竜騎士のヴァッシュとラミアの少女 ~幻獣ハンター記録譚~

ホクチャッピー

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ハンティング7 「激突、四強オーク」

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 土煙が立ち込める中、ヴァッシュの鋭い眼光がガボルドに突き刺さる。

 彼の怒れる闘志に連動するようにしてオーラ・フレイムの炎が、フェイタル・ウィングが纏うアームズ・フレイムの炎が荒ぶっている。

 フィレナを弄んだガボルドに対して、ヴァッシュの怒りも魔力の炎に比例するかのごとく、激しいまでに猛っていた。

 その最中のヴァッシュはヤジロベエの如く不安定な理性を繋ぎとめていた。

 フィレナを気遣う気持ちがギリギリの一線で理性を維持させている。

 荒ぶる怒りに任せて叩き斬れば、あからさまにガボルドの足許に横たわるフィレナを巻き添えにしてしまう。

 今のヴァッシュは眼前のガボルドよりも自身の怒りの方が強大な敵であった。

 その一方でグライヴとレスタルもまた、進撃の最中にザビダとゴルンと対峙し、身の危機に晒されていたシルフィードの少女とウンディーネの女性を救っていた。

 その双方においても広い空間が設けられた洞窟部屋で対峙し合う。

 グライヴはシルフィードの少女の前に立ち、マグナンティアの銃口をザビダへ向けながらヘルムの下でふっと笑う。

 シルフィードの少女は絶望的な場所に現れたグライヴに驚きよりも不思議な安心感を覚えたように佇んでいた。

 グライヴはマグナンティアの銃口を硬く構えたままザビダに挑発めいた言葉を投げつける。

「こんな閉鎖空間ん中でそんな物騒なモン撃ってんなよ……しかも相手は女の子だぜ?俺は女の子、もといっ!レディーに手上げる輩には、ラグナ世紀のこの時代で一番容赦しねーぜ?」

「グヌヌヌヌ、ガァルゥアアアア!!」

 挑発を受けながらも、ザビダは目にうつるグライヴの魔力のオーラの質に警戒せざるを得なかった。

「シルフィードのお嬢さん……ドンパチが激しくなる……距離は置いといた方がいい。また蹴散らしたらお迎えに上がりますよ」

「……あたし……いえ、解りました。すいません!!」

 シルフィードの少女はあと引くモノを感じながらも、その場から空中浮遊しながら後にした。

 そしてグライヴが構えるマグナンティアの引き金がジャキャキッと鳴った。

 そのまた一方で、ウンディーネの女性に叩き込まれようとしていた魔導チェーンソーを、レスタルが魔導ドリルランス・ガイヴォルクで受け止めていた。

 双方に高速回転し合う魔導武装機同士が火花を散らし続けるその様子を、ウンディーネの女性は身を伏せた状態を解きながら垣間見る。

「……助かった?!っ!!あなたは?!」

「……ウンディーネの女性と見受けるが……この外道の近くは危険過ぎる。下がっていてくれ。あなたに近づく危険はっ……はぁッッ!!」

 そう言いかけながらレスタルは火花を散らし続けるゴルンの魔導チェーンソーをガォンッと弾き上げて見せる。

「ガグゥギ?!」

 ゴルンは一瞬の圧倒に体勢をよろめかせるが、再びその巨体を踏ん張らせた。

「グゥギギ……!!殺す!!殺ぉおおおすっ!!」

 レスタルはガイヴォルクを斜に構えながら言いかけた一言を言った。

「……近づく危険は対処する。特にこういう下劣な輩とかはな……!!さぁ、下がっていてくれ」

 レスタルのその姿勢を見上げながら、ウンディーネの女性はシルフィードの少女と同じように危険の中に感じる安心感を覚えて返事を返した。

「はいっ……!!」

 三点同時にアジトの魔導強化オークと対峙し合うヴァッシュ達に拮抗の空気が張り積める中、ルファントが、ガボルドを挑発してみせる。

「ニヒヒ!!ビビってるぜー。デカブツオークさんよぉ!!」

 「グブルゥッ……どこまでっ!!どこまでっ、俺様を邪魔する気だぁっっ?!!」

 挑発に刺激されたガボルドは、咄嗟にハーピーの少女の脚を掴み上げて彼女をヴァッシュ達の前で晒した。

 ハーピーの少女は未だ恐怖と放心に駈られており、叫ぶ事すらできない。

 この行為を前にルファントは下手な挑発はできなかった。

「っ……!!くーっ!!」

「ヤロウ……っ!!」

「グブルゥ、グブルゥ!!これ以上邪魔をしたら今ここで、ハーピーに俺の遺伝子を植え付けてやるっ!!!」

 下劣な脅迫にどう動こうにも動けないヴァッシュとルファント。

 そこへ別の巨大な何かが迫って来る地響きのごとき足音が聞こえた。

「まさか……!!」

「……やっぱ……片付けとくべきだったっすか?!」

 先ほどのヴァッシュ達が突撃した岩壁のあった空洞が更に破壊されて拡大。

 直後別の巨大なオークが、巨大なメイスを担いで現れた。

 レガボという名のオークだった。

「貴様はレガボ!!」

「すいやせん……ボス!!そいつらにシカトされたんでムカついて追跡していたら、ボスの部屋にまで来ちゃいやした!!」

「グブルゥ……!!愚かモノがっっ!!まぁいい……貴様、コイツらをがぁっ?!」

 ハーピーの少女を掴まえていたガボルドの腕に、ルファントの放った風魔法・ウィンド・ガンが炸裂した。

 トラスティアルの切っ先から放たれる目に見えない風の魔弾だ。

 ガボルド達自らが隙を作るという自業自得さだ。

「ありがたいお喋りをどーも!!よっとぉ!!」

 ルファントは颯爽と跳びながら落ちるハーピーの少女を、片腕に抱きかかえて駆け抜けた。

 その隙にヴァッシュはダゴォンッと跳躍し、フェイタル・ウィングを突き出してガボルドの胸元を目掛けて突撃する。

 下にいるフィレナを巻き込まないよう、ガボルドの上部を攻撃し、一気にフィレナからぶっ飛ばす算段だ。

 何とか理性を繋ぎ止めた上での瞬発的な行動だった。

 そしてアームズ・フレイムフェイタル・ウィングの燃え滾る竜の魔力の切っ先がガボルドの胸部に直撃した。

「ガグゥルッッ?!」

 フェイタル・ウィング直撃部の表面で竜の魔力の爆発が発生し、ガボルドはぶっ飛ばされながらその巨体を岩壁に激突させた。

 ヴァッシュはその隙にフェイタル・ウィングを一旦床岩に突き刺してフィレナに駆け寄る。

 横たわった体を起こそうとするフィレナをヴァッシュは直ぐ手に腕を差し伸べて抱き起こす。

「フィレナっっ……!!!」

「ヴァッ……シュ……!!ヴァッシュっ……!!うくぁぁっっ!!」

「っ!?」

 ヴァッシュに抱きつくフィレナだったが、フィレナのへし折られた尾の激痛が彼女を襲い続け、耐えかねて声を上げてしまった。

 少女が味わうには重すぎる痛みだった。

「どうした!?フィレナ!!怪我させられたのか?!」

 ヴァッシュがフィレナに問うと、フィレナは重苦しい痛みに体と声を震わせながら囁くように答えた。

「う、うん……尻尾……尻尾の骨……折られたっ……の……あたし……」

「な?!くっ!!すまない!!俺が、俺が不甲斐ないばかりにっ!!!本当にすまないっ!!」

 ヴァッシュはフィレナを抱きかかえながら、自らの不甲斐なさを彼女に謝罪した。

 だが、フィレナからしてみれば謝罪など受ける事など微塵もなく、お礼以外の言葉が見つからないまでに嬉しさと安心を 感じていた。

「ううん……なんで謝るの?あたし、凄く嬉しい……よ。ヴァッシュ……ありがとう」

「フィレナ……!!くっ、にしてもあのブタ野郎……!!女の子の骨を折るたぁ……ゲス中のゲスブタ野郎だなぁ……!!」

 ヴァッシュの脳内が怒りまみれになり、勝手に魔力が上昇し始める。

 僅かに残った理性をコントロールしながら、ヴァッシュはフィレナを再び横にさせた。

「しばらくは……我慢していてくれ……なに、直ぐにケリ着けるっ……ぐぐっぅ……!!!」

「ヴァッシュ……あ!!あたし、ずっとヴァッシュさんの事呼び捨てしちゃってた……ごめんなさい……」

 今になってヴァッシュを呼び捨てにしていたことを謝り始めるフィレナ。

 ヴァッシュの理性を繋ぎとめる何かが一つ大きくなり、ヴァッシュは彼女の頭にそっと手を置いて撫でた。

「いや……いいんだ。些末な事さ。それに、呼び捨ての方が俺はしっくりくる。確かに会って間もないが、逆にさん付けだと距離感感じちまうんだ……」

「ヴァッシュさ……ううん、ヴァッシュ……本当にありがとうっ……!!あたし、早くまたあなたの飛空挺に帰りたい……!!」

 ヴァッシュはフィレナに頷くと、オーラ・フレイムの魔力を自然上昇させながらゆっくりと立ち上がる。

 ぶっ飛ばされたはずのガボルドもまた、魔力のオーラを全身から放って歩を進めてくる。

 ヴァッシュはゆっくりと怒りの眼光をギリギリとガボルドに向けると、フェイタル・ウィングを十字に斬り捨てる動作をしながら構えた。

 ガボルドは全身に走る魔力を滾らせ、その魔力のオーラを露にさせる。

 ドモスの比ではない魔力。

 それを把握しながらも、ヴァッシュはフェイタル・ウィングで斬りかかった。

 そしてガボルドも全身の魔力を拳に収束させてヴァッシュに振るい放つ。

 竜の炎と魔力の薬物の力とが激突した。

 爆発のような激突と衝撃波が吹きすさぶが、直ぐに両者は攻撃を捌き合い、薙ぎと殴打を激突させた。

 斬撃を受け止める魔力の拳。

 ギリギリと魔力をスパークさせ拮抗する。

「いつまでもつかな!?所詮、人間では敵わぬわ!!ヌグァアア!!」

 魔力を拳から直に放つガボルド。

 ヴァッシュの足が地面にめり込む。

 だが、ヴァッシュの眼光は全く動揺した様子を見せる事はない。

「だから……どうしたぁっ??!」

 ヴァッシュもまた、炎の魔力の鎧であるオーラ・フレイムの力を収束解放させ、瞬発的な爆発を巻き起こす。

 ガボルドは全身の魔力で押されかけた力を踏みとどませ、再度拳を押し込んで魔力を放つ。

「……グルブゥッ……グゥギイイ!!」

「確かに……外で殺り合ったデカブツよりはできるな……フェイタル・ウィングの突きを受け、間近でオーラ・フレイムの収束爆発受けてコレだからな……!!」

「外……?ドモスのヤツと同じにスルナ!!マナペプタンの量が違うわ!!故に魔力も絶大なり!!」

「ふん……!!」

 拮抗に拮抗の魔力の激突が持続するその一方で、ルファントは助け出したハーピーの少女を抱えながら、この空間内の安全地帯に退避していた。

「ふゅー……ニヒヒ!!危機一発だったねー!!ま、俺達コンタクター・ファングが来たからには安心してよっ!もー、大丈夫……ふぉぅっっ!?」

 ルファントは片腕に抱えていたハーピーの少女を下ろしながら笑いかけて励ます。

 だが、この時初めて彼女を近くではっきりと見たルファントは、どストライクゾーンな彼女に脳天電撃を受けてしまった。

「あ……えっと……う、うん!!大丈夫!!ニヒヒ!!」

 しどろもどろになりながらルファントはサムズアップして誤魔化してみせた。

 すると、ハーピーの少女は放心状態から解かれはっとなる。

 ようやく彼女の意識が正常に戻れた瞬間だった。
 
「えっ……あたしは……?あれ?あなたは誰?」

「え!?今気づいたの?!きっとぉ、そ、そーとー怖い思いしてたんだねっ!!俺は、ルファント!!今悪いオークの連中が~」

 ルファントが顔を赤くしたまま説明をしようとしていた矢先、ハーピーの少女は再び恐怖に浸った表情でルファントの背後を指さす。

 ん?とルファントが振り向くと、バスターメイスを担ぎ上げながら踏み迫るレガボの姿があった。

 ルファントは頭をかきつつも、気合い気迫、テンション、モチベーション全快でトラスティアルを振り回しながら構えた。

「やれやれ~……アレが居ちゃ安心もできねーよねっ。しゃあっ!!いっちょ、やるぜ!!」

 一目惚れしたハーピーの少女にかっこつけたがる青臭い気持ちが先行するような張り切り方だが、実際にルファントは実力も兼ね揃えている。
 
「ニヒヒ……いっくぜぇっっ!!」

「グルアアアアア!!」

 ルファントはトラスティアルを振りかぶり、軽快に跳躍。

 対し、レガボは重々しいバスターメイスを振り上げる。

 激突すればルファントが圧倒的に不利なのは明白なはずだが、ルファントの表情に動揺などない。

 唸るバスターメイスがルファントに振り下ろされる。

 ハーピーの少女も目に見える不利な状況に極限の憂いを覚えてならない。

 次の瞬間、振り上げたトラスティアルの切っ先からドンッと突風が発生した。

 斜めに急降下しながらレガボの一撃をかわし、一気に着地するルファント。

 ニヒッと笑いながら次に来る一撃も同じ要領で空中へ舞い上がってかわす。

 レガボは真っ直ぐにバスターメイスを突き上げるが、再度ルファントはトラスティアルの切っ先からの突風でかわしてみせた。

「ヌグァアア!!」

 叩き下ろしては振り上げ下げをして見せるが、一向に中らない。

 再びルファントが舞い上がってかわすと、怒りに、苛立ちに満ちたレガボの一撃が唸った。

 にやけと共にこれをかわすルファント。

 レガボが突き上げたバスターメイスの一撃が天井の岩壁が破砕し、レガボ自らが崩落する岩塊の下敷きとなり果てた。

 ルファントは軽やかに着地する。

「ニヒヒ!!グリフォンの持つ風の魔力を自在に放てる俺のスプントーネ・ランス、トラスティアルは切っ先からウィンド・ガンを放てる!!武器にも加速にも使えるのさ!!」

 ルファントは岩塊の下敷きなったレガボに軽い解説をすると、振り返りながら立ち去ろうとする。

 その次の瞬間に、岩壁の山を弾き退けながらレガボが怒りの咆哮を放つ。

「ゴルグゥギイアアアアアアッ!!」

 ルファントはやれやれという仕草をしながら再びトラスティアルを構えた。

 レガボは歯軋りをしながら魔力が宿る両腕に力を籠めた。

 両腕に魔力のオーラが滲み出し、筋肉が更に脹らむ。

 そして再びバスターメイスの荒ぶる一撃がルファントに襲いかかった。

 次の瞬間、バスターメイスの一撃を受けた地面が爆発する。

 その爆発は岩塊を無尽蔵に砕き散らせた。

「いいい!!?やべっ!!」

 ルファントはステップを踏むかのように魔法風圧を駆使し、ハーピーの少女のそばに行き着く。

 彼女に迫る弾丸のごとき岩塊の雨に対し、ウィンド・ガンで素早く対応するルファント。

 正に危機一発。

 だが、レガボは容赦なく滅多打ちを開始し、岩塊爆発を巻き起こす。

「うぉおおお!!バカバカバカバカぁっ!!」

 ルファントはマシンガン並みにウィンド・ガンを放ち、完全に防御一辺倒の状況に立たされた。



 ザビダが無尽蔵に放つ魔導グレネードランチャーの魔弾により、爆発たる爆発がグライヴのすぐ側で巻き起こる。

 対するグライヴもまた、マグナンティアの引き金を素早く引いて魔弾を連発させていた。

 だが、魔弾の質は差の幅をカバーし切れないものがあった。

 マグナンティアの魔弾はザビダの所々に被弾させていくが、まるで効いていない様子を見せる。

 対し魔導グレネードランチャーの魔弾は常にグライヴのギリギリを掠めていく。

 それでもグライヴは陽気かつひょうひょうとしており、余裕が見受けられていた。

「ひゅー!!スリル満点だぁ!!しかも、コイツマグナンティア、効いてねー!馬鹿だ、馬鹿!!」

「この目は百発百中だっ!!マナペプタンにより、動体視力がはんぱねーんだよ!!」

「確かに……はんぱねー……な!!百発百中って言ってて……既にかわされてるもんなっ!!」

 ザビダを小馬鹿にした一言を飛ばしながらグライヴはザビダの胸部へ五発連続で撃ち込んだ。

 着弾爆発が五連発で発生する。

 通常ならば普通にダメージを受けて身を伏せるレベルだ。

 体毛に覆われた体にも激しいキズが覗かせている。

 しかしザビダは変わらず攻撃を続けてくる。

 グライヴは呆れたように言い捨て、アクティブに魔導グレネード弾に対してのガンアクションをこなしていく。

「おいおい……五発連続で食らってんだぞ……大した……ブタ……いや……イノシシだぜっ!!」

  次に放たれた魔導グレネードランチャーの一撃にグライヴは、回避をせずにマグナンティアを構え撃った。

 魔弾同士が空中で炸裂し合い、目映い爆発が発生。

「ガァブガァ?!」

 その閃光がザビダの強化された目に悪影響を及ぼし、ザビダの戦闘力を半減させた。

 ザビダの攻撃が一時的に止む。

 このタイミングを逃さず、グライヴはマグナンティアを横に構えて連発し、ザビダの頭部付近に着弾を集中させて射つ。

「グルアッ……グルブゥッ……グゥギイイ……ヴルアアアアッ!!」

 もどかしさ、うざったさに苛立ったザビダは、破れかぶれに魔導グレネードランチャーを連発した。

 一撃が一撃なだけあり、今いる空間そのものの崩壊に結びつき兼ねない。

「ちぃっ……考えなしが!!このままじゃ互いに生き埋めになっちまうだろがっ!!それどころか後方のシルフィードちゃんもアブネー!!しゃーねーなっ、チンタラ攻めてる場合じゃねーや!!」

 グライヴは最悪、空間の崩壊に結び付くと危惧し、止めのユニットであるブラスト・マグナランチャーを装備しようと背に手を伸ばす。

 だが、異様に背面がスカスカしていた。

「あれ!?い?!おいおいおい!!外じゃぶっぱなしって……あ!!」

 グライヴはアジト洞窟の入り口に一旦置き去りにしたのを思い出していた。

「……いやいやいや、俺としたことが……どーりで身軽にアクションできると思ったぜ。うん……!!っくっそー!!」

 グライヴは自らの落ち度を恨みながら無作為に襲い来るグレネード魔弾をかわし続ける為の走りに移った。

 グライヴはキザなようでいてアホ臭く映ってしまう意外な醜態を晒し続けていった。

 それとは対象的に真剣に張り詰めた戦闘の空気の中で、レスタルとゴルンが互いの魔導回転型武装を激突し合っていた。

 必然的に叩き下ろしと打ち突き上げの闘いとなっていた。

 レスタルは眼光の焦点をゴルンから離さずに、無言でガイヴォルクでの攻撃に集中する。

 高速回転する魔導チェーンソーの刃が休む間を与える事なくレスタルに襲いかかる。

 レスタルは弾き返しや突き捌き、歯止めからの捌き突きと言った防戦よりの攻めの姿勢を維持し続けていた。

 時に身をかわしながら退き、退くと見せて突きを繰り出す。

 ゴルンはそれを縦に振り下ろした魔導チェーンソーで叩き伏せようとした。

 レスタルは斬撃を一瞬で見切り、叩き伏せに来る魔導チェーンソーにガイヴォルクの回転速度を上げた捌き当てで対処する。

 突きからの一瞬の転換。

 火花を散らしながら巨大な魔導チェーンソーにガイヴォルクを沿わせ弾き退けて見せた。

 そして、その反動で体勢を崩すゴルンにレスタルはその隙を逃さず、一気にゴルンの懐に飛び込み、ゴルンの胸部目掛けガイヴォルクの一撃を与えた。

「……!!」

 だが、その一瞬でレスタルは手応えがない事を察し、再び間合いを取る為に飛んで退く。

「随分と硬い胸板だ……少し手を抜き過ぎたか……」

「俺はぁ!!腕と胸板には自信があるんだよぉおおおお!!」

 再び始まるゴルンのチェーンソー乱舞。

 レスタルはメガネを整え、また始まる攻防撃に身を投じた。






 一方、外ではオークの兵達が壊滅し、いよいよファングと生き残った警察団とでの一斉制圧に動いていた。

 警察団レバノイア方面隊隊長・フレッソル・スボレアとファング達がオーク一味のアジトへ突入し、迷路のような洞窟式のアジト内を進撃する。

 その最中、角ばった顎に髭を揃えている武骨さが際立つフレッソルが、駆け抜けながらガロイアやレフェント、アルゴ達に礼を述べた。

「多大なる犠牲、否、殉職の中に諸君らの行動もあって市民女性達の救出とオーク制圧に後一歩となった!!感謝以外に言葉はない!!ありがとう!!」

「いんや、まだ完全に終わった訳じゃないぜ隊長さん。それに礼はまだ早過ぎだし、走って言う事じゃねーだろ?!」

 ガロイアはフレッソル隊長の先急ぐ礼にダメ出しをしてみせた。

「そうか……それは、すまない!!中の状況が読めぬが、市民女性達の救出とマナペプタン疑惑の捜査は我々が行う。中の状況を完全に把握できるまで救出の助力と残存オークの駆逐に務めてもらいたい!!」

「俺達ファングはその為に来てんだ……ここからも、仕事させてもらうさ!!」

「心強い……さっきから既に多数の斃されたオークが、点々と転がっているな……爆発したような、焼かれたようなヤツまでいる……」

 フレッソルが様子を進撃する通路上に目を配りながらそう言うとアルゴがグラビタルを担ぎながら言った。

「先行突入したコンタクター達がやって退けてくれたのは間違いない。後はミーティングの最後辺りに共有したアジトの見取り図を思考で確しつつ突き進むのみだ!」

「しかし、魔導テクノロジーも凄いものとなったものだ。上空と洞窟内からの魔導波で内部地形をスキャンできるとは……」

「あぁ。しかもある種の魔導波で思考に共有できる……正にトンでも魔法機器だな!」

 アルゴとレフェントの会話に出た魔法機器とは魔導スキャンシステムと魔導メンタリンク・シェアシステムの事である。

 前者はレフェントいわく、上空から見た対象建造物や内部に通じる空間に特殊な魔導波を放ち、跳ね返るその魔導波により内部の構造を形勢させたデータを作る魔導機器である。

 後者は様々な魔導データ機器の情報をまた別種の思考に作用する特殊な魔導波により、脳内に情報を伝える魔導システム機器である。

 共に世に出回る以前の開発実験段階のモノであるが、特に後者は使い方によっては危険なチート性を招き兼ねない為、開発にあたっての慎重な判断が要求されているのが現状だ。

 今回のオークアジト攻略において、レバノイア市が特例措置として魔導開発企業・マギアントリア・コーポレイションから特例貸与してもらっていたのだ。

 故にミーティングに最後まで参加していないヴァッシュとガロイアはアジトの構造は把握できていない。

 ヴァッシュがルファントと進撃を組んだ事にはそのような理由も絡んでいた。

 だが、内部の戦力までは正確に割り出すことはできない為、警察団が先陣を切るにはまだ危険の可能性を持っていた。

 その点を危惧するファルキアが、次の分かれ道に差し掛かった時、自ら先陣を志願する。

 神官であるが故に紳士的な誠意を示す。

「皆さんの思考には道の把握は出来ているとおもいますが、一つ先の道に何があるか知れません。私が次の分岐点で先陣を取り進撃します。スレッグ、行きますよ!」

「えぇっ?!俺達が?!」

「他が為に先陣を成す。当然の務めです!!それに、突然の相手に対し我々であれば全体魔法を放てますからね!!修行の一環です!!」

「……了解でーす」

 ファルキアは契約者というよりも弟子並みな態度に加えて消極的かつ意志がないスレッグにため息を漏らした。

 だが、ファルキアのその意見にアルガイアやリバルトもまた賛同する。

「ほう……修行鍛練かっ!!主のその意見、同感だ!!俺も肖り、別ルートの先陣を進撃しようではないか!!」

「俺も遠距離ガンナーだかんな!!先制は有利だ!!俺も他の別ルートいこうかな?!」

「そう促せれただけでも恐縮の限りです。スレッグ……あなたにとっと彼らの姿勢に見て習うものがあると思いますよ。ファングとしての自覚をもっと持って下さい!!改めて行きますよ!!」

「ぅぇーい……(なんかダンジョン的な空間の戦闘ってなんか気がせまーくなる感じになるんだよな~)」

 情けない返事とダンジョンの閉鎖空間に付きまとう変な感覚を覚えながらも、スレッグはフリズアルを構えてファルキアに続いた。

 後続するフレッソルは改めてコンタクターのファングに対する頼もしさを抱きながら並走同行するガロイアに言った。

「やはり、コンタクターのファングとは、凄いモノだ。今回の一件我々は基本、ある程度のモンスターには対処できるが、この次元になると、余りにも我々だけでは無様なモノになるからな……」

「そーっすか……ま、また何か厄介なモンスター事があれば、またギルド介して対応するぜ。今は、この街規模の厄介事にピリオドつけやしょう……」

「うむっ!!」






 彼らが進むその先にはアジトを牛耳るオーク達の力が奮われ続いていた。

 魔導グレネードランチャーをザビダが我が物顔で放ち続ける中、グライヴはマグナンティア一挺のみの戦闘を強いられていた。

 かわし、かわす戦闘に徐々かつ確実に奪われるスタミナ。

 マグナンティアの攻撃もザビダに対し、通常攻撃は今一つのようであった。

 というよりもマナペプタン投与作用により、ダメージの感覚が遮断されていると言った方がふさわしい。

 更に常に中るか中らないかのギリギリの一線の状況下もまたグライヴを心身に疲弊させていく。

「ちっきしょっ……うおっっ……ひゅーっ……常に間一髪!!らぁっ……!!」

 マグナンティアの魔弾を五発連続で土手っ腹に射つが、やはり今一つだ。

「ヴルアアアア!!無駄無駄ムダァアアアアッ!!貴様は砕け散る!!砕け散るぅっ!!」

 グライヴはザビダが放ったその言葉に、極まりなき皮肉さを感じてならなかった。

「やれやれ……撃ち砕くが心情な……俺なんだが……なぁっ……しゃーねー、やるかっっ!!」

 グライヴは身を翻しながら意思で自身の魔力を上げ、次に来る魔弾に向けマグナンティアを放った。 

 双方の魔弾が空中爆発をし合う。

「何?!まかさ、魔弾に魔弾を?!コシャクなぁっっ!!」

 更にグライヴは移動する事なく、着地したその場に止まって寸分の狂いなくグレネード魔弾を射ち当て続ける。

 次から次に放たれるグレネード魔弾が空中で消えていく。

「おのれっ!!だが、いつまでモツかな?!少しでも集中力が切れたらもうアウトだな!!」

 グライヴは先程まで溢し続けていた状況から一変し、一言も発する事なく射ち当て続ける。

 その最中にグライヴはエメラルド状のオーラを宿していく。

 今正にグライヴは自身に二つの魔法を同時にかけていた。

 攻撃魔力を上昇させるマグナドと命中及び集中力を同時に強化上昇させるシュータリアを発動させながら、グレネード魔弾が延々と空中爆発していく。

 流れる時間は刹那と一瞬を去来する攻防の次元。

 ドモス戦のヴァッシュ同様、正規なる魔力と薬による魔力の闘いになった。

 ザビダは血管を剥き出してグライヴを射つが、同時に相殺される。

 メンタルに苛立ちがきたザビダは、一瞬射つのを止め別の角度に切り変えてグレネードを射ち込むも、これも相殺遮断された。

 遂にザビダは自身の身体をグライヴに突っ込ませ、近距離からのグレネード魔弾発砲に踏み切った。

「うぉおおおおおっ!!死ねぇぇっ!!」

 突っ込んだザビダに対し、グライヴは回避判断で跳躍。

 巨体をかわすが、マグナンティアを構えた瞬間にザビダの魔導グレネードの銃口が旋回した。

 同時に放たれた魔弾同士の相殺爆発がグライヴの目の前で起こり、グライヴは吹っ飛ばされてしまう。

「うぉっっ?!っーーー!!」

 グライヴは瞬時にマグナンティアの発砲を利用して体勢の糸を手繰らせた。

 だが、着地の瞬間にザビダの魔導グレネードが火を吹いた。

「貰ったぁっ!!」

 グライヴはグレネード魔弾の爆発に晒された。

 その瞬間を後引かれた思いから戻ったシルフィードの少女が目にしてしまう。

「そんな……!!あぁっ……!!」

 自分を助けに来たが為に一人のファングが犠牲になった。

 彼女は泣き崩れそうになりながら口を押さえてグライヴに対し謝った。
 
「ごめんなさい……!!ごめんなさい、あたしなんかの……あたしなんかのせ……え?!」

 だが、この瞬間シルフィードの少女はポジティブな風が生きている事を感じとる。

 むしろポジティブどころの収まりではない風を感じていた。

 爆発の中からは無傷なるグライヴが姿を見せていた。

「はぁ!!?ふ、ふざけるなぁ!!」

 ザビダは信じがたいこの状況に対し、破れかぶれに発砲する。

 連続で被弾するグライヴであったが、やはり無傷で佇んでいた。

「な、何故だ?!何故だぁあ!!」

 ザビダが放った苦し紛れの二発をグライヴは瞬時にマグナンティアの速射ちで相殺させてみせた。

「やれやれ……ネタバレかっ……コイツはイージス・メイルっていう魔力相殺特性のある特注品だ。ま、特性発動の魔力消費が意外にでかいんで多用は控えてるって分け……伊達や酔狂じゃねーよっ。消費っていやお宅の方がヤベーんじゃないか?」

「あ?!ざけんなっ……?!……な?!!」

 全く火を吹く様子を見せない魔導グレネードランチャー。

 ザビダの魔力は先の二発で一気に枯渇していたのだ。 

 更に蓄積していた。マグナンティアの攻撃のダメージが反動のように襲いかかった。 

「がはっ!?ががはぁっ……ば、ばかな?!マナペプタン……マナペプタンが、切れっ……!!」

 ザビダが地に伏せかけてる時、シルフィードの少女がグライヴの傍に来た。

 グライヴは近づく彼女の美少女さに思わず口笛を吹いてしまうが、すぐに切り替えた。

「って、おいおい!!危険だぞ!!なんで戻った?!」

「あのっ……あなたが、心配でっ……あたしなんかの為に助けてくれたと思うと……なんか、後引くものがあって……あなた、魔力消費してますよね?少しでも力にならせてください!!」

 突然の健気さに唖然となってしまうが、グライヴは喜んで彼女の想いを受け入れた。

「そっかい……じゃ、頼むぜ、シルフィードのお嬢さん」

「はいっ!!あたしの魔力もかなり消費してますが、あなたの魔力を回復させる事はできます!!では……」

 シルフィードの少女は目を閉じてグライヴに手をかざした。

 彼女の手からはそよ風のような魔力回復の風がが生みだされ、グライヴの消費した魔力を回復させていく。

 グライヴも自身の身を持ってそれを感じ取っていた。

「っしっ……!!魔力が戻った感するぜっ!!シルフィードのお嬢さん、サンキューな!!」

「いえっ、あたしは本当にお役に立ちたかっただけで……その……えっと、え?!」

 グライヴはシルフィードの少女の頭を撫でると、マグナンティアを構えてザビダに向かい踏み出した。

 ザビダもまた、所持していたマナペプタンを投与しようとしていたが、その器具をグライヴは三発の魔弾を浴びせ破壊した。

「ひっぃ……た、たのむ、はしゃぎすぎたっ……見逃してくれっ……命は!!命は!!」

「ベタなへたれ台詞吐きやがって……てめーはどんだけそー言った人々の命奪った?それに、あのシルフィードのコを思いっきり撃ってたよな?」

「ぐっ……ぐあらぁあああ!!」

 ザビダはグライヴ目掛け、立ち上がりながら魔導グレネードランチャーそのもので叩き潰しにかかった。

 だが、次の瞬間に魔導グレネードランチャーがザビダの腕ごと爆発した。

「がぁああああ!!腕がっ、武器がぁああっ!!」

 岩の天井にかざしたマグナンティアから放たれた強化魔弾が武器破壊を促した。

 そして倒れ伏せたザビダに向け、グライヴはマグナンティアの銃身を横にして向けた。

 そしてその銃口から強化魔弾が素早く連発し、ザビダを一気に圧倒する。

「ががはぁ、ががぐぐご、がぁあああっ!!」

 そして銃口に魔弾がチャージされ、更なる強化魔弾が銃口に形成されていく。

 その状態でマグナンティアをかざし、瀕死と成り果てたザビダの顔面に押し当てた。

「シルフィードのお嬢さんはどんだけ恐怖したと思ってんだ?女の子に手を出す愚物は……容赦できねー……シルフィードのお嬢さん、できるだけ離れてあっち向いててくれ」

 グライヴの言葉にシルフィードの少女はその場から飛び発ち、目を伏せながら顔を背けた。

「この魔導銃・マグナンティアにも、止めの為の必殺かつ一撃の魔法技があるのさ……覚悟しな……イグナント・マグナム!!」

 翳したマグナンティアの銃口から先に凄まじい爆発が唸り響く。

 グライヴの放ったイグナント・マグナムの零距離射撃の一撃がザビダの頭を爆砕させ、血すらもその爆炎にかき消した。

 グライヴはジャキっとマグナンティアを構えから引き、イージス・メイルのヘルムの隙間からザビダの躯を見つめて呟く。

「……カッとなっちまったよ。カッとな……」



 この止めの一撃が決まった頃、レスタルもまた魔導機武装同士の激戦を繰り広げていた。

 息を飲む緊迫かつ殺伐とした空気の中、ウンディーネの女性がその光景を見守り続ける。

「あたしは……何も出来ないの?!この状況がずっと続けばきっとあの方は……!!」

 ウンディーネの女性の憂いをよそに、ゴルンが唸らし振り奮う魔導チェーンソーとレスタルのガイヴォルクの激突と捌き合いが今もなお継続していた。

 レスタルは次に来た魔導チェーンソーの一撃を当て弾いて捌き、その場から跳躍する。

「ガバフハハハ!!逃げ始めたかぁ?!うるぁあああっ!!」

 地面の岩盤を裂き砕くその一撃は、直に受ければどうなるかを物語る。

 同時にガイヴォルクの強度が、かなりのものであることも証明していた。

 レスタルは無言でステップを踏みながら、流れとリズムに乗せた突きを繰り出した。

「ぬああああっ!!」

 ゴルンはその一撃をまたもや魔導チェーンソーで受け捌く。

 弾かれた攻撃が再び衝突し、高速回転する互いの刃がギャリギャリと火花を散らせる。

「キリが無いな……無いなら、着けるまでだ……!!」

  レスタルは力を押し込めてくる魔導チェーンソーに対し、瞬発的にガイヴォルクを引き下げ、ゴルンの体勢を一気に崩す。

 レスタルは素早く自身に回転をかけ、遠心力を付加させた一撃を見舞った。

 その一撃はゴルンの胸部に炸裂した。

 だが、マナペプタンの魔力で強化された胸に致命症を与えることができない。

「腕もまた同様だろうな……」

 再び間合いを取ったレスタルはガイヴォルクを軽く振り回し、構え改める。

 ゴルンは息を荒くさせながら魔導チェーンソーの回転を更に早め、魔力が加圧されたのかスパークも帯び始めた。

「さっさと野郎なんかぶちのめして……ウンディーネを斬ってみたいんだよぉ~……!!これで終わりにしちまうぜぇ……ゲヘ!!」

「下劣な……」

 レスタルもまたガイヴォルクのドリルを高速回転させ始めた。

 スパークを走らせるガイヴォルクにはジャイロ効果が発生し、レスタルの構える腕が回転の反動で動く。

「いくぜぇあっ!!」

 先行したゴルンの一手がレスタルに迫り、魔力強化された豪腕と共に襲い掛かった。

 レスタルは来る斬撃を見極めんと、斬撃の軌道に視点を凝視して集中させる。

 その時、高圧水流と思わしき水が突如としてゴルンの顔面に射ち当てられた。

「がばがぅぇっ?!」

 想定外の不意討ち。

 レスタルが水流の方向に振り向くと、ウンディーネの女性が水流魔法を放っていた。

「あたしの魔法、気を散らせるくらいはできます!!今の内に早く!!」

 レスタルはウンディーネの女性に頷き、この瞬間を逃す事なく魔力を上昇強化させたアサルト・ブレッヘルの一撃を穿つ。

 魔導チェーンソーの刀身側面に炸裂させたアサルト・ブレッヘルは、見事に魔導チェーンソーを破砕させた。

「ぐぁがああっ?!く、クソがぁ!!」

 乱暴に振りたくる仕草をしながらゴルンは暴れた。

 レスタルはヤケクソに振りたくられるゴルンの左腕攻撃をかわすと、更に魔力集中させながらゴルンの懐へと再度飛び込んだ。

「どこまで耐えれる……?!覇ぁあああああっ!!」

 レスタルは唸りながらスパークするガイヴォルクを叩き込み、その一撃をきっかけに乱舞の打撃と突きをゴルンに見舞い続ける。

 そしてそれらの攻撃が激突する毎に目映い白色光の爆発を起こし、ゴルンの強靭な胸部にダメージを蓄積させていく。

「ががはぁっ、ぐげごあっ、あがぁっ……!!」

 次第にレスタルの攻撃は突き穿ち一辺倒の攻撃にシフトし、左右からの往復突き、突き上げ下ろしを組み合わせた激しい乱舞を繰り出す。

「覇ぁああああっっ……!!」

  縦横無尽の強烈な一撃、一撃の穿ちを連続で浴びせ続けるレスタル。

 その攻撃速度やドリルの回転速度も激しさと共に加速していく。

「凄い……!!あたし達があれほど圧倒されていたオークが……絶望的なまでに圧倒的だったあのオークが……!!」

 そしてレスタルは、強烈な突きを放ちゴルンを岩壁に激突させた。

 彼の力強さに驚きを隠せないウンディーネの女性にガイヴォルクをかざしながら叫んだ。

「ミス・ウンディーネ!!今さっきの水流を俺のガイヴォルク……ドリル・ランスに最大魔力で射て!!」

「えっ!?」

「早く!!」

「は、はいっ!!我に宿りし水の力よ……今こそありったけの力を与えんっ……!!」

 ウンディーネの女性が放った全力の高圧水流がレスタルのガイヴォルクに直撃した。

 すると、ガイヴォルクのドリルにウンディーネの水の魔力が吸収され、あたかも無重力にいるかの如くガイヴォルクのドリル周りに水のうねりを宿した。

「俺のガイヴォルクの特性……他の魔力を付加させ、自身に更なる魔力強化を促す……通常のアサルト・ブレッヘルじゃない一撃で蹴りを着ける……!!」

 ガイヴォルクのドリルの回転に合わせてうねるウンディーネの水の魔力。

 彼女の魔力の性質がガイヴォルクの魔力に宿った状態であり、威力はガイヴォルク及びレスタルの魔力ベースとなる。

 故にウンディーネの魔力でも攻撃力に加担できるのだ。

「ががはぁっ……ぐぅっ……これしきっ、これしきぃっ!!!」

 レスタルは悪あがきを止めずに抗うゴルンにガイヴォルクを向けた。

「貴様には……過ぎた力による鉄槌が相応しい……終いだ……!!!」

 レスタルはガイヴォルクを引き構えながら、ゴルン目掛け一気にダッシュする。

 「ごぐあぁあああ!!」

 悪あがきの左拳を掻い潜り、レスタルが跳躍する。

 そして高速かつ更なる強烈なガイヴォルクの一撃をゴルンの懐に激突させる。

 その瞬間、穿ったその胸部を抉り貫きながら水蒸気爆発のような超高圧水流がゴルンを一気にぶっ飛ばした。

 ゴルンは叫び声すら上げずに、白目を向きながら絶命して吹き飛ばされていった。

 レスタルは通常モードになったガイヴォルクを持ち構えると、ウンディーネの女性に振り替えりながら告げる。

「今、我々ファングの同胞と警察団とでここのオーク一味の根絶及び摘発、そして拉致された市民女性達の救出作戦を展開させている……」

「そうだったんですか……!!それを聞いて少し……いえ、大分安心できました!!本当にありがとうございます!!」

「礼には及ばない。ファングとしての務めだ。だが、ここに居合わせたのも何かの縁。あなた方女性陣を必ず無事に脱出させてみせるさ……どう考えてもこのような場所は相応しくないからな」

「はいっ……!!」

 レスタルが歩を進ませ始めた後を、少しばかりの駆け足でウンディーネの女性は後に続いた。



 その一方、バスターメイスの乱舞が巻き起こす爆発的な岩盤の嵐を防戦し続けるルファント。

 ルファントがチラ見する同じフロアでは、ヴァッシュとガボルドが未だに力を拮抗させて動かない状況が続かせていた。

「くぅ~……このままじゃ、魔力が切れちまう……っ!!」

 その時、レガボの乱舞が止む様子を見せた。

 チャンスではあったが、今度は直にバスターメイスを振りかぶって突っ込んで来る。

「はっはー!!もー、じれってー!!一気に二人まとめて潰してやんよっっ!!」

「ちっっ!!ちょっと動くぜっ!!」

「きゃっ?!」

 ルファントは直ぐ様ハーピーの少女を片腕で抱えながらその場からウィンド・ガンの風圧で脱出した。

 直後にはレガボのバスターメイスの強烈な一撃が炸裂し、これまた岩盤爆発が発生する。

 ルファントは防御と間合いを更にとる両方の判断をした。

 そしてハーピーの少女をその場に下ろした瞬間に、ルファントは左右多角的にウィンド・ガンを放ちステップ的な軌道に自らを乗せた。

「しゃあっ、いっ……くぜっ!!」

 そして遂にルファントはレガボに自身を突っ込ませ反撃に出た。

「がははっ、ばかめぇええええ!!」

 レガボは突っ込んできたルファントを魔力の豪腕に乗せたバスターメイスを奮い見舞う。

 対し、ルファントは刹那にウィンド・ガンで加速をかけながら懐に突っ込み、バスターメイスが岩盤に炸裂する前にレガボに一矢を報いる。

「らぁああああっ!!」

 ドンッという衝撃と突き刺しがレガボの腹に炸裂した。

「がぁっっ?!」
 
 突きとウィンド・ガンを直に炸裂させたのだ。

 ゴルンとは異なり、レガボの胸周りに関しては中ランクのオークと大差はない。

「おらおらおらおらぁぁぁあっ!!」

 ルファントはダメージに驚愕と呻きに囚われたレガボに容赦無い連続突きをウィンド・ガンと共に叩き込む。

 ドドドンという突風の衝撃がトラスティアルが突き刺さると同時に体内を攻撃する。

 それだけに止まらず、ルファントはトラスティアルを振り回して構え、連続の斬撃乱舞を浴びさせた。

 リーチの長いスプーン・トーネ系のランスの斬撃がレガボを斬り刻んでいく。

 しかもこの斬撃にはカマイタチの魔力効果・ウィンド・スライサーも発生させており、凄まじく鋭利になったその斬れ味は通常のランスを超えていた。

「がぁあああっっ、ぐぐぐぐあっ……!!」

 そしてルファントは、ウィンド・ガンとウィンド・スライサーの併合乱舞を闘争心の限りに食らわせ続ける。

「しゃしゃっしゃっしゃっしゃぁあっっ!!これ以上っ……あのコを……危険にっ……晒させねぇっ……ぜぇええ!!おっしゃらぁあああああっっっ!!」

 ルファントの闘争心に乗せた斬撃という斬撃、穿ちという穿ちが乱舞に乱舞を重なる。

 レガボの胸部周りはズタズタに切り裂かれ、穿ち砕かれていき、致命的なダメージが爆弾のごとくレガボに蓄積していった。

「が……ががっ……がっ?!!」

 余りにもの大ダメージを蓄積させたレガボは、遂にバスターメイスをその地に落とした。

 ルファントもこの期を逃す事なく魔力を上げ始めた。

「止めといっっくぜぇっ!!はぁああっっ……!!」

 ルファントは風の魔力を脈動させるように全開発動させながらトラスティアルを振りかぶって構える。

 魔力上昇に伴い、洞窟地形内にルファントを中心とした唸る暴風が吹き荒れはじめ、やがてその暴風がトラスティアルの切っ先に移動していく。

 そして、ルファントは風の魔力が吹きすさぶトラスティアルの斬撃をレガボに一気に高速で見舞った。

「ブラスト・シュナイデンッッ!!!」

 一線に繰り出された斜め振り下ろしの超高速斬撃が続く薙ぎ斬撃と二連で入り、一線目はレガボの豪腕を吹き飛ばし、二線目にレガボ自体を烈断させながら二分した巨体を吹き飛ばした。

「俺、女のコに危険を与えるヤツ……大っキライなんだよなぁ……!!自業自得だ、クソオーク!!!」

 ルファントはトラスティアルを振り回しながら構え納めると、ハーピーの少女にピースしていつものニヒヒ笑いをして見せた。

 そして尚拮抗中のヴァッシュに視点を移した。

「ニヒヒヒヒっ……て、あれ?」

 ハーピーの少女は再び恐怖の余りに放心状態になっていた。

 ルファントは、慌てて駆け寄るとハーピーの少女をまた宥めた。

「ご、ゴメン!!また怖い思いさせちゃった?!それとも今の俺にびびっちゃってる?!だとしたら~何度も謝るけど、ご、ゴメン!!」

 慌てふためくルファントを見ながら再びハーピーの少女は素を取り戻すと、涙を流してルファントに泣き着く。 

「うっ、ぅうっ……わぁあああああん!!」

「ひゃっはー!!わわわわわー!!おわわわはー!!」

  しっかりと彼女の発育途中の胸も当たり、男子の喜びと焦りと慌ての感情を一緒にしてはしゃぐルファント。

そして、赤面して硬直する。

 だが、一方は真剣な殺伐とした戦況が流れている。

 ルファントは今一度意識をしっかりと持ちなおして、ハーピーの少女の頭をぎこちないながらも優しく撫でた。

 そして、ヴァッシュの真剣姿勢に目を移した。

「あははは~……はは~……っしゃっ!!さて……後はドラゴンの力を持った兄ちゃんのお手並み拝見といきますかって……あぁ?!」

 ルファントはその時、一人で固唾を呑み続けるフィレナが目に入った。

 いくら距離が離れているとはいえ、戦闘レベルの魔力が彼女の目線先で巻き起こっているのだ。

 フィレナが晒されたら人溜まりもない程の魔力だ。

「やっべ!!ラミアの女の子、一人じゃやべーな!!立てるかい?一緒にあのラミアの女のコの所へ行く!!せめてバリアー的な魔法できるヤツがいねーと危険に晒されるからね!!」 

「あっ……う、うん!!あたしもお姉ちゃんの所へ行く!」

「お姉ちゃん?!まぁ、いーや!!しゃあ!!」

「きゃ?!」

 ルファントはハーピーの少女の羽と同化している手を取り、彼女も連れてフィレナの許へと駆け出す。

 抱きつかれて何かが吹っ切れたのか、さっきまでのルファントのシドロモドロさは影をみせつつある。

 その時、拮抗し合っていた魔力に変化が現れ、ヴァッシュの炎のオーラの熱風が弾けた。

  ヴァッシュの魔力がガボルドの魔力を上回ってきた証拠だ。

「ぐぅっ?!はぁぁあああっ……!!」

 一瞬焦ったガボルドは維持する魔力を押し込もうとするが、ヴァッシュが連続で発し始めた魔力の熱風に更に押され始めた。

 だが、皮肉な事にその魔力の熱風がフィレナにまで及ぼうとした。
 
 その瞬間にフィレナの前に颯爽とルファントが立ち、風の魔力を利用した風の壁を発生させた。

「っとぉ!!危ない危ない!!」

 それと共にハーピーの少女がフィレナに抱き付いた。 

「お姉ちゃん!!」

「ハーピーちゃん?!うっくっっ……!!」

 抱き付かれた反動に折られた尾骨に強い痛みが走ってしまう。

「お姉ちゃん?!」

「……何とか大丈夫。あいつに骨、折られちゃったの」

「えぇっ?!酷い!!お姉ちゃん、本当に大丈夫なの!?」

「うんっ……大丈夫だよ」

 フィレナの表情はどこか無理をしている様子を見せていた。

 扶助暴行極まりないガボルドの行動に対してのルファントの怒りが疼く。

「かぁ~……聞いてるだけで参戦したくなって来たぁー!!あの、デカオークぜってー許さねっ!!でも、ここは竜の力のショータイム……あの兄ちゃんに譲るぜ」

 ヴァッシュは怒りを抑え込んだ理性の生命線を今も尚握りしめ続けていた。

 故に拮抗の攻防戦を継続していたいたのだ。

 そうでもしなければ放つ魔力で今いる空間を破壊しかねない。

 だが、その意地も眼前のガボルドを直視する毎に制御が難しくなる。

 オーラ・フレイム、アームズ・フレイムの二つの魔力の炎が猛り唸る。

 そして遂にヴァッシュはチャージアップ魔法、バーン・フレイアをフェイタル・ウィングに発動させ、ガボルドの拳との拮抗を破綻させた。 

「ごぉあごおおっっっ?!!」

 その爆発するようなバーン・フレイアの発動炎がガボルドを弾き飛ばす。

 ヴァッシュはバーン・フレイアを発動させ、より炎を荒ぶらせたフェイタル・ウィングをガボルドにかざした。

「待たせたな……何とか理性を確保した……じゃなきゃ、今の時点でこの空間は崩壊していたぜ……ドラゴンの力がどれ程か……いや、違うな……てめーの罪に相応の力の鉄槌……教えてやる……!!」


 続く

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