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勇敢な子豚
18.
しおりを挟むふるりと右腕が伸びた。
助けて貰えるはずがないということはわかっていたが何かに縋りつきたくてたまらなかった。近くにあったのはソンリェンの手首だった。
弱々しく掴む。
一瞬だけ、トイの大好きな空と同じ色をした瞳と目が合った。しかし精液やその他の体液に塗れたトイの汚らしい姿にソンリェンは舌打ちし、煩わしそうに手を振り払われた。
「触んな、汚ねえ」
青色の瞳に、嫌悪も露わに見下ろされる。拒まれた手でシーツを掴み視線だけを動かす。青色、茶色、黒色、金色。全ての瞳が惨めなトイを馬鹿にしていた。
「うわ、ソンリェンひでー」
「うるせえ、お前らが汚すからだろうが」
「ソンリェンだって突っ込んでただろーが、結構ノリノリだったじゃん」
「レオ、死ぬか?」
「だから、喧嘩しないでくださいってば。せっかく4人で遊んでるのに」
「あき……て」
最後に視線が合った金色に、震える唇で懇願する。
「はやく、ぁ、きて……ひ、」
張り付けたような微笑みがもっと優しく溶けた。その笑みが誰よりも恐ろしいことをトイは知っている。
「だーめ、まだまだですよ。4周目頑張りましょうねえ、トイ」
「や、だ……もう、もうできな、い……や」
「今日は初めてですし、もう少ししたら終わらせてあげますから」
「や……や、やだ、ぁ……ゆるし、あ、ぁ」
だらだらと涙を零すトイの髪を、ロイズが優しく撫でた。びくりと震えるが抵抗などできるわけもなく成すがままだ。長い髪に絡まっていた精液を丁寧に拭われ、ロイズの指先がくるくるとトイの赤茶色の髪を弄ぶ。
「大丈夫ですよ、これから毎日挿れられればそのうち慣れますから」
「──ぇ」
毎日、という言葉に耳を疑う。
「ま……まいに、ちって」
「今日からあなたは僕たちと一緒にここに住むんですよ。みんなで沢山使ってあげますから」
「え……、え? なん、で」
意味がわからない。
トイが生活していた場所は、貧困層が集まる野ざらしの路上と、使われなくなったレンガ作りの廃屋の狭くて汚い一室だった。汚れ切った灰色の天井と毛布しかなかったけれど、屋根があるだけましだった。
毎日外に出て靴を磨いて金を貰ったり、近くの野山や丘を回って食べられそうな山菜や、捨てられたものを漁ってお金になるものを見つけては買って貰って生きていた。
もちろん路上で生活しているのはトイだけでなく、他にも沢山の子どもたちやリーダーのように取り仕切る子どももいた。仲間意識は薄かったけど、寒い日は凍えぬために身を寄せ合うこともあった。
そんなトイが見知らぬ男たちに無理矢理連れてこられたのは、トイが住みついている廃屋を何個集めても足りないくらいの、見たこともないほど高くて立派な屋敷だった。
今トイが押さえつけられているベッドもふかふかで、トイがこれまで寝てきたベッドとは比べ物にならない。こんな状態じゃなければはしゃいでいただろう。
そう、こんな残酷な暴力を受けていなければ。
「だって、飽きたら、って……」
ロイズは一番初めに、飽きたら解放してあげますので頑張ってくださいねと言ったのだ。その言葉だけを信じてトイは耐えてきた。
毎日とは、いつまでの毎日なのか。
「ええ、だから僕たちが飽きるまでね、あなたはここにいるんですよ」
「……あと、」
どれくらい、と半ば茫然と呟けば、ロイズはそうですねえと少しだけ考えるふりをした。
ロイズの指がぱちんと小気味よい音を立てる。名案だと、彼の眩しい金色の目が細められた。暗闇に光る獣の目みたいに。
「あなたが使いものにならなくなるくらい、ですかねえ」
それは、トイが死ぬまでと同じ意味じゃないのか。
「あ、何カ月持つか賭けるか」
「賭博は犯罪ですよ、レオ」
「年単位、もあり得ると思うよ、だってトイの体めっちゃ具合いいもん」
「ほんと、いい買い物しましたね」
「だから金払ってねえだろ、ったくバカ共」
「はいはい、では柔らかいうちにさっさと広げちゃいましょうか」
腕を捕らわれ足を開かされ。男たちの手によって再び身体を弄ばれる。
地獄は、まだ始まったばかりだった。
トイの掠れた悲鳴は、黄ばみのない真っ白な天井に吸い込まれていった。
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