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ふたつの嵐
12.
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「本当は、もっとデザインの凝ったいいお値段のものを君にプレゼントしたかったんだけど……」
目をひん剥いた。何を言うのかと思えば。
「ま、待て待て。安物って……これがか?」
「ああ」
いやいや、こんなちっこいので500万ちょい超してんだぞ、四捨五入すれば1000万円だぞ!? これが安物だったら俺が使ってる日用品なんてゴミじゃねぇか!
「他の物を選ぼうとしたら父に止められたんだ。それを渡される透愛くんの身にもなってみろって。確かに言われてみれば……その、君は随分と質素な暮らしをしているから」
「おいこら」
「君の家に見合ったものでなければ、悪い意味で周囲から目を付けられてしまうかと思ったんだ……だから泣く泣く、高過ぎず安過ぎず、中間ぐらいのものを選んだんだ」
言いたいことはいろいろあるが──とりあえず、義隆さんグッジョブ。あとでお礼いお。
でも、これを中間と言えてしまうところが姫宮家と橘家の金銭感覚の違いだろう。
そんな義隆と将来的には一緒に暮らすって、透貴も大変だな……いや、それは俺も同じじゃね? じゃあ俺もそのうちこいつと同じ金銭感覚になっちまうのか?
いや、それは断固拒否だ。家計のやりくりは絶対に俺が担ってやる。
姫宮邸にあるわけわからん謎のオブジェとか人間国宝の誰々が描いた掛け軸とかかつてはどっかの宮殿で使われてたバカでかいペルシャ絨毯とかぜってーいらねー。
「だからできれば、今すぐにでももっといいものに買い直して」
「いやいや、これでいいって! ほら、吹っ飛ばされても傷一つなかったんだから、こう……縁起いいじゃん。俺たちを繋げてくれたって感じすんだろ? 苦楽を共にしてきたっつうか……な?」
これ以上高いものを買われてしまったら俺が困る。
500万超えのこれですらちょっと指が震えてしまうのに、これ以上高いものなんて指に嵌める勇気がそもそもない。むしろ大事に大事にどこかに仕舞った挙句、戸棚の奥で埃を被ってしまいそうだ。
そして、仕舞った場所を忘れる自信しかない。
けれども姫宮は、本気で悩んでいる様子だった。
「君をイメージしてゴールドを選んだんだ。あの時はこれしかないと思って……でもやっぱり、一般的にはプラチナの方が価値が」
「──俺っ、おまえからもらったこの指環で髪の色決めたんだってば!」
軌道修正を図るためとはいえ、余計なことまで言ってしまった。目を丸くした姫宮に、「ええっと……」と濁す。しかし、一秒たりとも聞き逃さないとばかりに目を光らせた姫宮の追及は、厳しかった。
「……続けて?」
「あ、いや、そのぉ……」
「隠し事はなしだと、君がいったんじゃないか」
「だ、だからっ」
「うん」
「うぅ……おまえがこの指環くれた時……すっげぇ、嬉しかったからさ」
指をもじもじと擦り合わせながら、きちんと話した。
「毎晩触ったり眺めたり、してたんだ……だから、俺も同じ色の髪にしようって……思って」
姫宮からの返事は、ない。
──気持ち悪いことを言って引かれてしまっただろうかと不安になって、ちらりと美しい青年を伺う。
「それは、初耳だな」
けれども予想に反して、姫宮はちょっと面白い顔をしていた。
口元を指で隠し、視線を逸らした姫宮の耳が赤い。しかも、かなり──これは。
「おまえ……もしかして照れてる?」
腰を曲げてまじまじ姫宮の顔を覗き込むと、「あまり見ないでくれ」と顔を背けられた……その横顔からもわかる通り、やはりこの男、ものすっっっごく照れている。
逆ギレするでもなく変態化するでもなく、年相応の顔で、照れている。
「えーっ、えー……ほぉ~」
思わず感動してしまった。こいつってこんな顔もできるんだなァ。そういや姫宮ってまだ18歳なんだもんな。俺もだけど。
今日は本当に、新しい顔がたくさん見れる。
目をひん剥いた。何を言うのかと思えば。
「ま、待て待て。安物って……これがか?」
「ああ」
いやいや、こんなちっこいので500万ちょい超してんだぞ、四捨五入すれば1000万円だぞ!? これが安物だったら俺が使ってる日用品なんてゴミじゃねぇか!
「他の物を選ぼうとしたら父に止められたんだ。それを渡される透愛くんの身にもなってみろって。確かに言われてみれば……その、君は随分と質素な暮らしをしているから」
「おいこら」
「君の家に見合ったものでなければ、悪い意味で周囲から目を付けられてしまうかと思ったんだ……だから泣く泣く、高過ぎず安過ぎず、中間ぐらいのものを選んだんだ」
言いたいことはいろいろあるが──とりあえず、義隆さんグッジョブ。あとでお礼いお。
でも、これを中間と言えてしまうところが姫宮家と橘家の金銭感覚の違いだろう。
そんな義隆と将来的には一緒に暮らすって、透貴も大変だな……いや、それは俺も同じじゃね? じゃあ俺もそのうちこいつと同じ金銭感覚になっちまうのか?
いや、それは断固拒否だ。家計のやりくりは絶対に俺が担ってやる。
姫宮邸にあるわけわからん謎のオブジェとか人間国宝の誰々が描いた掛け軸とかかつてはどっかの宮殿で使われてたバカでかいペルシャ絨毯とかぜってーいらねー。
「だからできれば、今すぐにでももっといいものに買い直して」
「いやいや、これでいいって! ほら、吹っ飛ばされても傷一つなかったんだから、こう……縁起いいじゃん。俺たちを繋げてくれたって感じすんだろ? 苦楽を共にしてきたっつうか……な?」
これ以上高いものを買われてしまったら俺が困る。
500万超えのこれですらちょっと指が震えてしまうのに、これ以上高いものなんて指に嵌める勇気がそもそもない。むしろ大事に大事にどこかに仕舞った挙句、戸棚の奥で埃を被ってしまいそうだ。
そして、仕舞った場所を忘れる自信しかない。
けれども姫宮は、本気で悩んでいる様子だった。
「君をイメージしてゴールドを選んだんだ。あの時はこれしかないと思って……でもやっぱり、一般的にはプラチナの方が価値が」
「──俺っ、おまえからもらったこの指環で髪の色決めたんだってば!」
軌道修正を図るためとはいえ、余計なことまで言ってしまった。目を丸くした姫宮に、「ええっと……」と濁す。しかし、一秒たりとも聞き逃さないとばかりに目を光らせた姫宮の追及は、厳しかった。
「……続けて?」
「あ、いや、そのぉ……」
「隠し事はなしだと、君がいったんじゃないか」
「だ、だからっ」
「うん」
「うぅ……おまえがこの指環くれた時……すっげぇ、嬉しかったからさ」
指をもじもじと擦り合わせながら、きちんと話した。
「毎晩触ったり眺めたり、してたんだ……だから、俺も同じ色の髪にしようって……思って」
姫宮からの返事は、ない。
──気持ち悪いことを言って引かれてしまっただろうかと不安になって、ちらりと美しい青年を伺う。
「それは、初耳だな」
けれども予想に反して、姫宮はちょっと面白い顔をしていた。
口元を指で隠し、視線を逸らした姫宮の耳が赤い。しかも、かなり──これは。
「おまえ……もしかして照れてる?」
腰を曲げてまじまじ姫宮の顔を覗き込むと、「あまり見ないでくれ」と顔を背けられた……その横顔からもわかる通り、やはりこの男、ものすっっっごく照れている。
逆ギレするでもなく変態化するでもなく、年相応の顔で、照れている。
「えーっ、えー……ほぉ~」
思わず感動してしまった。こいつってこんな顔もできるんだなァ。そういや姫宮ってまだ18歳なんだもんな。俺もだけど。
今日は本当に、新しい顔がたくさん見れる。
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