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マイヒーローは夢の中 起1-2
しおりを挟む「あー疲れた…。だりぃ、もう飛べねぇ」
そう言って藍が草原へ体をダイブさせた。その隣へ紫苑もごろりと横になる。
どうやらゾンビは全て振り切ったようだ。
「夢の中って疲れるよね…」
「お前のせいだろ」
「僕のせいじゃない」
「大体な、もっといい夢見ろや。なんだこの景色」
藍の指が空を指しぐるぐる回る。全体的に景色が悪いと言いたいのだ。
曇天な空に今にも枯れそうな色合いの草原、少し先に滝が見えるけれど、ドブ色である。
風に吹かれどこかからか飛んでくる葉っぱも今にも朽ちそうで、遠くに見える川なんて緑を通り越して真っ黒だ。
「気色ワル」
「人の夢に対して失礼な…」
「せっかく俺が来てやってんのにもてなせや。…俺がここに来て何日目だ?」
「…今日でちょうど五日目」
「そうか…俺もう五日も寝てんのかよ…」
寂しそうに笑った目を、藍が腕で隠すのを紫苑は見ないフリをした。
しばらくするとどんより色の空に『アラームまで後00時間03分』と達筆な文字で描かれる。
ぱっと紫苑が体を起こす。
「起きる時間だ…」
「もう朝か。さっさと起きてガッコー行ってこい、アホ」
「僕もここに残っ…」
「はあ!?」
勢いよく頭を掴まれ、ギリギリと締められた。
「いたいいたい、痛いよらんちゃん」
「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇよ! 起きれられるんだったら起きろよバカが!」
「わかったから! 痛いっ! 頭つぶれちゃう!」
手を離してくれたものの、ズキズキ痛んで目に涙が浮かぶ。
それを見て藍が、はんっ、と鼻で笑った。
「泣き虫が」
「いじめっ子め…」
「あぁそうだよ、お前いじめていいのは俺だけなんだよ」
浮かぶ文字が『アラームまで後00時間01分』と表示が変わる。
ぐらりと紫苑の視界が揺れる中、藍がいつもどおり、ニヤァ、といじめっ子の顔をして笑った。
「お前をいじめていいのは俺だけ、お前を助けていいのも俺だけだ。夢ん中だろうが地獄だろうが、どこまででも追いかけてやる」
ーースマホのアラーム音と共にベッドから飛び起きた紫苑の目に映るのは、いつもどおり自分の部屋だった。
カーテンの隙間から朝日が覗き込む。課題を広げっぱなしのテーブルの上には、昨夜片付け忘れたマグカップが置いてある。
中身はなんだっけ。もう覚えてないや。
「ゆめ、だよね、やっぱり…」
アラームを止めた。
ーー夢じゃありませんように、とこの五日間願いながら起きたけれど、全部裏切られた。
スマホのメッセージをアプリを開いても、藍とのやり取りは五日前で途切れている。
こっちが現実。夢は夢。
紫苑はぎゅっと、スマホを抱きしめた。
「早く起きてよ、らんちゃん…」
ぼろぼろと涙をこぼしても、いつものように叱ってくれる声は聞こえなかった。
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