月に泣く

宝楓カチカ🌹

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前篇

  残酷(4)*

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「やっら、う、ぅうう……!」
「おい、ちゃんと押さえてろ。ズレる」
「はいはい」

 暴れるリョウヤの肩をマティアスが上から強く押さえ付け、「ほーら坊や、ゆっくり息をするんだ。そうそう、その調子だよ、ひっひっふーだ」などとふざけながら愉しんでいる。
 しかし、マティアスが呑気にリョウヤの髪をよしよしと撫で始めたせいで、拘束が疎かになった。
 リョウヤがの腰がずれて半分だけ抜けてしまう。これには舌打ちした。馬鹿なことをしているからだ。
 
「あれ、ごめん抜けた?」
「集中しろ。出産時の呼吸法なんぞが役に立つか」
「そうかなぁ、おまえの子どもを生む時のいい練習になると思うんだけど」
「言ってろ、……」
「あ、くるよ。ほら今だ、イキんで~」

 再び足を抱え直し、踊りかかるように一気に腰を穿つ。

「────ッアぁああぁ……!!」
「……ふ、」
 
 これまでで一番大きな絶叫が、リョウヤの喉から迸った。根本までずっぽりと突き刺した瞬間、とてつもない快楽が脊髄を駆け巡った。
 膣道の入り口がぎゅううっと狭くなり、奥が広がる。たとえ性的快感を感じていなくとも、男を求めてリョウヤの体の雌の部分は勝手に広がるのだ。精液をいくらでも溜め込めるように。そして、どこまでも飲み込めるように。
 今ならいけるだろうと、奥の奥、つまり子宮口の入り口を目指してぐっ、ぐっ、とはめ込めば、ぐぬっと先端が包み込まれるような感覚が広がった。
 ようやく馴染んだので、腰を止める。

「ぁ、あ……、……は、ぁ……」
「よしよし、よく頑張ったね坊や、えらいぞ。ずっぽり奥まで全部はめてもらってキモチイイかな?」
「く……ッ……、」
「あらまぁ、切れちゃったみたいだねぇ」

 ふっと鼻を掠めた鉄臭さ。結合部から垂れてくるそれによってぬめりが増し、アレクシスの昂ぶりにもじわりと赤が漏れた。
 薄っぺらかった腹は、アレクシスが強引に突き入れた肉の杭の形にあわせて縦に膨らんでいた。ぐっと陰紋の下を手で押せば、ドクドクと脈打つ自身の昂ぶりを感じる。
 まだ動いてもいないというのに、リョウヤの体は断続的にぴくぴくと痙攣していた。

「すごいな、こんなに膨らむなんて……相当深いみたいだけどどこまで入ってるの? これ」
「見てろ」

 腰をさらに押し付ければ、陰紋ごと薄い腹の奥がぐぐっと突っ張った。その深すぎる位置にマティアスが珍しく目を剥く。へえ! と本気で関心しているようだ。

「驚いたな! そんなところまで入るなんて。忌人は無理なんだ、そもそも子宮が斜めになってるからね」
「おい、おまえも解剖学は専攻していただろう」
「そうだっけ? 記憶にほとんどないってことは、つまらなくて寝てたってことだね」

 呆れた。つくづく興味がないことにはドライな男だ。今アレクシスが深く押し込んでいる部分は、普通であれば陰茎が折れ曲がってでもいない限り挿入はできない。けれども。

「解剖写真を見たことも忘れたのか? 稀人のここは忌人と違ってかなり垂直だからな、子宮口も……」

 体勢を変える。目指すは、蝶のような形をしている陰紋の起点。長年の研究で、そこから陰紋が皮下組織に根付いていることが判明している。
 興味深く見ているマティアスの前で、くちゅくちゅと小刻みに腰を揺すって。

「こうやって……、先まで捻じ込むことができる」

 開ききっている入り口目掛けて、ずぶんとはめ込んだ。むしろ、じゅうっと奥に吸われた感覚だった。

「──ッ……っ、」

 ぶるぶるっと、リョウヤが腰を上げてしばらく全身で痙攣し、最後はぺたりと弛緩した。

「……ぅ、ウ……は」

 絶叫することはなく、ただぶん、と、頭を反対側へと振るだけだ。
 黒い髪に付着していた汗がぱっと散った。ぎゅううっと、苦しくて苦しくて仕方がないという目の瞑り方だ。

「なるほどねぇ、面白い。随分と都合のいい体だ」

 くつくつと、マティアスが愉快そうに肩をふるわせた。その気持ちはアレクシスも同様だろう。
 今、アレクシスはあのリョウヤを服従させているのだ。
 残酷すぎる光景に、ほの暗い満足感を覚えた。


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