魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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296 図太い系召喚主の主張

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「あれ? オージはどこに行ったんだ?」


 トイレから戻って、周囲を見回し何かをキョロキョロと探すお兄ちゃん。残念ながら、王子は強制的に異世界へお帰りいただきました……とは言えないので。


「門限あるから帰った。お兄ちゃんによろしくって」

「そうなのか……。せっかくだから今日は徹夜で遊ぶつもりだったんだが」


 ……と、しょんぼりするお兄ちゃん。

 危なかった……! 言葉の通じにくいホニャララ状態とはいえ、機密情報駄々洩れ王子とお兄ちゃんが朝まで一緒とか無理ゲー過ぎる……!!


「コラ。お前な、まだ若いからってそんな生活をしていたら駄目だろう。明日だって仕事があるんだから、もっと常識的なワークライフバランスを考えろ」

「仮眠室に住んでいると社内で噂の鈴木さんだけには言われたくないっす」

「あ。それは私もお兄ちゃんに同感です」

「ルカちゃん!!?」


 鈴木さんてば、社内でそんな噂になっていたのか……。

 でもまあ、早朝バイトで朝食買いに来る鈴木さんとの遭遇率を考えれば納得ですね。あれはもはや夜勤レベルです。


 王子によると、鈴木さんは徹夜に強いとか何とか、社畜特化スキルを持っているらしいけど、そんなの絶対、身体に悪いに決まっているもの。


「鈴木さん、働き過ぎは良くないですよ。公私ともにお世話になっている鈴木さんには、健康に長生きしてほしいです。……うちで新商品が出るたび買って行ってくれるし、この先も元気に通ってほしいから」

「ルカちゃん……! 心の妹にそんな優しい言葉をかけてもらえるなんて……!!」

「いやいや、鈴木さん。コイツのセリフよく聞いてました? 鈴木さんのことバイト先の売上に利用する気満々ですよ??」

「な……っ!? お兄ちゃん酷い! 私は本気で鈴木さんのことを心配して言っているのに!!」


 確かに新商品のお勧めはするけど、どれも鈴木さんの健康や好みを考えたチョイスです。私だって、別に何でもかんでも闇雲に勧めているわけではありません。

 責任感が強いのは解っているけど、あんな働き方をしていたら、無理がたたって若くして儚く――とか、そういうのは嫌だ……から――って、あれ? なんか涙が。


「ルカちゃん……! そこまで俺のこと心配してくれて……(パァアア…)。分かった! 分ったよ、ルカちゃん! 何か、最近やたら上司から面倒な仕事押し付けられて仮眠室に泊まることが増えていたけれど、もっと厳しく後輩を育てて、仕事の効率を上げるように頑張るよ!!」

「待って、鈴木さん! 後輩って俺の事ですか!? 今ゲームのイベント中だから、残業とかマジで困……」

「お兄ちゃん頑張って」

「ありがとうルカちゃん! 兄として頑張るよ!!」

「ルカの兄は俺ですが!??」



 良かった、とりあえず鈴木さんの説得には成功したようだ。


 兄がどうのこうの、王子とは別方向で妙な言い合いをしているお兄ちゃん達(自称含む)を見ながら考える。


 うちのお兄ちゃんが社会人としていい加減すぎるのかもしれないけれど、鈴木さんの無茶な働き方を見ていると何か不安になるんだよなあ。……今日なんて涙まで出ちゃったし。

 急な来客に加え、王子まで来てバタバタしていたせいで、心が弱っていたのかな?
 ……まあ、私もこれで意外と繊細ですからね。


 さあ、もう遅いのでくだらない掛け合いをしていないでサッサと寝ますよ。早寝早起きは最強の壁ドン対策ですからね!


 そうやって促せば二人とも大人しく寝袋に入ってくれた。
 なんか、狭い部屋にでかい寝袋が二つも転がっている様子が面白い。


 あんなに濃いコーヒーをがぶ飲みしていたのにもかかわらず、誰よりも先に眠りについたお兄ちゃん。まったく、図太いにもほどがある。

 何やら落ち着かない様子でゴロゴロと寝返りを打っていた繊細な鈴木さんが可哀そうだ。まあ、心なしか顔が幸せそうにニヤニヤしていましたが。


 ――私? 私は気付いた時にはグッスリですが何か。

 毎日誰かしら部屋に召喚されて来る生活のせいで、人が居る状態で眠るのは日常茶飯事ですからね。慣れですよ、慣れ。


 ……別に私が人一倍図太いわけじゃ――ないよね??





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