短き者達

雨彩 色時

文字の大きさ
31 / 58

赤い男

しおりを挟む
 俺はいつも底にいる。血生臭い底にいる。匂いは慣れた。むしろこの匂いが落ち着く。皆は俺のことをと呼ぶ。それは俺が6人殺した辺りからだ。赤い男に皆は恐怖する。
 皆が言うには、そのは真っ赤なシャツを着て片手には刃物を持っているらしい。それ以外の情報は無く、男性は勘違いされないように赤い服を着る者が極端に減る。何故かは簡単で、勘違いされない為だ。
 赤い服を着ていれば職務質問されたり、通報されたりと面倒事に巻き込まれる確率が上がる。それを分かって着る人は目立ちたがりか拘りが強い人だけだ。

「君ちょっと良いかな?」
「あー、赤い服だからですか?」
「そうだね。君も分かってるならそんな格好する覚悟があるんでしょ?」
「まぁ、これくらいで済むのなら俺は好みの服変えるつもりないですから」


 パトロールする警察官2人に呼び止められる俺は速やかに身分証明書である免許証を差し出す。彼らはを淡々と終わらせる。俺は必死に笑うのを耐えた。

「君の気持ちも分かるけど、一般の人も怖がるから赤い服は極力控えてね」
「分かりました。ご苦労様です」


 彼らが勘違いしてるであろう笑みを作って言葉を返す。お気に入りの服を注意されただけで、着ないなんて選択肢は俺にはない。平和ボケしてるこの世に堂々と俺は見せびらかすように歩き回った。赤い服を着てるだけで周りの視線は釘付けだ。

 赤い男の殺し方の共通点は刃物で首の血管を切る。ただそれだけで、対象は無差別だ。人気の無い場所で真正面から襲っている。返り血をかなり浴びてるはずなのに未だに逮捕出来ない。目撃者によると男性で赤い服しか印象が無く、恐怖で去ったと聞く。逃げることは正しい判断だ。

「終わりました? 用事があるので、そろそろ終わって欲しいんですけど」
「呼び止めて悪かったね。違う警察官もパトロールしてるから、また呼び止められるかも知れないけど、ごめんね?」


 彼らの警戒を低くさせる為に低姿勢で身分を証明する。ただこれだけで終わる。不審な行動をせずに堂々としていればこれだけだ。
 目の前の俺が真犯人な事に全く気付いてない。俺の殺す対象の共通点も公開されてないようだ。それはそうだろう。彼らには分かるまい。
 しかし、10人目を殺した翌日に俺は逮捕された。逮捕される理由は分かる。人を殺したからだ。だけど、一つだけ否認しなければならない。これは俺と殺された10人の為にだ。

「君は無差別に沢山の人間を殺した。君の快楽の為に」
「それは違います」
「何だと!? じゃあ、他に理由があるって言うのか!?」
「みんな死にたいと呟いていたんですよ。だから、その願望を叶えてあげた。ただそれだけです。遅かれ早かれですよ」


 俺はと口にした奴を殺す。ただそれだけだった。殺しは "罪" だが、これが "悪" とは思わない。救いであり、開放であると俺は思いたいのだ。でなければ、それこそ無差別殺人ではないか?

「死にたいと殺されるは全く別物だ」
「じゃあ、なぜ誰も抵抗しなかったと思いますか? 悲鳴も出さない。怖かったから? いいや違う。望んでいたんだ。明日が来る…生きる恐怖を終わらせたかった」


 俺が着ていた一枚の白いシャツは彼らの返り血で染まっている。この綺麗な色を否定はされたくない。だから、俺はそこだけは頑なに否認した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...