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7 番ではない女の話2(リュシー視点)

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「ねえ、リュシー。こうなったら二人で賭けをしない?」

「賭け?」

「ええ。このままではいつドナーが見つかるか分からないでしょう? でも、私たちは同じ魔力の型を持っている。だから二人のうちで先に死んだ方が、残った方に必要な物を提供するの。私が先に死んだらリュシーには私の目をあげる」

「駄目よ、そんなの。だいたい不公平だわ。貴女は心臓、私は目。……考えたくないけれど、その条件だと心臓に問題を抱えている貴女が圧倒的に不利じゃない。私は目に問題を抱えているけれど、体は健康なんだから。私に有利すぎるわ」

「馬鹿ね。本当にリュシーは優しいんだから。でも、大丈夫。そう言うと思って考えてあるの。私が不利な分として、+αで条件を付けるから」

「条件?」

「ええ。もし私が死んだらさっきも言った通り、リュシーには私の目をあげるわ。その代わり、それでリュシーの目が見えるようになったら私の代わりに私の番を見てきてほしいの」

「私が、貴女の番を? でも分かるかしら?」

「番を見つけたら、心臓がドキドキして目がウルウルして分かるのですって。だから、きっと大丈夫よ。それに、見つからなかったらそれはそれでいいの。そうね、ずっとリュシーの人生を縛る訳にもいかないし、キッチリと期限を決めましょうか」

「期限? どれくらい?」

「『49日』よ。ねえ、リュシーは『番を見つけられなかった獣人の救済措置』を知っている?」

「ええ、もちろんよ。たしか……」



 獣人にとってそれは有名な話だ。

 獣人にとって一番の幸福は運命の番と出会うこと。
 そして、一番の不幸は運命の番と出会えぬこと。


 だから番と出会えぬままに亡くなった可哀想な獣人は、転生する際に女神様に一つだけ願いを叶えてもらうことが出来る。

 そして、その権利を得た獣人が望む願いはほぼ一つ。


『今世では出会えなかった番と来世では出会えますように――』

 ――――だ。


「そうね。でも、私、あまり縁がなかった分、来世では絶対に番で失敗をしたくないの。だからもし私が賭けに負けた場合、約束通り目をあげるから、その代わりに信用しているリュシーに私の番を探し出して実際に見てきてほしいのよ。どんな人なのか……いい人なのか、悪い人なのか。私の番には生まれ変わってでも出会う価値があるのか、どうか。そして、リュシーが見た結果を私のお墓に報告してほしいの。人は死んでも49日の間はこの世に留まっていられるのですって。だから、期限は『私が死んでから49日間』」

「でも……それで、もし貴女の番が嫌な人だったらどうするの?」

「そうしたら、私が生まれ変わるときに『番を見つけられなかった獣人の救済措置』を使って『私の番を別の人に変えてください』って女神様にお願いするわ。そのためにリュシーに見てきてもらうのよ。勿論、リュシーが認めるくらいの素敵な人なら通例通りに『今世では出会えなかった番と来世では出会えますように――』ってお願いするつもり。――ね? これなら私にも十分メリットがあるでしょう?」


 勿論、私が賭けに勝ったらリュシーの心臓を貰って、元気に自分で番を探しに行くけどね――と、笑っていた彼女。


 しかし、おそらく彼女には何か予感のような物があったのだと思う。賭けの話をしてすぐに、彼女は発作を起こして旅立ってしまった――。




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