魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

文字の大きさ
291 / 364

291 お兄ちゃんと鈴木さん

しおりを挟む

「お兄ちゃん、いらっしゃい。さっき電話で会社の人が一緒って言っていたけど……って、え!? 鈴木さん!??」

「なっ、ルカちゃん!??」

「――――よし! おい、ルカ。デコピンするから前髪あげてちょっとおでこ出せ」

「――何で!!??」



※※※

 大雪が降った日。
 代打でのコンビニバイトが終わって、帰宅後のお風呂上がり。


「どうだ、召喚主! 僕の作った雪だるまは見事だっただろう!」

「王子。確かに見事な出来栄えだったけどさぁ……あれじゃ雪だるまじゃなくて雪まつりでしょうよ。何なの、あの雪像の完成度。しかも、なんか竜の目が暗闇で赤く光っていたんだけど」

「ああ、それな……。本物の目は違うんだけど、雪で作った都合上、赤の方が映えると思ったんだよ。召喚主的にはリアルを追求した方が良かっただろうか? 大きさを妥協した以上、僕としてもそこは最後まで迷ったんだが、やはり映えがなぁ……」

「……いや、映えとかは別にどうでもいいんだけど。そんなことより、目が光ってるアレ、王子の魔法でしょ? こっちであまり目立つことはしないでよね」


 ――等々。

 セルフ召喚してきた王子から雪だるまの感想を求められ、十分の一スケールの闇落ち竜の完成度についてあれこれ話している時に、お兄ちゃんから電話がかかってきた。


「はい、もしもし……ああ、お兄ちゃん。急にどうし――え!? 電車が止まって帰れない? しかも、この雪で会社のエアコンが? うわー、寒いのに大変だねぇ。うん、いいよ、いいよ。困ったときはお互い様だし。うちで良ければおいで。お客様用のお布団とかないからゴロ寝になるけど……あ、寝袋はあるんだ? ――は!? 会社の備品!?? 大丈夫なの、その会社……。ああ、うん。ご飯くらいは用意するよ。でも、あんまり遅くなると近所迷惑になるからお風呂は難し……え!? これからすぐに行くから大丈夫? うわわわ…、解った!! 急いで帰ってもら……ああ、いやこっちの話。ハイハイ。会社の人も一緒なのね。うん、待ってる!(やべえ!!)」


 お兄ちゃんとの電話中。

 手持無沙汰なのか全自動召喚機をいじっていた王子が、通話を切った途端に何やら慌てた様子で私に話しかけてきた。


「おい、召喚主どうした!? もしかしてお兄ちゃんとやらが家に来るのか!? 僕にお下がりをくれた、例のゲームが上手なお兄ちゃんか!??」

「そうよ。私の上から三番目のお兄ちゃん。この雪で家に帰れないのに会社のエアコンが壊れちゃったから、これから会社の人と一緒にウチへ泊まりに来るって。……それで、王子には悪いんだけど……」

「それは大変だ。急いで準備しないと!! 分かった、すぐ帰るから!!」

「え? あ、うん」


 来た早々悪いな……とは思ったが、お兄ちゃんとの会話で何となく状況を察したらしい王子が空気を読んでサッと向こうに帰ってくれた。聞き耳を立てて慌てていたし、もう少しごねられるかと思っていたが――正直、助かった。

 ただでさえ急なお客様でゴタゴタしているのに、これで王子まで居た日には収拾がつかなくなってしまいますからね。



 ――で。電話で言っていた通り、しばらくしてお兄ちゃんが来たわけですが。




「……いや…、まさかアイツの妹がルカちゃんだったとは」

「……私もビックリしました……。……まさか、お兄ちゃんと鈴木さんが知り合いだったなんて」


 そう、何とお兄ちゃんがまさかの鈴木さん連れでやってきたのだ。

 どうやらお兄ちゃんと鈴木さんは同じ会社に勤めていたらしく、鈴木さんはお兄ちゃんの直属の上司にあたるのだとか。
 前に鈴木さんの会社名を聞いた時に何となく聞いたことある気がしたんだけど――どうりで聞き覚えがある訳だ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです

ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

初恋にケリをつけたい

志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」  そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。 「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」  初恋とケリをつけたい男女の話。 ☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)

処理中です...