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295 あざとい系王子様の可愛くない抵抗
しおりを挟む今後の方針が決まったところで私はコーヒーを淹れることにした。
お兄ちゃんは日頃からゲーム中はコーヒーやらエナジードリンクやらを飲みまくっているので特に怪しまれることはないだろう。それに、コーヒーなら利尿作用があるから作戦を遂行するのに丁度いい。
そして、夜に眠れなくなると困るので私と鈴木さんの分はノンカフェインコーヒーにした。早朝バイトは休みだが私は明日一限から講義があるし、鈴木さんも会社。
睡眠不足が翌日に響くとお互い大変ですからね。
王子の分は……悩んだ末にハーブティーにした。異世界に帰った後で眠れないとなると、エンドレスでこっちに来そうだし。
考えすぎかもしれないが、こういう時の王子の努力を侮ってはいけない。あの王子は方向性を間違えれば間違えるほど手強くなっていきますからね。
ちなみにお兄ちゃんの分のコーヒーはうんと濃くしてやった。先ほどから、ちょいちょい私のことをディスってくるのがムカついたので、虐げられた妹からのささやかな仕返しです。
お兄ちゃんなんて眠れなくなってしまえ……!!
「…はぅ……っ! 俺に細やかな配慮をしてくれる心の妹が可愛い……! そして実兄には迷わず嫌がらせをする小悪魔な実妹もこれはこれで! ……ああ、くっそ……なんて羨ましいんだ…………!! どっちも捨てがたいのに両立できないのがもどかしい……!」
ちょいちょい心の声が漏れてくる鈴木さんを横目に作戦を実行。僕もコーヒーがいい……と言わんばかりに、王子が私の分のノンカフェインコーヒーをホニャララ言葉で奪っていったので、私の分の飲み物は王子用のハーブティーに変更です。
ったく、マイペース王子め……!! いったい、誰のせいで私がこんな苦労をしていると思っているのか……!
……おっと、いけない。心を落ち着ける作用のあるハーブティーを飲んで一旦落ち着こう――ヨシ!
そして、お兄ちゃんに喉が渇きそうなお菓子を勧めつつ、飽きがこないようにコーヒー以外にも、紅茶やら緑茶やらを大量に飲ませる私。
そして、ついにその時が――!!
「ちょっとトイレに行ってくる」
……パタン。
お兄ちゃんがトイレに入ったのを確認しつつ、急いで王子に詰め寄る私と鈴木さん。
「ほら、王子! お兄ちゃんが戻ってくる前に帰って!」
「この悪魔め。今日はもう十分に遊んだだろう! 今のうちに帰れ!!」
「※~?」
「え~、じゃないでしょ。え~、じゃ。ほら、日付変わるころに兵士の見回りがあるんでしょ?」
と、二人がかりで説得を試みるも……。
「※○△? 今夜は帰りたくない」
……などと、何やらあざとい系女子みたいなことを言って抵抗を重ねる王子様。ああもう!
こうなったら最後の手段。後々面倒だから極力使いたくなかったけれど、ここまで来たら仕方がない。
「……あんまり我が儘ばかり言っていると、二度とこっち呼んであげないわよ……?」
ビクリッ。
言葉が通じないながらも流石にまずいと思ったのか、慌てて帰っていく王子様。
まったく。手間を掛けさせて。心臓に悪いったらありゃしない。
ジャー…。
王子の帰還と時を同じくして。トイレを済ませたお兄ちゃんが部屋に戻ってきた。
おっと、どうにか間に合ったみたいです。
はあぁ……何か疲れた……。
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