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第二章 初級講習

13 朗報! 俺に女友達ができる

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「ええと、ミス学祭の……」

「あ、海藤セツです。友達だからね。カイドーでも、セッちゃんでもいいよ」

「あーうん。えと、カイドーさん。さっきも言ったけど、俺、体験入会で気に入ったからさ、月が替わってすぐにスポーツクラブに入会しちゃったんだよね。そういう訳だから、俺と友達になってもメリットは……」

「そんなことないよ!!」

 力説する、美少女カイドー。

「他にも色々割引制度はあるし、情報交換できるじゃない! それに、プロテインとかサプリの共同購入とか共同購入とか共同購入とか!!」


 なるほど。美少女カイドーの説明によると、どうやらまとめ買いはお安くなるらしい。とは言っても。


「俺、当分何も買う予定ないけど? ただでさえスポーツクラブ入ったばっかで、そんな余裕ないし」

「ああ、それはいいのよ。いつか買うかもしれないでしょ? それに、私が一人でたくさん購入したいとき、名前だけ貸してもらえれば、キャンペーン次第で何かオマケとかつくかもしれないじゃない。あ、勿論その場合、代金は自分で払うわよ? そこは安心して頂戴」

「しっかりしてんな」

「まあね。でも、これだと私にしかメリットないわよね。とはいえ、私がしてあげられることなんて、いざというときの代返くらいしか」

「これからよろしく。心の友よ」


 手を出すと、美少女カイドーは何の迷いもなくギュッと握り返してきた。それだけでかなり彼女への好感度が上がる。

 俺の、まん丸グローブなお手てを嬉々として触ってくるのは姉ちゃんくらいだ。姉ちゃんは何が楽しいのか「相変わらず子供みたいな手~!!」とか言って俺の手をモミモミしてくるのだ。

 何はともあれ。


 朗報! 俺に女友達ができる!! しかも、念願の代返要員確保!!! いえーい♪♪


 ――と、ウキウキしていたら。


「じゃ、フトタ君これからよろしくね!」

「あ。俺、オータです……」


 悲報! 初めての女友達に名前を呼び間違えられる!!


「えっ!? あっ! ごめんなさい。名前分からなくて周りに聞いたらあれは『フトタ』だって言われて」


 更に衝撃事実発覚! 俺は知らないところで見知らぬ誰かに悪意あるあだ名をつけられているようだ!!

 ……しかしまあ、目の前の彼女には悪気はなかったようなので、それは安心した。


「大変! 皆、間違って覚えているんだわ!! 今度ちゃんと訂正しておくから大丈夫よ。あれは、『オータ』君ですよって」


 ああ、いい子ですね。でも、皆は確信犯だと思うよ?
 ただの悪口。俺の外見をからかって、小馬鹿にしているだけ。

 それにしても……悪口って、自覚なくこうして広まっていくこともあるんだなあ。覚えておこう。


 もう少し話していたそうだったが、午後の講義を取っているからと、美少女カイドーは名残惜しそうに食堂を後にした。周囲がチラチラとこちらの様子を窺っているのが分かる。

 ああ。まあ、そら気になるわな。何の接点もなさそうな2人が話していたら。

 片や100キロ超えの存在感デブ。片やミス学祭の大学一の人気者。使用前・使用後の販促チラシくらいでしか隣り合うことはなさそうだ。

 ……って、アレ? そう考えてみたら意外とよく見る組み合わせだし接点は多そうだ。


 ようやくゲットした貴重な友達兼、代返要員。


 とはいえ性別もあるが、それ以上に今の体型差では代返してもらっても一目でバレる。
 実際にお願いするにはもう少し痩せる必要があるだろう。


 今日は午後の講義はない。

 悩んでいたデザートのアイスを諦めて、俺は決意も新たにスポーツクラブへと向かうのだった。





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