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マイヒーローは夢の中 起1-1
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「だあああ! なんだよお前この夢は! 毎回毎回追いかけられやがって!」
「知らないよ! 僕だって好きで見てるわけじゃないもん! 嫌ならさっさと出て行ってよね!」
「出て行き方がわかんねぇんだよ! 大体なんで悪夢ばっか見てんだよ! ちったあいい夢見ろや!」
「知らな…らんちゃん後ろ! ゾンビ! ゾンビいるっ!」
「バカ! お前の後ろにもいんだよ! どけ!」
藍(らん)の長い脚が紫苑(しおん)の真横を一瞬にして通り、腐った体を蹴り上げる。
どしゃ、と倒れた体はさらさらと音を立てて砂へ変化するものの、その砂がまたゾンビを作り上げた。
気付けば五体ほどのゾンビに囲まれている。
「ひいぃ…ら、らんちゃん…」
「これくらいで泣くなバカが! …もういい、面倒だ」
目にたくさんの涙を浮かべていると、ひょい、と肩に担がれた。
ぽんぽんと尻を叩かれる。
「逃げるぞ」
「無理だよ! だってすごいいっぱいいるんだよ!?」
「うるせ! お前は黙ってぎゃーぎゃー言ってろ!」
…結局僕は喋っていいのか悪いのか。
頭にたくさんのはてなマークを浮かべていると、肩に担がれたまま藍が全速力で走る。
「ゾンビは付いてきてるか?」
「付いてきてる! しかも増えてる!」
「だあああ! お前は何してんだ全くよお! 自分の夢ん中だろ! コントロールしろ!」
「それができないから困ってんじゃん!」
「せめて俺を空に飛ばせ! 空に逃げさせろ!」
「うぅぅ…できるかな…」
藍の肩の上で両手を合わせてぶつぶつ願ってみる。
どうか空を飛べますように、どうか空を飛べますように、どうか…何度か口にすると、ふわりと浮遊感を覚えた。藍の両足が地面から離れる。
そしてジェット噴射さながら、紫苑を担ぐ藍が勢いよく真上へ飛んだ。
「飛べた! 飛べたよらんちゃん! うっ、き、きも、ち…わ…」
「そういやお前、高所恐怖症だったな。ザマァ」
見えないけれど、確実にニヤァと笑われた。ムカついたので背中をドンドンと強く叩いてやると、むに、と尻を揉まれて「ひゃあ!」と変な声が上がる。
「ちょっと! なにしてんの! ちょっ、直にさわ…ちょっ!?」
視界が揺れたと思いきや、すぐ目の前に藍の顔が来る。肩担ぎから横抱きに変更され、急な登場に紫苑の胸がドキッと高鳴る。
「うるせえ」
「…らんちゃんが悪いんでしょ。僕は悪くない」
「ほら、目ぇ閉じてしっかり捕まっとけ。落ちんなよ!」
ぎゅ、と強く抱き込まれ慌てて藍の首に腕を巻きつけると、感覚的にどんどん上へ昇っていく。
怖いので目は開けられないでいると、
「は!? ゾンビも空飛んでんだけど!? 追いかけてくんだけど!?」
「えー!? ウソでしょ!?」
「お前の夢どうなってんだよ! なんでゾンビが飛んでんだよ!」
「…ごめん。ちょっと前に映画おもしろいのないか探してたときに、大空を翔けるゾンビ、ってタイトル目にしました…。たぶんそれが意識に入っちゃってると思います…」
頭の上で藍が勢いよく吹き出した。
「なんだよそのタイトル…くっそつまんねータイトルすぎて逆に気になるじゃねぇか!」
「見てないからね! 決して見てないからね!?」
「最初の十分ぐらい見てるだろその言い振り! おもしろかったか!?」
「いいえ全く!」
「俺が目ぇ覚したらそれ一緒に見てやるからな! 覚えてろよ!」
今にも雨が降りそうなどんよりとした空向かって、紫苑を抱いて逃げる藍のスピードが上がった。
「知らないよ! 僕だって好きで見てるわけじゃないもん! 嫌ならさっさと出て行ってよね!」
「出て行き方がわかんねぇんだよ! 大体なんで悪夢ばっか見てんだよ! ちったあいい夢見ろや!」
「知らな…らんちゃん後ろ! ゾンビ! ゾンビいるっ!」
「バカ! お前の後ろにもいんだよ! どけ!」
藍(らん)の長い脚が紫苑(しおん)の真横を一瞬にして通り、腐った体を蹴り上げる。
どしゃ、と倒れた体はさらさらと音を立てて砂へ変化するものの、その砂がまたゾンビを作り上げた。
気付けば五体ほどのゾンビに囲まれている。
「ひいぃ…ら、らんちゃん…」
「これくらいで泣くなバカが! …もういい、面倒だ」
目にたくさんの涙を浮かべていると、ひょい、と肩に担がれた。
ぽんぽんと尻を叩かれる。
「逃げるぞ」
「無理だよ! だってすごいいっぱいいるんだよ!?」
「うるせ! お前は黙ってぎゃーぎゃー言ってろ!」
…結局僕は喋っていいのか悪いのか。
頭にたくさんのはてなマークを浮かべていると、肩に担がれたまま藍が全速力で走る。
「ゾンビは付いてきてるか?」
「付いてきてる! しかも増えてる!」
「だあああ! お前は何してんだ全くよお! 自分の夢ん中だろ! コントロールしろ!」
「それができないから困ってんじゃん!」
「せめて俺を空に飛ばせ! 空に逃げさせろ!」
「うぅぅ…できるかな…」
藍の肩の上で両手を合わせてぶつぶつ願ってみる。
どうか空を飛べますように、どうか空を飛べますように、どうか…何度か口にすると、ふわりと浮遊感を覚えた。藍の両足が地面から離れる。
そしてジェット噴射さながら、紫苑を担ぐ藍が勢いよく真上へ飛んだ。
「飛べた! 飛べたよらんちゃん! うっ、き、きも、ち…わ…」
「そういやお前、高所恐怖症だったな。ザマァ」
見えないけれど、確実にニヤァと笑われた。ムカついたので背中をドンドンと強く叩いてやると、むに、と尻を揉まれて「ひゃあ!」と変な声が上がる。
「ちょっと! なにしてんの! ちょっ、直にさわ…ちょっ!?」
視界が揺れたと思いきや、すぐ目の前に藍の顔が来る。肩担ぎから横抱きに変更され、急な登場に紫苑の胸がドキッと高鳴る。
「うるせえ」
「…らんちゃんが悪いんでしょ。僕は悪くない」
「ほら、目ぇ閉じてしっかり捕まっとけ。落ちんなよ!」
ぎゅ、と強く抱き込まれ慌てて藍の首に腕を巻きつけると、感覚的にどんどん上へ昇っていく。
怖いので目は開けられないでいると、
「は!? ゾンビも空飛んでんだけど!? 追いかけてくんだけど!?」
「えー!? ウソでしょ!?」
「お前の夢どうなってんだよ! なんでゾンビが飛んでんだよ!」
「…ごめん。ちょっと前に映画おもしろいのないか探してたときに、大空を翔けるゾンビ、ってタイトル目にしました…。たぶんそれが意識に入っちゃってると思います…」
頭の上で藍が勢いよく吹き出した。
「なんだよそのタイトル…くっそつまんねータイトルすぎて逆に気になるじゃねぇか!」
「見てないからね! 決して見てないからね!?」
「最初の十分ぐらい見てるだろその言い振り! おもしろかったか!?」
「いいえ全く!」
「俺が目ぇ覚したらそれ一緒に見てやるからな! 覚えてろよ!」
今にも雨が降りそうなどんよりとした空向かって、紫苑を抱いて逃げる藍のスピードが上がった。
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