竜騎士のヴァッシュとラミアの少女 ~幻獣ハンター記録譚~

ホクチャッピー

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ハンティング8 「竜の魔力VS薬物の魔力・炸裂する炎牙」

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 オークアジトの至るルートにおいて、ファング達の進撃に警察団が続き、一斉に摘発する流れが組み立てられた。

 外部においては、女性達の拉致に使われた魔導トラックが次々と警察団に囲まれ接収・確保されていく。

 そして、内部へと先陣進撃をする一人、一人のファングに警察団が続きながら内部の部屋という部屋を摘発、そして市民女性達を救出していく。

 大半のオークが外で駆逐されてはいるものの、やはり残存の雑兵的なオーク達も疎らに存在していた。

 だが、コンタクター・ファング達の敵ではなく、無双進撃のままに圧倒されるのみだ。

「覇ぁあああっ!!だりゃああああ!!」

「ふん……!!雑兵が図に乗るな!!」

「やはり、残存の者がいましたかっ!!はぁっ!!」

「ここは、先手必中だぜ!!」

 アルゴの振り回すグラビタルの豪快なブチ当てが、レフェントの華麗迅速なバイザルトの炎剣撃が、 ファルキアが振るうホルスメントの打撃瞬間凍結が、リバルトのスカイ・アローズによる魔力の矢の連続射撃が、各々のルートで遭遇する残存オークを次々に駆逐していく。

 また別のルートではアルガイアが獅子奮迅に牢番人や残存兵のオークをエルスタークの斬撃薙ぎで圧倒し、その強大さを示し晒す。

「覇ぁあああああっ!!貴様らぁああっ!!誇りはないのかぁああ?!!」

 一線の薙ぎ斬撃が一挙に多数のオークを切断、爆発させた。

 アルガイアは如何なる時も、誇り高き猛将の姿勢を崩さない。

 牢の中の女性達はオークの仕業により、大半が半裸状態で辱しめられていた。

 アルガイアは一切動じる事なく、女性達の救出に尽力する姿勢を貫いていた。

 牢の破壊の為、女性達の安全を考慮した言葉を投げ掛けた。

「お嬢さん方は下がっていてくれ!!これより牢を破壊する!!」

 そして、捕らわれていた女性達が安全圏内に避難したのを確認し、牢にエルスタークの斬撃を振り払う。

 この瞬間にアルガイアは更に女性達に被害が及ばないように絶妙な力加減で牢を破壊してみせた。

 破壊の際に生じた白煙を振り払ったアルガイアは、現時点の状況を女性達に伝えた。

「さぁ!!牢は破壊した!!今現在、ファングと警察団による市民女性達の救出作戦を展開中だ!!お嬢さん方!!警察団の指示に従い脱出を……!!」

すると一人の女性が手を上げ、アルガイアに申し出る。

「すいません、こちらの女性、オークに足をやられて歩けないんです……」

 その女性はオークに攻撃され、足に重症を負っていたのだ。

 アルガイアは直ぐ様機転を利かせた行動を示した。

「なんと!!それはいかん!!警察団の方!!彼女を我が背に乗せてやってくれないか?出口まで俺がのせていく」

「そうか!!助かる!!流石、誇りのケンタウロス!アルガイアだな!!」

「え?!いいんですか!?」

「あぁ!遠慮なさるな!!」

 アルガイア達が真摯に女性達を救い出しているその一方で、スレッグは別の捕らわれた女性達の部屋に突入しようとしていた。

 だが、その部屋には既に女性の悲鳴が響き続けていた。

 スレッグは直ぐ様跳躍しながら、魔導ステッキ・フリズアルをかざしてその部屋に飛び込んだ。

「この、オーク野郎!!女の子に何しやがっ……!!?!!」

 するとそこには、我慢ならずとある行為をしようとしていたオークに服を剥ぎ取られたエルフの女のコが、今にも押し倒されようとしている光景があった。

 正に危機一発のシチュエーション。

 うぶなスレッグには刺激、衝撃の嵐。

「ふぁっひゃああああ!!?」

 当然のごとく、スレッグの叫び声に気づいたオークは邪魔をされた腹いせでスレッグに襲いかかる。

「ガァルゥアア!!邪魔すんなぁっ!!」

 だが、スレッグは必死で胸を隠したエルフの女のコの姿にのぼせあがって興奮していた。

 その挙げ句、テンパッたまま魔力が制御不能なまでに精神がある意味で乱れてしまう。

 アルガイアとはまるで正反対なリアクションだ。

「ぶぶぶ、ブリザーガンッ!!おらあぁっ!!!」

 ヤケクソにも見えるようなブリザーガンがオークに直撃。

 だが、最早ブリザーガンではなく、彼の最強部類の必殺技であるアブソリュート・フリーザーを放っていた。

 ファルキアの持つ凍結・氷砕特性の魔力を最強レベルに昇華させたような魔法技だ。

 スレッグは、特定の興奮状態になると魔力が制御できなくなるという、訳のわからない魔導癖を持っていた。

 もろに直撃を食らったオークは、一瞬で冷凍粉砕して粉々になる。

「わわぁ?!!わー!!わー!!なんか、超必殺技出た!!?あ、え、えええっと……!!?」

 スレッグが見回すと、押し倒されていた女性を始め、牢にいた人や亜人種族の女性達が際どい状況に晒されていた。

 更にスレッグはうぶ全開で緊張に緊張をかぶせた。

「あわわわっ……!!?!ごめんなさい!!おれ、おれは、その、助けに~……っあー!!警察団のひとー!!服、しーつ、ふとんをー!!ファルキアへるぷみー!!!」

「来てみれば……!!はぁっ、情けない!!スレッグは下がってなさい!!」

 乱れに乱れたスレッグの後方から来たファルキアが、呆れ果てながらもスレッグを下がらせて警察団と共に彼女達の救出に行動する。

 神官故にファルキアは彼女達に紳士に対応した。

「まずは何か羽織るものを彼女達に!!それに、心身共に疲弊もされています!!丁重にお願いいたします!!」

「無論です!!さ、我々は警察団です!!どうか、ご安心ください!!あなた方市民女性達の救出に参りました!!」

 女性達は辱しめられた状況からの解放に少しずつ安堵の声を示し始める。

 警察団員達は興奮する様子も見せず、各々の制服の上着を彼女達に着せ、時には安心感ある対応で行動していく。

 ファルキアもまた結果的にスレッグが救ったエルフの女のコに紳士に対応した。

 周囲を見回しながら、彼女が押し倒されていた下にあった安物のようなカーペットを見つけ、直ぐにそれを羽織らせてみせる。

 スレッグとはまるで雲泥の差の対応だった。

「ここは既に我々に摘発されつつあります。ほぼ安全です。ただ、まだ戦闘が行われているエリアもございますので、我々がご案内します!」

「あ、ありがとう……ございますっ……!!ありがとうございます!!」

「さぞ辛く無理ある状況下だったでしょう……今後は貴方に幸あらんことを願います。もう大丈夫。大丈夫ですよ。さぁ、スレッグ!!行きますよ!!」

「え?!!あ、ああっ!!サンキュ、ファルキア~!!あ、ああうん!!よ、よかった!!」

 未だにぎこちないスレッグに、エルフの女のコは何度も視線を送りながら警察団員達に身柄を保護され、部屋を後にしていった。

 そんな彼女の後ろ姿を見送りながら再びファルキアと共にアジト内部の摘発協力に出る。

 ファルキアの背に先程のエルフの女のコを浮かべながらスレッグは呟いた。

「はぁ……やばい……可愛いかった……」

  更にその一方で、ガロイアとフレッソル隊長はとある部屋に進撃し、クライス・レイザーと警察団都市方面隊長が装備する、ソウル・ブレードの斬撃がオークを蹴散らす。

 今更ではあるが、以前ヴァッシュが警察団は基本モンスターの犯罪にはファングに一任する規定になっていると言っていたが、特例として組織的なモンスター犯罪に関しては介入、調査、摘発が認められている。

「ここはっ……!!もしや……!!」

 ガロイアはアッパーとフックの軌道で斬撃を繰り出しながら部屋にある物資に目をやり続ける。

 オークをブチのめしながらそれらに注視するガロイアは、直ぐにマナペプタン及び関連投す与器具の一式と踏んだ。

 フレッソル隊長もまた、長年の経験より一目でマナペプタン関連のブツと認識しながらソウル・ブレードの流れる剣捌きの斬撃をオークに食らわせる。

 通常のオークであればフレッソル隊長のような通常の人間(とは言っても戦闘に従事するプロであるが)でも相応の腕があれば十分に対抗できるようだ。

 フレッソル隊長は唐竹の斬撃をオークに食らわせながら攻撃を継続し、ガロイアの言葉に答えた。

「ああ!!マナペプタンの一式だ!!おそらく……他にも……必ず……部屋がっ……あるはずだ!!」

 綺麗な斬撃でオークに逆袈裟の斬撃を食らわし、そのフレッソル隊長の斬撃がこのフロアのオークを黙らせる。

 一時的な戦闘を終わらせると、フレッソルは後続してきた捜査団の部隊を投入し、一挙にマナペプタンの押収に踏み切った。

 ガロイアは腕組みをしながら時折耳を動かしてフレッソルのマナペプタン関連の話を聞く。

 今後もファングの仕事依頼で関与してくる可能性もあるからだ。

 どんな情報も仕入れておくのは基本的な事である。

「……よくある人間の麻薬事件よりもこいつは質が悪い。如何なるモンスターにも強力な魔力を与え、基本は吸引、引用、血液投与によって法外な魔力をえる……ある種のチートだな、チート!!本来あっちゃならねーアイテムさ。悪用すればこの一件のような事になる」

ガロイアは実際に目にしたドモスを振り返る。
 
 ラグナデッタの背から見下ろした状況ではあったが、確かに通常のファングの者からしてみれば生体兵器と言っても過言ではない脅威だ。

 別視点で考えればそんな輩と殺りあえる自分達もまた凄まじい次元にいる事を改めて考えさせられる。

 フレッソル隊長は押収作業に目を配りながら一袋手の平サイズのマナペプタンをガロイアに見せた。

「たったこれだけの量で……魔力が宿る。闇ルートの向こう……すなわち闇社会の住人、悪質な魔女や闇の錬金術師、ダークエルフ達なんかが作っていたりするケースがよくある。ま、そっから色々なルートが枝分かれし……こーいう床に流通しやがるんだ」

 フレッソル隊長は下に指をさして示し、更なるマナペプタンの話を語った。

「無論、使用した乱用者のリスクもある。体が変質、変形したり、反動で体が崩壊したり、よくあるのが、効力が切れて苦しみ出す。そして止められなくなり何度も繰り返す。最悪は制御不能に陥って死に至る……ごく稀に魔力が暴走し制御不能になって超強力なモンスターと化すがな。ま、最終的には膨れ上がった魔力で大爆発……そんなもんが人体に投与されたらと思うと……」

 フレッソル隊長はそう言いながらタバコを取り出して一服する。

「ふぅー……タバコの依存や毒性なんか、赤子のようなもんさ……」
 
「いーんすか?仕事の真っ最中に一服して」

 ガロイアは仕事の最中の一服をするフレッソル隊長に、軽く指摘を飛ばしながらマナペプタンの一袋をフレッソル隊長投げ渡した。

「ふー……これは、仕事の日常の光景さ」
 
 投げ渡されたマナペプタンの一袋を手に取り、押収物の箱にもどしながらフレッソル隊長はそう答えた。

 ガロイアはその日常という言葉に意識が止まり、ふと日常というモノを思い始めた。

「日常……ね……日常……か」

 ファングにとっての日常とは、正に今だ。

 ヴァッシュやガロイア達の次元ともなれば命のやり取り、心地よく感じてしまう緊迫感、戦闘が日常と思えてきてしまう。

 だが、命の危険などは普通の一般市民や民達にすれば有事、即ち非日常この上ない事だ。

 少なくとも、この殺伐感が香るオークのアジトは不快感や閉鎖感を感じる。

 ガロイアはアジトのフロアのどこかにいるヴァッシュに、決して伝わらない言葉を呟いた。

「日常……だってよ……はっ、少なくともラミアのお嬢さんだけは日常に連れて帰ろうぜ……ヴァッシュよぉ」

「ん?なんだ?狼男も独り言言うのかい?」

 フレッソル隊長のその一言に耳をピクンと動かしたガロイアは、フッと笑いながら手を差し出した。

「ちょいと呟いただけさ。それに俺は狼男じゃない。誇り高き人狼、ワーウルフの種族だ……隊長さん、俺にも一つくれ」

「獣人種族の一つ、人狼・ワーウルフか……そいつは失敬したな。ベタな言い方しちまった。三本やるよ」

「そいつはどーも……」

 ガロイアは譲らせてもらったタバコを一服すると、主流煙を岩の天井の方に向けて吹き上げた。

 そして同じような景観の岩壁天井の真下で、ヴァッシュのバーン・フレイアを賭した剣撃とガボルドの魔力の拳とが激突する。

 両者の攻撃がまたぶつかり合う。

 だが、その激突はガボルドの拳を弾き潰し、更にガボルド自身の体をぶっ飛ばした。

「ガルゥゴォオオオオッ?!!」

 ガボルドの手が斬られずに済んでいたのは魔力を宿していた為だが、言うなればバールの振りかざしに拳で対抗したような感覚だ。

 拮抗していた状況のヴァッシュの魔力ではない為、ガボルドに対してダメージを与えていた。

 狂っているはずの痛覚すら超越したダメージだ。

 ガボルドは圧倒された怒りに任せ、またヴァッシュに突っ込んだ。

「く、くぞぉ!!うぉがぁらあああっ!!」

 ヴァッシュは自身に向かって直進するガボルドの拳を見切りかわし、懐へ一瞬で入り込みながらのカウンター斬り上げ斬撃をブチ込む。

「らぉぇがっっ……ごらがぁああああぁっ!!!」

 ドォンという衝撃の刹那、更に高速回転を付加したフェイタル・ウィングの赤熱した刀身の薙ぎ斬撃が炸裂する。

 しかし、筋肉に纏う分厚い魔力により、切断にはまだ至らなかった。

「っ……纏わりついた魔力が邪魔くせーな……!!!」

 再びぶっ飛ばされたガボルドは二連撃のダメージを受け、その巨体を岩壁に直撃させられながら崩れる岩壁に生き埋めになった。

「凄い……!!」

 フィレナは最初の一件である昨夜に引き続き、二度目のヴァッシュの闘いを垣間見ていた。

 完全なまでの非日常がそこにあり、かつ今自分はその非日常に置かれている。

 そして、決して自分達では抗えない、否、通常の人間(亜人種も含む)では抗う事すら不可能だった相手を圧倒する力がそこにあるのだ。

 再びフィレナを救おうと、守ろうとするその力は正に絶望の淵に放たれた一矢だった。

 それに、フィレナだけではなく今回の一件はレバノイア市規模でオークに拉致された女性達もいる。

 更にそれを救わんと動いている存在を、眼前のルファントから聞かされた。

「フュー!!スゲーの域を当に越えてるぜ~!!あれが、竜の力かぁっ!!あ、そうそう!!今、俺達ファングや警察団が捕らわれた女性達の救出を展開してるんだ。もうすぐこの殺伐した空間からサヨナラできるよ!!ニヒヒ!」

 彼もまた、自身の持つ風の魔力で熱風、熱気からフィレナとハーピーの少女を守ってくれていた。

 フィレナは獅子奮迅に行動してくれているまだ見ぬファングや警察団、そして実際に目の前で自分達を守ってくれている二人のファングの男達から途方もないくらいの心強さと感謝の想いを抱いた。

 フィレナは無意識の内に溜まった感情から涙を伝わせながらヴァッシュやルファントに感謝した。

「ありがとう……本当にっ……ありがとう!!」

「礼には及ばないって!おぉう!!ヴァッシュの兄貴……どんだけの魔力放つ気だぁ??彼女さんの身を考えてくれ~」

 ルファントは背を向けながら答え、更に吹きすさぶ魔力の熱気を遮断し続ける。

 故に彼女の涙には気づけていない。

 そして、まだヴァッシュと会って間もないフィレナを彼の彼女と思っているようだ。

 対し、ハーピーの少女はその涙を見つめ続けており、遂にはその訳を問い質してきた。

「お姉ちゃん、泣いてるの……?痛いの?」

「え……?なんでだろうね?痛いとか悲しいとかじゃない……ただ……やっとみんな助かるんだなってね。さっきはあんな頼りないこと言ってごめんね?」

 フィレナは体を寄せているハーピーの少女に手を回しながら、天井裏での悲観的な突き放しを謝ってそっと彼女を抱き寄せた。

「なんで、謝るの?あたしは気になんてしてないよ!お姉ちゃんは悪くなんかないよ!悪いのはアイツらなんだから!」

 ハーピーの少女は岩の瓦礫を押し退けて立ち上がったガボルドに、翼と一体となっている指を指して言った。

 今回の元凶は正真正銘、彼女が指を指すガボルドなのだ。

 被害者達は誰一人として悪くないのだ。

 フィレナはハーピーの少女の頭を撫でながらより彼女を抱き寄せて感謝した。

「……ありがとう……」

「お姉ちゃん……」

 そして再び彼女達はルファント越しに見える戦闘態勢のヴァッシュを見た。

 ヴァッシュは片手でフェイタル・ウィングを握り締め、ゆっくりとズカッ……ズカッっとガボルドに歩を進める。

「往生際が悪いな……所詮悪あがきだ。ま、最もテメーには今の剣撃だけじゃ足らなさすぎるがな……!!」

 ガボルドはヴァッシュのその言葉を聞いた直後に、ズンッと体勢を身構えて咆哮した。

「うぉがぁルゥアアア!!」

 ヤキが回ったガボルドは、携帯していたマナペプタンを大量に鷲掴みにし、自らの口に入れ込んだ。

 その量は半端なものではなく、最早死に至るほどのオーバーマギアを巻き起こしかねない量であった。

 その影響は即座に表れ、マナペプタンによる魔力の覇気が爆発する。

 紫のオーラが滲み出て、魔力のスパークが起こっている。

「ガァがルゥアアがぁあああっ!!!」

 そして、ガボルドはタックルの体勢を構え、一気に猛進を開始した。

「流石に狂ったか……!!」

 ヴァッシュ目掛け突っ込んでくるガボルドの強烈なタックルを、ヴァッシュは難なくかわし、後方の大型扉に突っ込ませた。

 凄まじい爆発を起こしたかのような破壊力で扉を突き抜けると、再びガボルドは崩れる岩塊に生き埋めとなってしまった。

「……やれやれ……力制御しても、ヤツがあれじゃあ、ここが崩壊しかねないぜ……!!かといって容易く脱出って訳にもいかねーときた。なら、さっさとケリを……!!」

「ヴォゴルォおぁおっ!!」

 次の瞬間、再び岩を押し退けてガボルドが飛び出し、その巨体の姿を表す。

 その手には巨大なカットラスタイプの剣が握られていた。

 だが、通常の人間からすればあからさまにバスターソードやクレイモアの類いの大きさだ。

 刀身にはマナペプタンによる魔力がスパークを発生させている。

 襲い来るガボルドのその斬撃を、ヴァッシュは敢えてかわすことなく、フェイタル・ウィングで受け止める事を選択した。

 見るからに潰されそうなヴァッシュの状況の姿に、フィレナは思わずヴァッシュの名を叫んだ。

「ヴァッシュゥっっ!!」

 最初に彼女が見たジレスティアの一件の戦闘とは次元かつ体格的に訳が違う。

 ガオンッという凄まじい衝撃が魔力の衝撃波と共に響き渡る。

 ヴァッシュはこれをフェイタル・ウィングと自身の魔力で受け止め切り、睨みの眼光をガボルドに突き刺して見上げていた。

 ヴァッシュとフェイタル・ウィングを纏う炎もまた、脈打つがごとく激しく猛る。

 確かにガボルドの力は物理的に、かつ魔力的に重い一撃に変貌を遂げていた。

 通常のファングが受けていれば即死など免れたものではない。

 しかし、それに対抗し切る程ヴァッシュの竜の魔力が強力なのだ。

 それを実現させる要因が炎の魔力の鎧、オーラ・フレイムだ。

 魔力波動に耐えていれるのもオーラ・フレイムの特性によるものであった。

「確かに魔力を武器に付加すりゃ、少しはまともだな……今のは少しは重かった……ぜっ!!」

「ガァッ?!」

 フェイタル・ウィングが唸らせる炎が一瞬爆発し、ガボルドの剣を弾き退けてみせる。

 ヴァッシュは更に浮かび上がった巨大なカットラスの刀身を斬り上げ弾いた。

 しかし、ガボルドは怯む様子もなく、そのまま怒りの感情を魔力にし、豪快な剣撃を唸らせてヴァッシュに叩き込む。
 
 ヴァッシュは剣撃の軌道を見切り、より炎のような眼を開眼させながらカットラス刀身側面をフェイタル・ウィングで弾き飛ばす。

「グルガァッ?!ウグルァアアア!!」

 それでも剣撃が止む事なくヴァッシュを襲う。

 ヴァッシュはこの剣撃を跳躍力でかわすが、その剣撃が直撃した地面が大爆発を起こした。

 厳密に言えば強力な魔力と腕力により、あたかも爆発したように見える程の粉砕破壊を起こしていた。

 最早斬るの次元ではない。

 ガボルドの連続豪快の斬り砕き乱舞がヴァッシュを襲い攻める度に、粉砕破壊が連続していく。

 背後に意識を配りながらかわしていけば、必然的に岩壁に阻まれ、更なる内部崩壊が進みかねない。

 ヴァッシュはかわす事を止め、跳躍着地しながら脚力で減速をかけ、自らガボルドの狂った豪剣にフェイタル・ウィングの斬撃を打ち込んだ。

 帯びた魔力同士が反発し合い、本当の爆発が起こる。

「ルグゥッ……ガァッ!!」

「だぁあああっ!!」

 再び剣撃同士が激突し合い、魔力爆発が起こる。

 ヴァッシュはその反動を振りかぶる動作に利用し、フェイタル・ウィングを連続で叩き込んだ。

「らぁあああああああっ!!!」

「ガガガァッ?!ガオラァアアアアアア!!!」

 爆発反動の剣撃の連続が、ガボルドの剣をジリジリと圧倒していく。

 ヴァッシュは闘争の表情に血走る。

 そして、側面薙ぎのヴァッシュの回斬撃がガボルドの胴体に炸裂。

 魔力とフェイタル・ウィングそのものが起こす爆発を伴いながらガボルドの巨体を奥面通路にぶっ飛ばした。

 破壊的な轟音が通路を介して、今いる空間に響き渡る。

「よっしゃぁああ!!」

 その光景に熱くなっていたルファントが、思わずガッツポーズをとる。

 だが、まだ決着ではないようだ。

 ルファントはまだ溢れ出るかのようなガボルドの魔力を感じ、流石のまずさを察しはじめた。

 後ろにいるフィレナ達の身を案じ、逃げる選択肢を考え始めていた。

「だけど、あのデカぶつ……まだ魔力がありあまってる……まだ長引くかもね……逃げる用意したほうがいいのかも」

「え!?でもっ、ヴァッシュが!!」

「いや……まだだぜ!!まだこれから皆が……救出や捜査、押収とかが行われていく……俺達だけって訳にもいかねー!!それに、急いだらフィレナの骨折に響く!!」

「ヴァッシュ……!!」

 ヴァッシュは激戦の最中にも関わらず、ルファントの言葉を聞いていた。

 更にはフィレナ達に気遣いの意識も向けていた。

 常識な感覚からすれば、ガボルドのような存在と遭遇しただけでもすくんでしまい、あれこれ考えられる余地などない。

 ましてや、剣をぶつけ合おうなど異次元レベルの概念に等しい。

 フィレナは今置かれている極めて危険な状況下で、ヴァッシュの存在感がこの上ない心強さを感じさせてくれる事を改めて思えた。

「でもよぉ、ヴァッシュの兄貴さんよ?少なくともこのフロアはヤベーんじゃね?!アイツの魔力からして!?さっきからどんどん上昇してるぜ?!」

 ルファントいわく、ガボルドの魔力は刻々と上昇を始めていた。

 それも異常な間隔で上昇しているのだ。

 これもまた直にマナペプタンを摂取した悪影響の副作用によるものだった。

「あぁ、無論わかってらぁ……だったら、力ずくでも……」

 ヴァッシュはそう言いながらオーラ・フレイムを防御から攻撃に変換させ、自身を燃え上がらせた。

 そしてその炎はヴァッシュの脚に収束し、その脚周りに炎が猛る。

「外へ押し出すっ……!!」

 ヴァッシュの脚周りの炎が爆発し、一気にヴァッシュ自身を加速跳躍させた。

 フレイム・スプリゲン。

 炎の魔力発動を加速跳躍力に変換したオーラ・フレイムの応用魔法技であり、今のように戦闘に置ける加速に使うのが主な用途だ。

 ちなみにフィレナを助けに向かい始めた時に用いらなかったのは、減速の役目となるフェイタル・ウィングがなかった為だ。

 フェイタル・ウィングを振りかぶりながらガボルドをぶっ飛ばした先の通路へとヴァッシュ自ら飛び込んでいく。

 だが、ヴァッシュのその行動とほぼ同時に、闘牛のごとく、ガボルドが猛撃的な突っ込みをかけて舞い戻る。

「ガァルゥアアがぁルゥアア!!」

 白目を剥き出し、口から大量の唾液を垂らしながら、バスターカットラスを縦横無尽に振るいまくるガボルド。

 ヴァッシュは、フレイム・スプリゲンに利用したオーラ・フレイムを一瞬でオーラ状態に変換し、フェイタル・ウィングの袈裟斬りをブチ込んだ。 
 
 両者の剣撃が交え、爆発が起こる。

 だが、ガボルドは駆け引き全く関係なしの剣の乱舞を振るい始め、魔力を帯びた滅茶苦茶な斬撃をヴァッシュに浴びせた。

「ぐぅっっ……!!」

 不覚にも薙ぎ斬撃がヴァッシュに入り、ぶっ飛ばされたヴァッシュは横壁に叩きつけられてしまう。

 それでも耐えきれているのは、竜の魔力と魔法発動があるからこそだ。

「いやぁっ!!ヴァッシュッッッ!!」
 
「ガァアアアア!!ラガァアアアアッ!!」

 咆哮を上げながらの滅茶苦茶なガボルドの乱撃がヴァッシュの身を絶え間無く襲う。

「くぅっ……!!のっ……ヤロウッ!!」

 ヴァッシュはその身に、高魔力のオーラ・フレイムを纏いながらフェイタル・ウィングの刀身でのガードを強いられた。

 そして次の瞬間、強烈なバスターカットラスの突きがヴァッシュ目掛け打ち込まれ、魔力爆発を巻き起こした。

「ぐぅっっ……!!!」

 その爆発の爆風と轟音がフィレナ達にも荒々しく吹きすさぶ。

「何?……ウソ……ヴァッシュ!!?ヴァッシュぅううっ!!いやぁああっ!!」

 ヴァッシュへの憂いから彼の名を叫ぶフィレナ。

 ハーピーの少女もまた、表情に不安を隠せない……否、今体験している未知なる緊迫感に不安を隠せるものではなかった。

 いくらヴァッシュが強いと言えど、ガボルドの咆哮やその異常な威圧感はやはり強烈な不安と恐怖の要素に他ならない。

 ルファントもまた、滲み出て来る魔力の異常さを感じていた。

「おいおい……デカぶつオークっから感じる魔力の量が尋常じゃねーぞ?まさかのまさかかぁ?」

「どういう意味?!ヴァッシュは、ヴァッシュはどうなっちゃうの?!」

「フィレナさんだっけ?ヴァッシュの兄貴は同じコンタクター・ファングとして見てもヤベーくらいの実力者って解る!!だからまず殺られたりは無いはずさ。けど、あのデカぶつも相当の魔力が詰まってやがって、そのオークのやつは……」

 ルファントがフィレナ達にガボルドの状況を説明すると同じ時間の流れの中、ヴァッシュを突いたガボルドはバスターカットラスを抜き取り、再び壁を崩壊させるような咆哮を上げる。

 ガボルドは白目を血走らせながらフィレナ達にその眼光を向けた。

「って、おいおい……!!」

「あぁっ……!!」

「っ……!!」

 ガボルドのその眼光は、ルファントには厄介な印象を、フィレナとハーピーの少女には強烈な恐怖の印象を与えた。

 それはあろうことか、フィレナに向けて視線の焦点が集中していた。

 ガボルドはくわっと血走る白目をより開眼させ、三人目掛け襲いかかる。

「させるかよっ!!ウィンディフェーザ!!」

 ルファントは先程からかけていた風の防御魔法を、ウィンディフェーザという戦闘レベル域の防御魔法に切り替え、トラスティアルから全力で発生させてみせる。

 トラスティアルの切っ先から向こうに存在していたガボルドは、同極同士の磁石のように見えない強烈な力に阻まれた。

 通常であればこの間に守る対象を逃がして反撃に転ずる戦闘を展開させるのがベターであるが、フィレナが骨折のダメージを負っているが為にそれができない。
 
 かといってこの域の魔法をいつまでも持続させた試しもない。

「さーて……防御に徹するか、攻めるか……ソルかノルか……!!」
 
 ルファントが戦闘最中の葛藤をしてる間にも、ガボルドのゴーヤのような風貌に変異した全身からは、脈打つような魔導波が絶え間なく発生している。

 そしてそれは、至近距離で唐突な魔力爆発を発生させた。

「ぐぅあっ……!!っくそぉおおっ!!」

 瞬発的な魔力のパワーは、至近距離故にルファントの魔力でもトラスティアルを持つ腕が激しくぶれるまでに手こずる。

 更にその状況下でガボルドは、魔力爆発を連発させ、ルファントを一時的に圧倒。

 その瞬間にトラスティアルを弾いた所で薙ぎを振るい奮う。

「しまっ……がぁああっ?!!」

 刹那的にトラスティアルでガードするも、不覚にもルファントはウィンド・ガンを使用する概念ごとその身を吹っ飛ばされてしまった。

 荒ぶるガボルドの魔力は秒単位で暴走の速度を上げていく中、再度文字どおりの魔の手がフィレナの尾を掴んだ。

「嫌ぁあああっっっ!!痛い痛い痛い痛っっくぅ……!?きゃああああぁぁぁあああっっ?!!」

「お姉ちゃん!!あああ……ぁ……!!!」

 掴み上げられたフィレナは、骨折の激痛の直後、直にガボルドの魔導波を浴びせられ、全身にダメージを受けてしまう。

 悲痛なフィレナの悲鳴を前に成す術なく放心状態になってしまうハーピーの少女。

 遂にはフィレナは意識を失った。

 再び絶望は迎えにきたかのように彼女達を襲う。

「んのやらぁああああああっ!!!」

 だが、今のその絶望の状況下には抗える存在がいる。

 トラスティアルを振りかざしたルファントがハーピーの少女の危機に再び突っむ。

「らぁぁああああああっっ!!」

 トラスティアルの切っ先と、ガボルドのバスターカットラスが激突し合った。

 吹き荒れる暴風と魔力が空間を震わす力同士が拮抗した。

「やらせねぇってのっっ!!インチキ魔力ヤロウ!!!」
 
 ルファントはグリファリオから授かった風の魔力を持って、闘争心と共に魔導波に対抗していた。

 対してフィレナやハーピーの少女達のような戦闘とは無縁な通常の人や亜人からしてみれば戦闘レベルの魔導波はある種、ある意味で攻撃的な放射能のようなものだ。

 更には直に受けてしまっては人溜まりもない。

 フィレナはガボルドの左手に掴み上げられたまま意識不明に陥っていた。

 更に魔導波が強まり、ルファントのトラスティアルを捌き弾くガボルド。

 その瞬間にルファントを吹き飛ばすと、ガボルドは咆哮を上げながらその場を走り去り、フィレナを連れ去る。

 その状況は、岩壁に食い込まされた状態のヴァッシュの瞳にも映っていた。

 だが、通常であればもう既に原型なく潰れているレベルのダメージの筈だが、原型はしっかりとあり、かざしたフェイタル・ウィングもまたしっかりと握り締めている。

 そして、鋭い眼光を開眼させた。

「ヤロウ……魔力を暴走させはじめやがった……!!マナペプタンの副作用の極みか……だとしたら、ヤツを極力内部の中心から遠ざけるしかねぇな。中心で仕留めたら最悪……アジトそのものが崩壊するかもな!!」

 ヴァッシュはフェイタル・ウィングを地面に突き刺して体を起こすと、刀身の切っ先を前にして構えた。

 その切っ先の前に暴走するガボルドを見据えながら脚部をメインにして、凄まじい炎を滾らし始める。

 無論、左手に掴み上げられたフィレナも熱き眼に映し、彼女を掴み上げたガボルドに対して輪を何重にもしたかのような一触即発状態の感情が荒ぶる。

「あのヤロウ……またフィレナをっっ……!!!!待ってな……直ぐに追いついてやる!!直ぐになぁっ……!!!」

 ヴァッシュは敢えて直ぐに追わず、フレイム・スプリゲンを最大限に発揮する為の魔力チャージを開始した。

 対してガボルドは咆哮すると共に、フィレナを掴み上げたまま、奥面通路を走りながら進撃を続ける。

 呼吸を荒ぶらせ、白目のみの眼光を放つ。

「ガガガァッ、ハァッ、ハッハッハッアアッ、グガァアアアアッ!!アアアアッ!!」

 無作為に振りたくるバスターカットラスの斬撃。

 振り回されるフィレナ。

 そして遂には全身のランダム位置から魔弾球を放つまでになり、いよいよアジトそのものの崩壊とフィレナの命の危機がカウントダウンされようとしていた。

 ガボルドは更にズンと脚を踏み込んでより一層の暴走を開始する。

 正に走る破壊魔弾だ。

 その意思ある破壊魔弾は、摘発捜査活動をしていた警察団の一部隊がいるフロアに突入した。

 突如の轟音と共に突っ込んできたガボルドに唖然を食らわされた警察団員達は、対応できる筈がなく、瞬く間にガボルドの暴走に巻き込まれ、多数の殉職者を出す。

 更に免れた警察団員達をバスターカットラスで攻撃を加えた。

 破壊的な魔力を帯びた斬撃故に、斬ると同時に、蒸発させるように消滅爆発していくという現象が起こる。

 更に突入していった別フロアでは、警察団に乱撃と全身魔弾放射を浴びせ壊滅させる。

 ガボルドは再び突進的な暴走を再開し、出くわすオークの部下すらも咆哮と共に蹴散らしていく。

 遂には行き止まりの最深フロアに突入し、岩壁に衝突すると岩壁が爆発したように半壊した。

 だが、そのフロアだけは洞窟を掘削加工して造り上げた原始的かつ野生的なオークのアジトには似つかわしくない近代魔導機器のデータベースが備わったフロアであった。

 通常のオークのスタイルからして明らかに異質だ。

 恐らくはここが情報統制の中枢の場所なのだろう。

 更には日の光が射しこむ獄窓のような窓までもが造り込まれている。

 どうやら本当の奥面フロアのようだ。

 ガボルドはそのフロア内で、幾つかばかりの魔導機器を潰しながら歩く。

 少し立ち止まると、突如としてヒステリックなまでにバスターカットラスを振るい、他の魔導機器をも破壊する。

 フィレナもまた人形のように振り回されるが、ここに至るまで、彼女が何処にも激突することがないのは奇跡の沙汰だ。

 そしてガボルドは一旦暴れるのを止め、呼吸を荒ぶらせながら掴み上げたフィレナを舐め回すように見つめる。

 更には舌を伸ばし、本当に彼女を舐めようとする行為に及ぶ。

 否、舐めるではなく口まで彼女を運んだ。

 理性が当の前に消えたガボルドにとって、フィレナは食料としか映っていなかったのだ。

 蛇のごとく大口を開けたガボルドの顎が牙を剥き出す。

 フィレナの意識もまた戻る様子を見せていない。

 運命は哀しき少女の命すらも、汚らわしきオークの体内に納めようとしていた。

 その瞬間にフィレナは目覚めた。

「……ん……あたしは……うくっはっ……!!」

 フィレナは宙を逆さに吊るされているかのような感覚と全身にくる表現のしようがない痛みを感じた。

 次の瞬間、フィレナは自身の体が呑まれようとしている事を認識した。

「━━━っ!!」

 悲鳴を上げる事さえもできない。

 フィレナは本当の終わりを感じた。

 ラミアの呪いは運命すらも悲惨にしようというのか。

 全てはゼウサーに恋に落ちた事が発端だった。

 そしてそれは無自覚な不倫であり、ゼウサーの妻・ヘラの陰湿な嫉妬を買い、彼女の依頼によって不倫の罰を、ラミアの呪いを受けた。

 ラミアの呪いは罪の無い赤ちゃんの命を奪いに奪った 。

 やはりさだめだったのか。

 吸い込まれるようにガボルドの口内に下がり落ちたフィレナの長くしなやかな髪が入っていく。

「やっぱり……あたしはもう……終わり……なのね?カミサマ……赤ちゃん達への罪の罰なんでしょ?あたしは……許されない存在なんでしょ……?」

 フィレナの涙が逆さになって滴り落ちる。

 更に迫るガボルドの顎。

 今度こそフィレナの最期の瞬間が訪れた。

 











 「フィレナァアアアアアアッッ!!!」

 だがその刹那、ヴァッシュのフィレナの名を叫ぶ声と共に、ミサイルの如き凄まじい一撃が、突如としてガボルドへと突っ込んだ。

「ガヴラァェアッ━━━?!!」

 爆発的な轟音と荒ぶる炎を纏うフェイタル・ウィングの刀身が、ガボルドの左腕関節を肩から爆砕させ、同時にその吹っ飛ばされた左腕がフィレナを手離す。

「おおおおおおおっっ!!」

 ヴァッシュも岩壁を突き砕いた刹那に、フェイタル・ウィングを手放しながら岩壁を蹴り、フレイム・スプリゲンで跳躍する。

 その魔力付加の跳躍で落ち行くフィレナを落下ギリギリで抱き捕らえた。

 だが、ヴァッシュはフィレナを庇うような体勢で地面を背にして、慣性のままにスライドした。

 フィレナ自身がラミアとなってから、蛇の下半身がかなりの体重になっており、それをまともに乗せ受けたヴァッシュは過重ダメージを付加させてしまう。

「っく、ぐぅうっくっ……!!はぁ、はぁ、はっ……フィ、フィレナッ!!無事か?!フィレナッ!!」

 ヴァッシュの呼び掛けに対し、フィレナは何が起きたのか把握しきれずに放心状態のまま、ヴァッシュの胸元でうつ伏せになっていた。

「フィレナッ!!」

 三度目のヴァッシュの呼び掛けでフィレナの意識がはっとなり、フィレナは怯えるような表情でヴァッシュを見た。

 するとフィレナは、ヴァッシュと認識した途端に怯えから驚きの表情へと変わる。
 
「ヴァッ……シュ!!?あ……あたし、今……死んでたはず……?何が起きたの?今、一体……?!」

「今見ている現実の通りだ。今助けた!!今度こそ、今度こそフランベルジュに戻ろう……そう……今度こそな……」

「ヴァッシュ……ごめんなさいっ……!!何度も迷惑かけてっ!!こんな危険な所にまでっ……あたしっ……あたしっ……!!」

 ヴァッシュはゆっくりとフィレナの髪を撫で、彼女を仰向けに寝かせて安静な体勢にさせた。

「謝んなって!それにどの道この中には用事が既にあったからな……フィレナは悪くはない。自分を卑下することはないのさ。とにかく今は安静だっ。ほら!」

「え?これは……?!」

 ヴァッシュはフィレナを宥めながら手をかざし、効力は一定時間なものの、魔導波からの防御手段としてオーラ・フレイムの一部の魔力バリアーをフィレナに分け与えて見せた。

「効力の持続は限られてるが、しばらくは有害なヤツの魔導波に耐えれる魔力のバリアーさ」

「そう……なんだ……ありがとう……本当にっ……」
 
「ガヴァェアッ、ガガガガラァアアアアアア!!」

 その時二人の間に不快な咆哮が響き渡った。

 更に狂乱したガボルドの咆哮だ。

 ヴァッシュは立ち上がり、たった今のフィレナと接していた眼差しとは全く別次元の攻撃的な眼光を見せた。

「せっかくフィレナと話して頭に昇った血をリセットしたんだ……ここいらでレポーダーを再認識させてもらうぜ」

 ヴァッシュはハンティング証拠把握のツールアイテムであるレポーダーをかざし、現状況を再認識させた。

 そのコンパクトな魔導機の認識音が一瞬鳴ると、再びヴァッシュは脚部にフレイム・スプリゲンを発動させ、俊敏に跳躍する。

  その跳んだ先はフェイタル・ウィングが突き刺さった岩壁。

 ヴァッシュは着地と共に岩壁を破壊しながら抜き取り、更に跳躍する。

 ガボルドの頭上を舞いながらその面前へドガンと着地した。

 そして、フェイタル・ウィングを再び先程の構えで構えた。

 バーンフレイアをかけたフェイタル・ウィングの刀身をミサイルの如くガボルドへと突っ込ませたヴァッシュの技・フレイム・スパロウ。

 バーン・フレイアとフレイム・スプリゲンを同時発動させ、破壊力を昇華させた必殺技の一つだ。
 
 だが、先程の一撃ですらもフィレナの身やアジト内を考慮し、加減させていた。

 ヴァッシュは構えの最中にも周囲の魔導データベースにも注意を払う。

「こいつはまた、オークに似つかわしくない魔導機器だなぁ、おい。色んな一件の証拠情報がありそうだ。余計破壊できんな……それに……」

 ヴァッシュは既に理性の回復は見込めない迄に荒れ狂ったガボルドの表情を伺う。
 
「てめーはてめーで、もう話も出来ないようだな。マナペプタンの末期ってヤツか……!!!」

 ヴァッシュはぐっと踏み込み、ドンと跳躍後退した。

 ヴァッシュは敢えて後退し、技の間合いをとる為の手筈を踏んだのだ。

「ハッ、ハッ、ハッ、ハァッッガグルアァアア!!!」

 だが、ガボルドは狂っているが為、考え無しの猛進斬撃を奮い、ヴァッシュへと突っ込む。

 しかし、ヴァッシュは敢えてかわさず、狂ったバスターカットラスの一刀を今一度受け止めた。

 激突の瞬間に魔力衝撃波が爆発し、猛烈な風圧が拡がった。

 ヴァッシュの脚もまた地表に食い込む。

「グルゥアアアアアアッ!!!」

 猛り任せにガボルドは、バスターカットラスをヴァッシュのフェイタル・ウィングに押し込んでいく。

 が、既にフェイタル・ウィングはバーン・フレイアを発動させており、在り来たりな刃であれば簡単に溶解させる程の熱と炎を宿す。

 バスターカットラスは押し込む力に比例して刀身にフェイタル・ウィングの刃をスムーズに斬り込ます。

 そして、ヴァッシュはニヤリと笑みしながらフェイタル・ウィングの刀身を瞬発的な勢いで90°ひねり回した。

「……らぁああぁっっ!!!」

 バスターカットラスは瞬発的な勢いで、ガァンッという破壊音と共に破壊された。

「ガゴォルゥ……ッ!!?」

「斬滅するっっ!!!」

 くわっと開眼したヴァッシュは、オーラ・フレイムを攻撃側に変換。

 かつバーン・フレイアにその魔力を付加させた。

 そして、前傾姿勢に崩させたガボルドをかわしながらの左斬り上げ斬撃で右腕を切断。

 否、その威力は斬るを通り越した破壊とも言えるような威力だった。

 その破壊的斬撃を皮切りに、ヴァッシュは、乱斬撃技・フレイム・ブレイカーを食らわす。

 熱き豪剣が炎の斬軌道を描きながらガボルドを縦横無尽に炸裂させ、斬ると爆破のダメージを一気に与える。

 連続反復させる左右袈裟斬りと斬り上げ、強烈な回し薙ぎが、強固なマナペプタンの魔力筋肉を爆破させていく。

「ガァッ、ガガァッ、ガッ━━━?!!」
 
 未知の領域のオーバーキル・ダメージに、ガボルドは巨体を痙攣させながら立ち尽くす。

 立ち尽くせているのは、獄窓的な装置に気づいたヴァッシュの技繋げの意図があったが為に加減させていたからだ。

「外へぶっ飛ばすなら……こいつが得策だっ……!!!」

 そして、ヴァッシュは間合いを改めて空け、フェイタル・ウィングを引き構えて突きを打ち出す構えをした。

 加減無しのフレイム・スパロウ。

 ヴァッシュの脚に唸りを上げた炎が、その荒ぶる熱き渦を足元に収束していく。

 フェイタル・ウィングの刀身もまた激しく炎を唸らし猛る。

「終いだ。フレイム・スパロウッッ!!!」

 ドォンッと爆発するように足元の炎がヴァッシュを一気に射出させるかのように飛ばす。

 ヴァッシュの脚から噴き出す炎は正に彼をミサイルの如く猛進させた。

 その最中、ヴァッシュの猛撃する姿に、ラグナデッタが開口した牙を剥き出して激進する姿が重なる。

 そして破壊力を上げたフェイタル・ウィングの炎の突きを、ガボルドの胸部に炸裂。

 突き刺さったと同時に爆発までも起こすその凄まじき一撃は、衝撃波を発生させながらガボルドごと一気に獄窓のある岩壁を突き抜け爆砕。

 ヴァッシュはガボルドを突き刺したまま、空中を突き進んでいく。

 突き抜けた外は断崖となっており、レバノイアの街並みを一望できる環境下であった。

 そして、上空上でヴァッシュは止めの魔法を発動させる。

「これで、ハンティング・コンプリートだっっ!!!エンデ・エクスプロージェッッ!!!」

 「ルゥガァッ━━━?!!」

 フェイタル・ウィングの刀身が光り、一気に炎を爆発。

 突き刺さったままのガボルドを強烈な威力で破砕爆破させた。

 フェイタル・ウィングの刀身にチャージさせていたバーン・フレイアの高エネルギー魔力を更に収束し、一気に爆破させる強烈な魔法である。

 更にマナペプタンの副作用で増大した魔力エネルギーもそれに付加し、より一層の破壊エネルギーを爆発させたのだ。

 大きく開けたアジトの穴からもフィレナはその瞬間を見ていた。

 フィレナは骨折の痛みに邪魔をされながらも、ヴァッシュの身を案じて自らの身を乗り出して開けた岩壁から叫ぶ。

「ヴァッシュゥゥゥゥッッ!!」

 だが、憂いを長引かせる事無く、爆発の中に幾つかの小爆発を発生させながら空中を跳躍するヴァッシュの姿がフィレナの瞳孔に映る。

「ヴァッシュ……!!」

さながら勝利の花火のようにも見えた。

 否、勝利とはまた別の何かと言った方がフィレナには相応しかった。

 恐怖・脅威・苦痛・屈辱からの「解放」とでも言うべきか。

 フレイム・スプリゲンを駆使しながら近づいてくるヴァッシュを見ながら、 フィレナはようやく事が終わったのだと覚る。

 時間としては半日あるいは半日もない間かもしれないが、フィレナにとっては何年も拘束されていたかのような感覚だった。

 それがようやく終わりを告げている。

 涙が自然にこみ上げ、哀しみではない涙が彼女の頬をつたう。

 ヴァッシュもまたフレイム・スプリゲンを発動させつつ、こっちを見てくれているフィレナを目指し、幾度も炎の跳躍を繰り返していく。

「今、お迎えにあがります。フィレナ姫……ってか!」

 冗談混じりな呟きをしながらヴァッシュは真っ直ぐにフィレナの傍を目指して跳んだ。 







 一つの市を巻き込んだオーク襲撃と討伐の一件が終結を迎える。

 闘いを終えたファングや彼らの契約モンスター達、警察団、そして救出した女性達が集結するオークアジトの前にレバノイア市の飛空挺が降り立ち、奮闘した彼らを迎えた。

 レバノイア市長が奮闘した面々に深々と頭を下げ、フレッソル隊長達警察団一行は敬礼をし、ファング達は会釈する。

 警察団達はその後に続いて殉職した同胞達にも敬礼を送っていた。

 戦闘を終えたファング達も最終ミーティングの為にレバノイアに戻る。

 リバルトはレイディーンの背に乗り、直接レバノイアを目指す。

 レフェントは再びリザファイドを左手の指輪にその存在を戻し、飛空挺に乗り込む。

 アルゴとゴレアントは互いに頷き合い、誇らしく威風堂々とレフェントの後に続いた。

 ファルキアもそれに続こうとスレッグを呼ぼうと振り返る。

 するとそこには、女性達を最優先に保護収容していく中で、スレッグと彼が助けたエルフの女の子がぎこちない連絡先のやり取りをしている場面があった。

 ファルキアは「仕方ありませんね」とばかりにスレッグを待つことにし、乗船を他に譲った。

 他にもアルガイアが背に乗せて運んだ女性が彼に連絡先を渡すなど一部ハートフルな場面が見受けられていた。

 手当てを受け負えたフィレナは、あの監獄のような中で出会えたハーピーの少女やシルフィードの少女、ウンディーネの女性達と再会を喜び合って互いに寄せ会う。

 ヴァッシュやガロイア、グライヴ、ルファント、レスタル達はその光景を各々の契約モンスター達と微笑ましく見守る。

 そして、互いに見合わせた後、ガロイアとグライヴを筆頭に、皆で拳をぶつけ合いながら共闘依頼成功を称え合った。

 この日、生き残っていた少数のオーク全てが重要証拠として捕らえられ、マナペプタンも約3トンとその多数の関連物を押収。

 また、生きていたデータベースから繋がりがある闇組織の調査も開始され、より一層の警察団の働きに拍車をかけた。

 同時に今回の一件やこれまでの多数の犠牲者の存在に哀悼の意を表し、この件を後世に遺す記念兼回忌の碑と式典を造っていく運びとなっていった。

 だが、このような事例は氷山の一角であり、広く目を向ければ数多くのモンスターの獣被害や犯罪、災害がある。

 故に、ファング達は日夜闘い続けるのだ。

 帰路につくヴァッシュはガロイアより先にラグナデッタと共にフランベルジュを目指す。

 そして、ラグナデッタの背に装備されたセカンドシートには、疲れ果てて熟睡中のフィレナの姿もあった。

 眠れる森の少女ならぬ、眠れる蛇の少女と言うべきか。

 ヴァッシュはフィレナに振り返っていた顔を再び前に戻すと、タバコを取り出して一服をする。

「ふー……まじまじ見てると、ホント……フツーに可愛いな、フィレナ。てかやっぱり姉さんにみえてくる」

 スパスパとタバコで立ち込めるモヤモヤ感情を誤魔化すヴァッシュ。

『変態か貴様。そして、相変わらずのシスコンか。女にうつつ抜かしてりゃまた墓穴掘るぞ』

「ふー……ふひゅー……るせー……実際にフィレナは骨折させられたんだ……今回程の墓穴はそーそーしたことなかった。二度とこんな墓穴はしたかねーな」

 ラグナデッタのツッコミの後、二、三度タバコを吹かしてヴァッシュは答えた。

『どーだかな。ま、これからは女事で面倒かけるなよ?』

「さて……どーかな?もっと増えたりな……」

『何ぃ?』

 ラグナデッタのその一言の直後、ハーピーの少女を乗せたグリファリオとルファントが並走飛行する姿がヴァッシュの向こうに映る。

 ルファントの腰に手を回してつかまるハーピーの少女に、ライダーのルファントは緊張かつ赤面しつつも得意な「ニヒ」顔をしてみせる。

『まさか、あのグリフォンに乗っているハーピーがか?』

「いや、他にもいる……」

 ヴァッシュが指差ししたレバノイア市内では、ガロイアがグライヴとレスタル、ゾルド・タウラ、ボルガノスを、そしてシルフィードの少女とウンディーネの女性を引き連れてレバノイア飛空挺空港を目指していた。

 それぞれの利害や都合上、想いの状況上等の一致によるものだった。

ガロイアは呟く。

「おやっさん……絶対にビビるな。そして拒否るだろな……ま、華が増える分は喜ぶだろーが……」

 そして上空のヴァッシュは、タバコを軽い炎の魔力で燃やしながらラグナデッタに言った。

「なんか、これから一気に賑やかくなっちまうみてーだ。フランベルジュ。まるでアイツの飛空挺みたいにな……」

『アイツ?あぁ……地竜のコンタクター……お前のライバルの所か……』

「ライバル……確かに。あいつは好敵手ってなカンジだな……ま、今は新たな歓迎者達に祝杯でもあげるか……」

『ジェシーのおやっさんは知ってるのか?』

「あ、知らせてねー。ま、市レベルの報酬がまた入るからな。そいつでよしとしてもらうさ……」

『ふん……テキトーだな。否、面倒か』

「ま、そーゆーコトか?」

 他愛ない会話の後、ラグナデッタとグリファリオが旋回降下を開始し、吸い込まれるようにレバノイア飛空挺空港へ降下していく。

 ジェシーの新クルー拒みと次なる仕事依頼がその先にあるのだ。

「あ」

 降下体勢の最中、ヴァッシュがその一言で止まる。

 止まり方が異様に長い。

 故に、ラグナデッタがツッコミを入れざるを得なかった。

『ヴァッシュよ……「あ」って言って固まったままだが?何だ?「あ」ってのは?』

「……悪ぃ……ラグナデッタ。襲撃されたカフェにフィレナに買った服……置き去りしたままだ。せっかく買ったやつだし、戻ってくれ」

『何ぃっ?!知るかっ、ボケぇっ!!』




 続く
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