魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

文字の大きさ
295 / 364

295 あざとい系王子様の可愛くない抵抗

しおりを挟む

 今後の方針が決まったところで私はコーヒーを淹れることにした。

 お兄ちゃんは日頃からゲーム中はコーヒーやらエナジードリンクやらを飲みまくっているので特に怪しまれることはないだろう。それに、コーヒーなら利尿作用があるから作戦を遂行するのに丁度いい。

 そして、夜に眠れなくなると困るので私と鈴木さんの分はノンカフェインコーヒーにした。早朝バイトは休みだが私は明日一限から講義があるし、鈴木さんも会社。
 睡眠不足が翌日に響くとお互い大変ですからね。

 王子の分は……悩んだ末にハーブティーにした。異世界に帰った後で眠れないとなると、エンドレスでこっちに来そうだし。

 考えすぎかもしれないが、こういう時の王子の努力を侮ってはいけない。あの王子は方向性を間違えれば間違えるほど手強くなっていきますからね。

 ちなみにお兄ちゃんの分のコーヒーはうんと濃くしてやった。先ほどから、ちょいちょい私のことをディスってくるのがムカついたので、虐げられた妹からのささやかな仕返しです。


 お兄ちゃんなんて眠れなくなってしまえ……!!



「…はぅ……っ! 俺に細やかな配慮をしてくれる心の妹が可愛い……! そして実兄には迷わず嫌がらせをする小悪魔な実妹もこれはこれで! ……ああ、くっそ……なんて羨ましいんだ…………!! どっちも捨てがたいのに両立できないのがもどかしい……!」



 ちょいちょい心の声が漏れてくる鈴木さんを横目に作戦を実行。僕もコーヒーがいい……と言わんばかりに、王子が私の分のノンカフェインコーヒーをホニャララ言葉で奪っていったので、私の分の飲み物は王子用のハーブティーに変更です。

 ったく、マイペース王子め……!! いったい、誰のせいで私がこんな苦労をしていると思っているのか……!


 ……おっと、いけない。心を落ち着ける作用のあるハーブティーを飲んで一旦落ち着こう――ヨシ!


 そして、お兄ちゃんに喉が渇きそうなお菓子を勧めつつ、飽きがこないようにコーヒー以外にも、紅茶やら緑茶やらを大量に飲ませる私。


 そして、ついにその時が――!!



「ちょっとトイレに行ってくる」

 ……パタン。



 お兄ちゃんがトイレに入ったのを確認しつつ、急いで王子に詰め寄る私と鈴木さん。


「ほら、王子! お兄ちゃんが戻ってくる前に帰って!」
「この悪魔め。今日はもう十分に遊んだだろう! 今のうちに帰れ!!」

「※~?」

「え~、じゃないでしょ。え~、じゃ。ほら、日付変わるころに兵士の見回りがあるんでしょ?」


 と、二人がかりで説得を試みるも……。



「※○△? 今夜は帰りたくない」



 ……などと、何やらあざとい系女子みたいなことを言って抵抗を重ねる王子様。ああもう!

 こうなったら最後の手段。後々面倒だから極力使いたくなかったけれど、ここまで来たら仕方がない。


「……あんまり我が儘ばかり言っていると、二度とこっち呼んであげないわよ……?」


 ビクリッ。


 言葉が通じないながらも流石にまずいと思ったのか、慌てて帰っていく王子様。

 まったく。手間を掛けさせて。心臓に悪いったらありゃしない。


 ジャー…。


 王子の帰還と時を同じくして。トイレを済ませたお兄ちゃんが部屋に戻ってきた。


 おっと、どうにか間に合ったみたいです。
 はあぁ……何か疲れた……。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

異世界から来た華と守護する者

恋愛
空襲から逃げ惑い、気がつくと屍の山がみえる荒れた荒野だった。 魔力の暴走を利用して戦地にいた美丈夫との出会いで人生変わりました。 ps:異世界の穴シリーズです。

初恋にケリをつけたい

志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」  そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。 「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」  初恋とケリをつけたい男女の話。 ☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)

悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい

はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。  義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。  それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。  こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…  セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。  短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。

あの方はもういないのです。

豆狸
恋愛
楽しげに笑うその顔は、その身体が本物のエスタファドルのものだったときとはまるで違う。 だが、だれもがそれをバスラに恋をしたからだと思って受け入れていた。

処理中です...