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ふたつの嵐
09.
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「階段を上りたいんだけど、いい?」
「えー、エレベーターでよくね?」
「運動しろと言ったのは君だよね」
「言ったけどさ、あとちょっとで地味逃げ始まっちゃうぜ?」
「……あんなものを観たがるのは君だけだ」
「なんだよぅ、1話面白かったじゃん! 俺カンドーしたんだけど、カナコがセクハラ上司にいびられてさ、自分の筋肉を封じないとって葛藤してるシーン」
「どうしてあそこで感動できるのか理解しかねるな……」
瀬戸たちと別れて(姫宮の勃……起もなんとか治まった)、さぁ病室に戻ろうという時に姫宮がそんなことを言いだした。
みんなからもらったお見舞いの品や売店で購入したものもあるし、早く部屋に戻って2人きりになりたいとか言われると思っていたので、なんだろうとは思った。
それに、今から例のドラマの第2話が始まるのだ。
無料で見れる1話とは別に、見逃し配信アプリで地上波で流れた一挙放送を配信するらしい。
でもまぁ、姫宮がそう言うのならと2人で階段を上る。
適度に運動するのはいいことだ。
大して重くはないが、荷物は半分こした。「へーきだって」と俺が拒否ったけど、姫宮が自分も持つと言って聞かなかった。
病室は病棟最上階の11階なので、結構段数がある。だからこそエレベーターの数も多い病院だ。この時間帯に階段を使う人などあまりいないので、すれ違う人は少ない。
ガサゴソと袋を揺らしながら、無理はしないように、休み休みゆっくりと。
「姫宮、大丈夫か?」
「ああ、問題ないよ」
「無理すんなよ? っと。ここで7階か……結構つかれんなー、こっからエレベーター乗るか?」
「……いや」
やけに階段にこだわるなとは、思っていた。
そしてあと一階だけ上れば11階にたどり着くという時に、同じペースで上っていた姫宮の姿が隣から消えたことで、理由を知ることになる。
「ん、どした?」
振り向けば、姫宮は段差の前の踊り場で止まっていた。
「疲れたか? あと一階だけだから頑張れよ。ほら、手ぇ伸ばせ。引っ張ってやるから」
3段上から手を伸ばす。すぐに届く距離だが、姫宮は下を向いたままだ。しかも、持っていた荷物を床に置いてしまった。
なんだよ、やっぱり疲れてんじゃん。
「あ、それともおんぶするか?」
「……いらないよ」
「はは、お姫さま抱っこでもいーぜ?」
ふざければ、姫宮が顔を上げた。てっきり、「どうして僕が抱っこされる側なんだよ」なんてジト目で睨まれるかと思っていたのに。
「橘──君は、キレイだ」
あまりにも唐突過ぎて、ぱちぱちと瞬きが止まらなかった。
「キレイだ。とても、とても。眩しいくらいに」
「な……んだよ、急に」
「僕は、君とは友達にはなれなかったから」
「姫宮?」
「君と、サッカーだってできやしなかった。難しい本を読んで、僕に群がるクラスメイトに笑顔を振りまいてばかりで、君の友人とわいわい遊ぶことも、君が……星の砂を集めるのが得意だと言っていたデビルズハンターも、結局やれずじまいだった」
「……なんの話だ?」
つーかデビハンとかなっつかし。
「階段を上りたいんだけど、いい?」
「えー、エレベーターでよくね?」
「運動しろと言ったのは君だよね」
「言ったけどさ、あとちょっとで地味逃げ始まっちゃうぜ?」
「……あんなものを観たがるのは君だけだ」
「なんだよぅ、1話面白かったじゃん! 俺カンドーしたんだけど、カナコがセクハラ上司にいびられてさ、自分の筋肉を封じないとって葛藤してるシーン」
「どうしてあそこで感動できるのか理解しかねるな……」
瀬戸たちと別れて(姫宮の勃……起もなんとか治まった)、さぁ病室に戻ろうという時に姫宮がそんなことを言いだした。
みんなからもらったお見舞いの品や売店で購入したものもあるし、早く部屋に戻って2人きりになりたいとか言われると思っていたので、なんだろうとは思った。
それに、今から例のドラマの第2話が始まるのだ。
無料で見れる1話とは別に、見逃し配信アプリで地上波で流れた一挙放送を配信するらしい。
でもまぁ、姫宮がそう言うのならと2人で階段を上る。
適度に運動するのはいいことだ。
大して重くはないが、荷物は半分こした。「へーきだって」と俺が拒否ったけど、姫宮が自分も持つと言って聞かなかった。
病室は病棟最上階の11階なので、結構段数がある。だからこそエレベーターの数も多い病院だ。この時間帯に階段を使う人などあまりいないので、すれ違う人は少ない。
ガサゴソと袋を揺らしながら、無理はしないように、休み休みゆっくりと。
「姫宮、大丈夫か?」
「ああ、問題ないよ」
「無理すんなよ? っと。ここで7階か……結構つかれんなー、こっからエレベーター乗るか?」
「……いや」
やけに階段にこだわるなとは、思っていた。
そしてあと一階だけ上れば11階にたどり着くという時に、同じペースで上っていた姫宮の姿が隣から消えたことで、理由を知ることになる。
「ん、どした?」
振り向けば、姫宮は段差の前の踊り場で止まっていた。
「疲れたか? あと一階だけだから頑張れよ。ほら、手ぇ伸ばせ。引っ張ってやるから」
3段上から手を伸ばす。すぐに届く距離だが、姫宮は下を向いたままだ。しかも、持っていた荷物を床に置いてしまった。
なんだよ、やっぱり疲れてんじゃん。
「あ、それともおんぶするか?」
「……いらないよ」
「はは、お姫さま抱っこでもいーぜ?」
ふざければ、姫宮が顔を上げた。てっきり、「どうして僕が抱っこされる側なんだよ」なんてジト目で睨まれるかと思っていたのに。
「橘──君は、キレイだ」
あまりにも唐突過ぎて、ぱちぱちと瞬きが止まらなかった。
「キレイだ。とても、とても。眩しいくらいに」
「な……んだよ、急に」
「僕は、君とは友達にはなれなかったから」
「姫宮?」
「君と、サッカーだってできやしなかった。難しい本を読んで、僕に群がるクラスメイトに笑顔を振りまいてばかりで、君の友人とわいわい遊ぶことも、君が……星の砂を集めるのが得意だと言っていたデビルズハンターも、結局やれずじまいだった」
「……なんの話だ?」
つーかデビハンとかなっつかし。
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