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21 運命の番(リュシー視点)
しおりを挟む「ぁ……っと、いけない、いけない」
ここは貴族の墓が集まった霊園だ。天国の彼女に語り掛けるうちに熱くなり、ついつい声が大きくなってしまった。
軽く周囲を見回したが近くに人影はない。遠くに人間がひと家族いるのみだ。獣人だったら危なかったかもしれないが、人間ならばまず問題ないだろう。……安心して大きく息を吐く。こんなことで出入り禁止にされたら堪らない。
……それもこれもすべてはあのバカ野郎のせいだ。
彼女の番は最悪だった。
朝から晩まで日替わりどころか時間替わりで女をとっかえひっかえ。あまりの酷さから彼女の番にひと言くらい文句を言ってやりたくて、報告を終えた後もつい様子を見に行ってしまった。……それであんなことになるとは思ってもみなかった。
まさか、番の目を持っているくらいで私に告白じみたことを言ってくるなんて。とてもじゃないがあれを彼女に伝えることは出来ない。――伝える気もないが。
――まあ、そこまで心配しなくても、世界で一番あり得ない彼女の番に関しては、数週間前にココへ来たときに、細かぁ~く報告してあるから大丈夫だと思う。
最終的に決めるのは彼女とはいえ……流石にあそこまでのクズっぷりを報告されて、あの番との出会いをわざわざ女神様に求めることはないだろう。
――それよりも。
「あの……ね。さっきは報告内容を思い出してつい取り乱しちゃったけど、今日は貴女に報告したいことがあってきたの。実は――私も番に出会ったのよ」
――本当は。彼女との約束を果たしたらそれで最期にするつもりだった。
でも、前回ココへ来た帰り。彼女に番の人物像を泣きながら報告をした後のこと。
帰り道で――自分の番に声をかけられたのだ。それで、すぐに気が付いた。
「声も体もとても大きくて、優しい人よ。同じ猫獣人だと思ってたんだけど、種類が違うのですって。何だったかしら? まあ、いいわ。手触りが似ているから同じようなものよね」
不思議なことに。彼女の目を持っているせいか、目で見ても自分の番だとすぐには分からなかった。彼女の目が少しずつ私に馴染んできたのか、最近では分かるようになったけど。あのとき『声』をかけられなかったら気が付かずに通り過ぎてしまったかもしれない。
たくさん声をかけられて。それで話すことになって。
自分の番に私のどこが好きなのかを聞いたら、彼は迷わず『目』だと言っていた。だから私達の事情を話したら彼はビックリした顔をして、次からは別の所を言うようになったのだけど。
余計な気を遣わなくていいのに――と思う。
「だってすごいと思わない? なんの打ち合わせもしていないのに、意見が一致したのよ? 世界で一番大好きな貴女の目を好きだと言ってもらえて、私は彼に運命を感じたわ。初めて会ったのに、価値観が同じって奇跡よね。これって、やっぱり番だからなのかしら」
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