えがある。浴びたことがある。大賢者と呼ばれるまで偉くなったか、魔法使いよ。昔、貴様から受けた火術の火傷は未だに消えない」

 仕留め損ねたからなのか、昔を思い出したのか、大賢者は顔をしかめる。魔王は攻撃を受けたにも関わらず、反撃する素振りすら見せずに近付き腕の火傷を見せつけた。


「本当に人間は争いが好きだ。魔族と争い、人間同士でも争うではないか。貴様ら人間は争いをやめられないのだ。ここで私が殺されても、次は本格的に人間同士と争うことになるだろう」

 魔王の言ってることはあり得る話である。本国と他国は魔王討伐の期間、一時的に長き休戦をしているだけだ。再び、国同士の戦争が起こってもおかしくはない。


「私を斬り殺しても…勇者よ。次は貴様が救おうとした人間を斬り殺すことになるだろう。さぁ、殺せ。これを知った上で業を重ねて私を殺すのだ。大罪を背負い続けろ」

 聖剣を握り、自身の右胸に刺す。口から血を流しながら最後に言葉を発しようとしている。しかし、吐き出す血が多くそのまま絶命した。
 魔王は最後に何と言おうとしていたのか、今の僕が考えても正解は出ないであろう。
 魔王の命を無駄にしない為にも本当の勇者になる為にも、今後起こり得る戦争を止めなくてはならない。そしたらもう一度魔王の言葉を考えよう。考えなければならない責任がある。
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