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291 お兄ちゃんと鈴木さん
しおりを挟む「お兄ちゃん、いらっしゃい。さっき電話で会社の人が一緒って言っていたけど……って、え!? 鈴木さん!??」
「なっ、ルカちゃん!??」
「――――よし! おい、ルカ。デコピンするから前髪あげてちょっとおでこ出せ」
「――何で!!??」
※※※
大雪が降った日。
代打でのコンビニバイトが終わって、帰宅後のお風呂上がり。
「どうだ、召喚主! 僕の作った雪だるまは見事だっただろう!」
「王子。確かに見事な出来栄えだったけどさぁ……あれじゃ雪だるまじゃなくて雪まつりでしょうよ。何なの、あの雪像の完成度。しかも、なんか竜の目が暗闇で赤く光っていたんだけど」
「ああ、それな……。本物の目は違うんだけど、雪で作った都合上、赤の方が映えると思ったんだよ。召喚主的にはリアルを追求した方が良かっただろうか? 大きさを妥協した以上、僕としてもそこは最後まで迷ったんだが、やはり映えがなぁ……」
「……いや、映えとかは別にどうでもいいんだけど。そんなことより、目が光ってるアレ、王子の魔法でしょ? こっちであまり目立つことはしないでよね」
――等々。
セルフ召喚してきた王子から雪だるまの感想を求められ、十分の一スケールの闇落ち竜の完成度についてあれこれ話している時に、お兄ちゃんから電話がかかってきた。
「はい、もしもし……ああ、お兄ちゃん。急にどうし――え!? 電車が止まって帰れない? しかも、この雪で会社のエアコンが? うわー、寒いのに大変だねぇ。うん、いいよ、いいよ。困ったときはお互い様だし。うちで良ければおいで。お客様用のお布団とかないからゴロ寝になるけど……あ、寝袋はあるんだ? ――は!? 会社の備品!?? 大丈夫なの、その会社……。ああ、うん。ご飯くらいは用意するよ。でも、あんまり遅くなると近所迷惑になるからお風呂は難し……え!? これからすぐに行くから大丈夫? うわわわ…、解った!! 急いで帰ってもら……ああ、いやこっちの話。ハイハイ。会社の人も一緒なのね。うん、待ってる!(やべえ!!)」
お兄ちゃんとの電話中。
手持無沙汰なのか全自動召喚機をいじっていた王子が、通話を切った途端に何やら慌てた様子で私に話しかけてきた。
「おい、召喚主どうした!? もしかしてお兄ちゃんとやらが家に来るのか!? 僕にお下がりをくれた、例のゲームが上手なお兄ちゃんか!??」
「そうよ。私の上から三番目のお兄ちゃん。この雪で家に帰れないのに会社のエアコンが壊れちゃったから、これから会社の人と一緒にウチへ泊まりに来るって。……それで、王子には悪いんだけど……」
「それは大変だ。急いで準備しないと!! 分かった、すぐ帰るから!!」
「え? あ、うん」
来た早々悪いな……とは思ったが、お兄ちゃんとの会話で何となく状況を察したらしい王子が空気を読んでサッと向こうに帰ってくれた。聞き耳を立てて慌てていたし、もう少しごねられるかと思っていたが――正直、助かった。
ただでさえ急なお客様でゴタゴタしているのに、これで王子まで居た日には収拾がつかなくなってしまいますからね。
――で。電話で言っていた通り、しばらくしてお兄ちゃんが来たわけですが。
「……いや…、まさかアイツの妹がルカちゃんだったとは」
「……私もビックリしました……。……まさか、お兄ちゃんと鈴木さんが知り合いだったなんて」
そう、何とお兄ちゃんがまさかの鈴木さん連れでやってきたのだ。
どうやらお兄ちゃんと鈴木さんは同じ会社に勤めていたらしく、鈴木さんはお兄ちゃんの直属の上司にあたるのだとか。
前に鈴木さんの会社名を聞いた時に何となく聞いたことある気がしたんだけど――どうりで聞き覚えがある訳だ。
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