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閑話・ジャンクフード1
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「…ジャンクフードが食べたい」
アンバー先生の座学の時間についそんなことを口走ってしまった…
「なんだね?その《ジャンクフード》とやらは?何やら不穏な響きだね?」
カタカタと歯を鳴らしながら振り向いた彼は、空虚な眼窩の奥に瞬く火のような視線で僕を見すえた。
アンバーの姿は異質だ。初めて彼を見た人はもれなく悲鳴を上げて逃げ出すだろう。
服の隙間から覗く顔や腕には肉がない。
痩せてるとかそういう意味ではなく、本当に骨だけなのだ。本当にどうやって動いているのかよく分からないが、彼は骨だけの姿になっても生きていた。
アンバーはこの世界でも異質な《不死者》と呼ばれる存在なのだそうだ。
彼は昔、《大賢者》と呼ばれた《アンバー・ワイズマン》という人間だったが、数奇な運命を経て今の骨の身体になったのだという。
性格はかなり風変わりで、知識欲と探究心が半端ない研究者気質だ。一言で言うと《変人》の部類に入るタイプの人間だろう。いや、骨だった…
でも、変人ということ以外は特に問題はなく、《魔王》と人間から恐れられる存在の割には善人の部類に思える。
ぶっちゃけ、見た目くらいしか《魔王》要素がないので、《勇者》として召喚された僕ものんびり彼の講義に付き合っていることができるのだ。
かくいう僕はこの《魔王様》にこの世界に召喚された《勇者》というポジションらしい。自分で言ってても違和感しかないのだが、実際そうなのだから仕方ない。
どうやらこの世界では150年に一度、世界を安定させる役割の《勇者》が召喚されるらしい。詳しいことは分からないが、彼が人間だった頃に別の《勇者》を召喚した事があるらしく、そのノウハウで僕をこの世界に引っ張り込んだそうだ。はた迷惑な話だ…
「その《ジャンクフード》とは何かね?《フード》というから食べ物とはわかるが、《ジャンク》とはどうにも食べたいと思える響きではないね?
気になって夜も寝れないよ?」
出たよ、不死者ジョーク…君は睡眠とか食事とか必要ない身体じゃん…
ちょっとぼやいただけなんだけどな…まぁ、いいか…
こうなったらアンバーは止まらない。彼は納得するまで知識を欲する《探求モンスター》だ。
仕方なく彼の質問に答えることにした。
「えーと…まぁ、僕の世界ではわりと食べ物って娯楽の一環なんだよ。
だから、本来の食事などの目的から外れた、身体に悪い食事なんかを《ジャンクフード》って呼んでるんだ。」
「ふむ。随分不名誉な名前だね?しかし、身体に悪いものを自発的に欲しがるなんてあまり褒められた食生活ではないね?」
はい、ご尤もです…
「まぁ、嗜好品だからね。煙草とかお酒みたいな感覚に近いんじゃないかな?
《ジャンクフード》の定義は《身体に必要な栄養素がほとんど含まれない、栄養バランスを著しく欠いた食品》ってところだから、塩分や砂糖が大量に入っていたり、油分が多かったりする食品が主になるかな」
「ははぁ、なるほど、理解した。
君の元いた世界は随分恵まれた世界だったのだね。それこそ貴族の生活じゃないか?」
「そうかな?」
「そうさ。この世界じゃ、塩も砂糖も高価なものだし、わざわざ身体を悪くするようなものを好き好んで接種できるほど裕福な人間も少ないよ。
で?その愛しの《ジャンクフード》とは具体的にどういうものかね?」と、《魔王》は新しい知識にご執心だ。
食べれない人に食べ物の話をするのも変な感じだな…
「大体、揚げ物が多いかな?あとは炭水化物系のものが多いよ。パンとか米とか…
とにかく、食べ応えがあるというか、食感とか味とかくせになる感じの物が多い印象かな。
具体的には、芋をたっぷりの油で揚げたものとか、鶏肉を味付けして同じように油で揚げたものとか、甘いパン生地を油で揚げたものとか、パン生地に肉やチーズを乗せてカリッと焼いたものとか…」
あー、話しててお腹空いてきた…
ハンバーガーショップも恋しいけど、ドーナッツとかピザも懐かしいなぁ…
いや、フライドチキンとかも捨てがたいが、コンビニの新商品の棚とかも懐かしくて泣ける…
随分世話になったカップラーメンも随分ご無沙汰だ。
そういえばこの世界に来て、炭酸飲料も飲んだ覚えがない。
あれ?僕ってこんなに身体悪いものばかり接種してたのか?どうりでこっちの世界に来て筋肉増えて身体が引き締まったわけだ…
僕の元の世界での生活を懐かしむ様子を見て、アンバーは表情のない骨だけの頭を傾けて考え込むようなポーズを取った。
彼は骨なのに感情豊かだ。表情こそ読めないが、その分声や身振り手振り、動作で感情を出してくる。そこがまたアンバーの憎めないところでもある。
「うーん…まぁ、客人である君の希望なら叶えてあげたいと思うのだがね…
でも、せっかく手に入れた《勇者》を不健康な食事で損なうのは勿体ないし、悪いと分かってる物を食事として出すのは私としても罪悪感がねぇ…」
「いや、別にずっと食べたいってわけじゃないよ。間食程度の量で満足するからさ」
「君、元の世界でどういう生活をしていたのか本当に心配になるよ…
ちゃんとした食事はしてたのかね?」
なんか親みたいな事言うな、この《魔王》…
本来敵であるはずの《勇者》の健康状態を心配するとは、この《魔王》余裕である。まぁ、そもそも僕では彼に勝てる気すらしないが…
「まぁ、私も生前は煙草を嗜んでいたし、酒も楽しんでいた身なので君に偉そう言える立場ではないのだがね…
まぁ、私も異世界の食事には興味はなくはないが、やはり嗜好品とはいえ身体に良くないものを用意するのは抵抗があるな。それに食べ物は私には体験できないからな…」
あ、多分最後のが一番本音だな…
うーん、異世界の食糧事情でジャンクフードはハードル高いな…
僕も居候だから我儘を通すのも気が引ける。
「まぁ、なんだ。《ジャンクフード》とか言うものは用意できないが、君もこの世界に来たんだからこちらの珍しい料理でも楽しんだらいいじゃないか?
案外、その《ジャンクフード》にまさるとも劣らない物が見つかるかもしれないぞ?」
「そりゃそうだけど…」
「よし、分かった。宿題だな。
嗜好品ならこの国にも部族の数だけ存在する。試しに自分で探してみるといい。元の世界の食べ物と比べてレポートを作って提出したまえ。
それでも納得できないなら、私も君のために《ジャンクフード》とやらを提供しようじゃないか?」
なにそれ?
「え?本当に?」
「不本意だがね。でも私が君をこの世界に呼び出したんだから、その責任も一応感じているよ。
この世界の食べ物だっていいものだ。それでも満足できないなら、その不摂生な食べ物に寄せたものを用意させようじゃないか?」
アンバーは自身の発言に責任を持つタイプの人間だ。
軽々と果たす気のない適当な約束をするような人じゃない。
内心ガッツポーズを取りたくなったが、一拍置いてアンバーの前置きを思い出した。
ん?レポート?提出?宿題って言った?
「…えっと…アンバー…ちなみにどのぐらいのレポートなら受け取ってくれる?」
「そうだな…最低20から30食ぐらいは調べて欲しいな。今まで食べた物は除外してほしい。新たな発見という方が面白いだろう?
ちゃんと自分でも食べて感想をよろしく頼む」
しれっと言ってるけど、それって結構大変じゃ…
おいおい、マジかよ…
ついボソッとこぼした一言で大変なことになった。まさに《口は災いのもと》である。
「まぁ、レポートは言いすぎだが、私は《勇者》である君に私の国を好きになって欲しいのさ。知ることは第一歩だ。その後の発展は君に任せるよ」
「それって、丸投げじゃ…」
「まぁまぁ、いいじゃないか?君らしく自由にやり給え。
それとも事細かに条件を増やしたほうがいいかね?」
「う…それはそれで嫌だ…」
「だろう?だから、君の好きなようにやり給え。
今日はこの辺にしておこう。君の集中力はすでに限界みたいだからね。そろそろ昼食の時間だ。宿題の提出を楽しみにしているよ」
アンバーはそう言って座学の時間を締めくくった。
そのタイミングでちょうどお昼の合図の鐘が鳴った。
「食事ができるということは良い事だね。羨ましい限りだよ」
懐かしむようにしみじみと呟くアンバーは、自分に必要なくなったその生きるための活動を懐かしんでいるように見えた。
✩.*˚
「…というわけなんだよね」
「他人事だな…
陛下との約束をそんなに軽々しく扱うのはどうかと思うぞ」
僕の話を聞いていたルイは呆れたような感想と一緒にため息を漏らした。
アンバーが座学の先生なら、ルイは実習の先生だ。
彼自身戦士であり、この国で唯一軍隊と呼べるアンバーの親衛隊の隊長でもある。
本来なら戦って攻略すべき相手だが、僕は先生としても友人としても彼のことが気に入っていた。
真面目で信頼できる人柄だし、何より面倒見が良い。
「ルイの部族の珍しい食べ物って何があるの?」
「私は参考ならんぞ。リュヴァン族は食にはこだわらないからな」と、彼は僕の質問を一蹴した。
まぁ、その見た目だから分かるけどさ…
そう思いながらルイの顔を盗み見る。
屈強な男の人の体の上に乗った狼の頭…
腰の辺りには人間が進化の過程で無駄と省いた存在が残っていて、時折生き物のように動いていた。
そう。彼は人間から狼男と呼ばれる存在だ。
狼男って言うと、どうしても恐ろしげな存在という悪役のイメージがあるが、彼にはそのイメージは当てはまらない。
口からはみ出ただらりと垂れた舌は犬っぽくて愛嬌がある。よく動く耳や尾は表情からは読み取れない感情を教えてくれる。
口から覗く牙は狼のそれだし、身体は大きくて筋肉を隠すようにみっしりと生えた毛は人間とはかけ離れているが、そんなの僕らの友情には関係のない話だ。
そんなことより、今は食文化の情報収集中である…
「リュヴァン族の食事ってだいぶシンプルだもんね。大体、シンプルな肉食べてる感じ」
「まぁ、間違いではないがな…肉は新しいなら生でも食べれるし、毒性のある植物以外は食べられる。ほぼお前の食事と変わらないが、生の玉ねぎやニンニクは好まないな…香辛料も苦手だ」
「そうなの?」
「私は葉物の野菜は好んで食べるぞ。食感が好きだ」と、彼は僕の知らない情報をサービスしてくれた。
あぁ…そういえば野菜好きな犬とかいるもんな…
まぁ、嗜好なんて人それぞれだもんな…
「ヴォイテクは何でも食べるが、彼は嗜好品が好きだな。私に相談するより、ヴォイテクに話を訊いたほうがいいんじゃないか?」
「そうなの?熊って蜂蜜好きなイメージしか無い」
ヴォイテクはフィエン族の獣人で、見た目はそのまんま熊である。見た目はマスコットみたいだが、ルイが一番信頼を置いている部下だ。見た目からは分からないが、かなりの高齢らしく、親衛隊の中では一番の古参らしい。
「蜂蜜か…確かに甘い物は好きだったはずだな。他にも麦酒や臭いの強いものも好きだったはずだ」
「それなら彼にも後で話し聞こうかな」
ルイのアドバイスに相槌を打っていると、少し離れたところからこちらに歩いてくる友人に気づいた。
「二人で何の話ですか?」と気さくに声をかけてきたのは、これまたルイと同じく狼男のシャルルだ。彼はルイの従兄弟だそうで、ルイと同じくリュヴァン族の戦士だが、ルイに比べると少しシャープな印象で、毛並みも少し違う。
蒼い毛並みはルイのものより少し長く、巻いていて優雅な印象だ。
彼は何か口に入れているのか、口をもぐもぐさせている。
「陛下からの宿題だと…」とルイが答えるとシャルルは「なるほど」と理解したような返事をして頷いた。
彼は《宿題》には興味無いようだ。でも僕には彼の口の中に興味がある。
「ねぇ、何食べてるの?」と《宿題》のネタになりそうな気がしてシャルルに訊ねた。僕の質問に、彼は意外な食べ物の名前を口にした。
「歯がむず痒いので《ガム》を食べてるんです。行儀悪くてすみませんね」
「え?《ガム》?」確かに、そう言われればそんな感じの動作をしている。
僕が《ガム》という単語に反応したのが意外だったのか、キョトンとした様子でシャルルがルイを見た。
「人間も《ガム》を食べるんですか?」
「無理だろ?あんな貧相な顎で…」と、ルイには何やら馬鹿にされてたが、《ガム》ってあの《ガム》だろ?
「僕の世界にも《ガム》はあるよ。嗜好品だ。暇つぶしみたいに食べたり、歯をキレイにする目的なんかもあるよ」
「そうなんですか?そう聞くと同じもののようですね?人も食べるなんて何か意外ですね?」
そんなに不思議がるようなことかな?
そう思っていると、シャルルは巾着から何か取り出して、二つに折るとルイと僕に分けてくれた。
礼を言って受け取ったが、受け取った物を見て目が点になった。
「…何、これ?」
受け取った物をいろんな角度で見てみるが、僕の知っている《ガム》じゃない。いや…確かに《ガム》なのかも…?
白い少しねじれた板状の固形物。臭いは少し生臭い干し肉みたいな臭いがする…
これってお菓子売り場のやつじゃなくてペットショップのほうの…
ルイに視線を向けると、彼は既にもぐもぐしていた。
やっぱりここは異世界だ…
「《ガム》ですよ。人間も干した牛の筋を食べるなんて意外でした。これは結構手間をかけて作られているものですので歯ごたえは抜群ですよ」
「うむ。なかなか良いものだな。味も良い。しっかり肉の味がするな」
《ガム》を食べるルイはご満悦のようだ。
いや…せっかくもらったし…もしかしたら実はものすごく美味しいのかも。ビーフジャーキみたいな?
自己暗示をかけながら《ガム》の一部を折って小さい方を口に運んだ。
…うん…何か思ってた通り過ぎて笑える…
かくして僕のレポート第一号は《リュヴァン族のガム》となりました…
✩.*˚
結局|《ガム》は途中でギブアップした…
そうだよなぁ…そんな訳無いんよ…異世界ルールの事忘れてたわ…
口の中の生臭さを消すために紅茶をもらったが、なかなか《ガム》の主張が強い。
「もう一杯いりますか?」と僕の世話をしてくれるメイドのベティが紅茶を勧めてくれた。
彼女は僕に紅茶を勧めながら口をもぐもぐさせている。
彼女は人間じゃない。豹族の母親と人間の間に生まれた魔族と人間のハーフだ。元々、希少種として人間のブローカーに捕まっていた所をアンバーが保護したらしい。
見た目は人間に近いが、彼女の身体能力は母方の血を色濃く受け継いでいた。
僕が持ち帰った《ガム》に興味を持っていたので、彼女にあげたら喜んでいた。
あの《ガム》を涼しい顔で食べるとか顎強っ!
「それ、顎大丈夫?」と、恐る恐る訊ねると、彼女は美味しいおやつを食べた時の女子みたいに目を輝かせて答えた。
「噛めば噛むほど味がします。とっても良いものです」
お気に召したようで何よりです…
ぶっちゃけ、捨てずに済んだので僕としては助かった。せっかくもらったのに、食べれないとか申し訳ない。せめてベティが喜んでくれたならそれで多少は救われる。
「それにしても、陛下も随分不思議な宿題を出されましたね。まだだいぶ掛かりそうですが、私もお手伝いしたほうがよろしいですか?」
「うん。何か思いつく物があったら教えてほしいかな。ベティの好物とかでも良いけど」
僕には土地勘が無いから、他の人に教えてもらうのが早い。そういう意味ではコミュニケーションを計る目的などもあるのだろうか?
とりあえず、アンバーの課題達成にはまだまだほど遠い。
なにか無いかと一緒に考えてくれていたベティが、急に思い出したように手を叩いた。
「あ!良いものあります!卵なんてどうですか?」
「卵?それって珍しいの?」割と毎日食べてる気がするんだけどな…
僕の考えを他所に、彼女は卵について語った。
何も思わずに食べていたけど、基本的にこの世界では卵は高級品らしい。
日本人の僕からすると安くて使いやすいものの代名詞なんだけどなぁ…
「いつも食べてるのは飼育可能な鶏の卵ですが、私のおすすめの珍しい卵は《カラカラ》という大型のトカゲの卵です。
岩場に住むトカゲで、産んだ卵に鉱石を貼り付けて隠します。滋養効果が高くてすごく元気になりますよ。黄身の色が深い緑色で《エメラルド・エッグ》なんて呼ばれるくらい綺麗なんです」
「へぇ!それは見てみたいな!」
トカゲの卵っていうのは何か気になるけど、卵なら《ガム》よりは食べやすいだろう。
「分かりました!陛下から外出の許可を頂戴してきます!」
元気にそう言い残して、ベティは足早に部屋の出入口になっている綴織に姿を消した。
すごく張り切ってるな。僕のためにあんなに頑張ってくれるなんてありがたい。
「…よろしいんですか?」と、それまで部屋の隅で静かにしていたアレンが呟いた。
彼は魔族では無い。ここでは珍しいが僕と同じ人間だ。
彼はオークランド王国という別の国から来た魔導師だ。元々は《勇者》である僕を人の国に取り返すために必要になるアーケイイックの地図を作ることだった。
任務に失敗して魔族に捕まってしまったが、アンバーの計らいで、僕の家庭教師みたいなポジションに収まっていた。
そして、ずっと喋らないけど、この部屋には実はもう1人人間がいる。
「外出の許可って言ってたけど、出かけるならアドニスも一緒に来る?」
「私はミツル様の護衛ですのでお供いたします」
壁を背に立っていた青年が僕の問いかけに静かにそう答えた。
彼はアレンと同じくオークランド王国の貴族の家出身の騎士だった人だ。この世界では《祝福》と呼ばれる特殊能力を持った人で、人の国では《英雄》と呼ばれる存在だったらしい。
《勇者》が魔王に召喚されたと知って奪還に来たが、僕はオークランド王国の人間至上主義みたいな考え方に納得できなかった。
その結果喧嘩みたいになってしまいギリギリ僕が勝った感じだ。今思えば良く勝てたな、という感じだが、その時に僕が彼の《祝福》を奪ってしまったから、今は剣の腕の立つただの人間だ。
僕と関わってしまったので彼らは帰る場所を失ってしまったが、オークランド王国という国の闇を知ってしまった僕はそれで良かったと思っている。
「二人は《カラカラ》って知ってる?」と訊ねたが、オークランド人の二人には聞き馴染の無いものだったようだ。
「お話は聞いてましたが、《カラカラ》というトカゲは知りませんね」と、答えるアレンにアドニスも頷いた。
珍しいトカゲなんだろうか?
少し嫌な予感がしてくる…ここは僕の知ってる世界の常識が全く通じない異世界だ…
「まさか…ドラゴンみたいなのとか?」
「可能性は無くは無いと思いますよ。アーケイイックは未開の地で、珍しい生き物の宝庫ですから」
嫌な可能性を否定せずにアレンは能天気に笑ってみせた。
やっぱりここは異世界だ…
軽はずみに決めた事を後悔したが、アンバーのところに行っていたベティが戻ると同時に「許可いただきました!」と報告したことで逃げ場を失った…
✩.*˚
罪悪感…すっごい罪悪感…
「…ベティ…まさか、このトカゲが《カラカラ》?」
思ってたより小さい。岩の色に紛れるような茶色と灰色の迷彩柄のようなトカゲは尻尾を入れても30センチもない大きさだ。
鋭い爪や牙があるわけでも無く、動きは鈍い。それというのも身体には鱗が伸びたものと思われるトゲが無数に生えているから、その弊害で動きづらいのだろう。
これの卵って、もしかしてウズラの卵みたいなのじゃ…
「はい。それは正確には《カラカラ》のオスです。メスは貴重なので殺さないでくださいね」
「何でメスが少ないの?」という僕の質問に答えたのは、何故か一緒に着いてきていたアンバーだ。
「《カラカラ》は女王以外はすべてオスなんだ。稀に同じ群れでメスが生まれることもあるがそれは時期女王候補だ。
基本的に女王がいる限り他のメスは繁殖能力を持たない。女王がそういうフェロモンを出していると考えられる。
今回は特別に捕獲を許可するが、女王は必ず生け捕りにしてくれ。
ちなみに女王は鉱石を食べる習性があるから、その食べた餌の鉱石によって見た目が異なる。神銀を取り込んだ個体は《ミスリルリザード》などと呼ばれ、神秘的な銀色の鱗はそれは美しい。自然の作り出す芸術品だな」
「ふーん…まぁ、明らかにオスとは違う見た目なのね?」
「うむ。それだけじゃない《カラカラ》の女王は食べるもので見た目が異なるから、鉱脈を探す時の目安になる。
獣人の一部では食用とされるが、ドワーフ族にとっては無くてはならない存在だ。今回は卵を採取するという目的だからできるだけ傷つけずに捕獲してほしい。
一般的に、卵を産む周期は個体差があるが、だいたい一月に一回、三から十くらいを産むという話で…」
アンバーはその他ずっと《カラカラ》について解説をしていたが、欲しい情報はあらかた理解した。
先行するベティに着いて行く形で洞窟を進んでいると、明かりの届かない洞窟の奥から何やらゴソゴソと物音が聞こえてきた。
止まって音を確認するが、どうやら物音はこちらに近づいてきている様子だ。
「ど、どうしよう…明かり消して隠れる?」
ビビりながらメンバーに確認したが、ベティに「無駄です」と僕の考えは一蹴された。
「相手は暗闇に慣れてる生き物ですから、見えなくて臭いなどを頼りに襲ってきます」
そう言いながら彼女は既に戦闘態勢で拳を握っていた。ベティの戦闘用の手甲に刻まれた魔法陣からは薄っすらと光を滲んでいる。
今までずっと会話に参加せずにいたアドニスも剣を手に僕の前にでた。
その間にも物音は近づいてくる。
小さい小石を蹴飛ばすような音やザッザッという足音に、地面を引きずるような重々しい音が重なる。
音の主はついに明かりの届く範囲に姿を見せたが、その姿を見て僕は言葉を失った…
「おぉ、立派な《カラカラ》のメスだな」と言うアンバーの呑気な台詞に耳を疑う。
これが?!オスと全然違うんですけど!!
オス30センチくらいしか無かったじゃん!
ちゃんと測ってないけど、メスは大きめのワニぐらいの大きさだ。全長7メートルほどの身体は黄色くキラキラと輝いている。
「…あ、アンバー…これは何食べたらこうなるのさ…」
「ふぅむ…白金かな?でもこれはまた違うような…」
アンバーの分析が終わる前にベティが《カラカラ》に仕掛けた。
飛びかかろうとした彼女を牽制するように、《カラカラ》の女王がどぎついピンク色の口をガバっと開いた。
「カカッ!」と笑うような鳴き声の後に女王の口から何かが飛び出た。
「ベティ!」慌てて彼女に声をかけたが、彼女は既の所で《カラカラ》の攻撃を躱していた。
女王の意外な攻撃に、アンバーは「なるほど」と一人で頷いていた。
「魔石を食った個体のようだな。と、いうことはこの鉱脈は魔石の鉱脈か…」
「い?!ま、魔石とか食べるの?!」
この世界では《魔石》というものが存在する。僕も詳しくは知らないが、この世界では一部の例外を除いて、魔法を使うために必要なものだ。
簡単にいうと魔力が電流として、魔法の発動が豆電球が光る事とすると、その電流を流す回路となるのが魔石の役割だ。
「魔石とはいえ、鉱石だからな。ありえないことはないが、珍しい個体なのは確かだ」と呑気に分析しながらアンバーはベティに向かって声をかけた。
「一人で大丈夫かね?」と言うアンバーの問いかけに、ベティは余裕そうに返事を返した。
「剛山羊より楽な獲物です。ミツル様をお願いします」
「承知した」
《カラカラ》の女王をベティに任せて、アンバーは何やら呟くと彼を中心に地面に魔法陣が広がった。うっすらとした膜のようなドームが頭上に完成する。
「この中なら安全だ」とアンバーが言っていることから、この魔法陣は結界のような役割を持っているようだ。
トカゲと戦っているはずのベティに視線を向けると、彼女は持ち前に身体能力でトカゲの口から放たれるビームのようなものを躱していた。
彼女はトカゲの攻撃を躱しながら接近すると手に持っていた何かを投げた。
「ガー!」と怒り狂ったように《カラカラ》の女王が吠えた。
よく見ると、女王は後ろ足を軸に動けなくなっていた。ベティが投げたのはこれだろうか?
「魔獣の捕獲用に用意した固定剤だ」
「固定剤?」
「うむ。粘度のある植物のエキスに麻痺効果を付与した魔法道具だ。元々はエルフたちが貴重な生き物を傷つけずに捕らえる目的で使用する道具だが、これは私が改良を加えた最新版だ」
自作の魔法道具を自慢するアンバーは得意げだ。
そんな話をしている間に、ベティは《カラカラ》の女王を戦闘不能にして戻ってきた。
さすが仕事が早い。この位はベティにとって朝飯前といったところみたいだ。
「お疲れ様。卵は採れそうかね?」
アンバーの問いかけにベティは大きく頷いた。
「地上を目指していたのでおそらく産卵前と見受けられます」
「ふむ。なら卵を産むまで少し待とうか?」と言って、アンバーは心做しかいつもより眼窩の奥で光る視線を輝かせながら《カラカラ》に歩み寄った。
「ふふ。魔石を食べた個体とは興味深いね。持ち帰りたいくらいだ」
そう言いながら女王を観察するアンバーは楽しそうだ。
メジャーのようなものを取り出して大きさを計ったり、何かをメモしたりと珍しい《カラカラ》の女王を堪能している姿はちょっと異様だ。
終いには洞窟の奥に入って行って女王のものと思われる糞を拾ってきた…しかも異様にテンション高い…
「これはすごいぞ!小さいが希少な《竜結晶》だ!しかも魔石を凝縮した滅多にお目にかかれない珍品だ!」
うんこから出てきた物を喜ぶとかマジか…正直、引くわ…
でも、世界一高いコーヒー豆と言われる《コピ・ルアック》もジャコウネコの糞から採取するからそういうものなのかも、と無理やり自分を納得させた。
それからそのまま半日くらいテンションの高い魔王に連れられて洞窟探検して、魔石の鉱脈まで発見できた。
クタクタになって戻ってきた頃には《カラカラ》の女王は卵を産んでいた。
鶏の卵より少し大きいくらいの大きさだが、爬虫類の卵らしく、薬のカプセルのような形状で少し細長い。
とりあえずミッション成功だ。
《カラカラ》を捕獲した第一功労者は垂涎ものの顔で卵を眺めていた。
とりあえず女王の産んだ七個のうち二個の卵を頂戴して女王を逃がした。
残された卵はすぐにオスが集まってきて、咥えてどこかに持って行った。そういう習性らしい。
僕らも城に帰って、ワクワクしながら早速卵を割ってみた。
「…あれ?」
出てきた卵を見て首を傾げた。
ベティの話では深い緑のはずの卵は普通の色をしていた。むしろちょっと赤みが強い印象で、緑要素はどこにも無かった。
「変ですね?《エメラルド・エッグ》じゃないですね?」とベティも首を傾げていた。
持ち帰ったもうひとつの卵も同じ色だ。
緑の卵が見れると思っていただけになんだか拍子抜けしてしまった。
「特殊な個体だったから、卵の黄身の色が変わったんじゃないか?こういうこともあるんだな…」というアンバーの話だが、これはこれでなんか釈然としない…
結局卵は僕の晩御飯になった。
確かにまったりとして甘くコクがあったが、まぁ、卵だ…
こういうところは常識通りなんだなぁ、などと少しだけガッカリして、《カラカラの女王の卵》のレポートを書くことになった。
アンバー先生の座学の時間についそんなことを口走ってしまった…
「なんだね?その《ジャンクフード》とやらは?何やら不穏な響きだね?」
カタカタと歯を鳴らしながら振り向いた彼は、空虚な眼窩の奥に瞬く火のような視線で僕を見すえた。
アンバーの姿は異質だ。初めて彼を見た人はもれなく悲鳴を上げて逃げ出すだろう。
服の隙間から覗く顔や腕には肉がない。
痩せてるとかそういう意味ではなく、本当に骨だけなのだ。本当にどうやって動いているのかよく分からないが、彼は骨だけの姿になっても生きていた。
アンバーはこの世界でも異質な《不死者》と呼ばれる存在なのだそうだ。
彼は昔、《大賢者》と呼ばれた《アンバー・ワイズマン》という人間だったが、数奇な運命を経て今の骨の身体になったのだという。
性格はかなり風変わりで、知識欲と探究心が半端ない研究者気質だ。一言で言うと《変人》の部類に入るタイプの人間だろう。いや、骨だった…
でも、変人ということ以外は特に問題はなく、《魔王》と人間から恐れられる存在の割には善人の部類に思える。
ぶっちゃけ、見た目くらいしか《魔王》要素がないので、《勇者》として召喚された僕ものんびり彼の講義に付き合っていることができるのだ。
かくいう僕はこの《魔王様》にこの世界に召喚された《勇者》というポジションらしい。自分で言ってても違和感しかないのだが、実際そうなのだから仕方ない。
どうやらこの世界では150年に一度、世界を安定させる役割の《勇者》が召喚されるらしい。詳しいことは分からないが、彼が人間だった頃に別の《勇者》を召喚した事があるらしく、そのノウハウで僕をこの世界に引っ張り込んだそうだ。はた迷惑な話だ…
「その《ジャンクフード》とは何かね?《フード》というから食べ物とはわかるが、《ジャンク》とはどうにも食べたいと思える響きではないね?
気になって夜も寝れないよ?」
出たよ、不死者ジョーク…君は睡眠とか食事とか必要ない身体じゃん…
ちょっとぼやいただけなんだけどな…まぁ、いいか…
こうなったらアンバーは止まらない。彼は納得するまで知識を欲する《探求モンスター》だ。
仕方なく彼の質問に答えることにした。
「えーと…まぁ、僕の世界ではわりと食べ物って娯楽の一環なんだよ。
だから、本来の食事などの目的から外れた、身体に悪い食事なんかを《ジャンクフード》って呼んでるんだ。」
「ふむ。随分不名誉な名前だね?しかし、身体に悪いものを自発的に欲しがるなんてあまり褒められた食生活ではないね?」
はい、ご尤もです…
「まぁ、嗜好品だからね。煙草とかお酒みたいな感覚に近いんじゃないかな?
《ジャンクフード》の定義は《身体に必要な栄養素がほとんど含まれない、栄養バランスを著しく欠いた食品》ってところだから、塩分や砂糖が大量に入っていたり、油分が多かったりする食品が主になるかな」
「ははぁ、なるほど、理解した。
君の元いた世界は随分恵まれた世界だったのだね。それこそ貴族の生活じゃないか?」
「そうかな?」
「そうさ。この世界じゃ、塩も砂糖も高価なものだし、わざわざ身体を悪くするようなものを好き好んで接種できるほど裕福な人間も少ないよ。
で?その愛しの《ジャンクフード》とは具体的にどういうものかね?」と、《魔王》は新しい知識にご執心だ。
食べれない人に食べ物の話をするのも変な感じだな…
「大体、揚げ物が多いかな?あとは炭水化物系のものが多いよ。パンとか米とか…
とにかく、食べ応えがあるというか、食感とか味とかくせになる感じの物が多い印象かな。
具体的には、芋をたっぷりの油で揚げたものとか、鶏肉を味付けして同じように油で揚げたものとか、甘いパン生地を油で揚げたものとか、パン生地に肉やチーズを乗せてカリッと焼いたものとか…」
あー、話しててお腹空いてきた…
ハンバーガーショップも恋しいけど、ドーナッツとかピザも懐かしいなぁ…
いや、フライドチキンとかも捨てがたいが、コンビニの新商品の棚とかも懐かしくて泣ける…
随分世話になったカップラーメンも随分ご無沙汰だ。
そういえばこの世界に来て、炭酸飲料も飲んだ覚えがない。
あれ?僕ってこんなに身体悪いものばかり接種してたのか?どうりでこっちの世界に来て筋肉増えて身体が引き締まったわけだ…
僕の元の世界での生活を懐かしむ様子を見て、アンバーは表情のない骨だけの頭を傾けて考え込むようなポーズを取った。
彼は骨なのに感情豊かだ。表情こそ読めないが、その分声や身振り手振り、動作で感情を出してくる。そこがまたアンバーの憎めないところでもある。
「うーん…まぁ、客人である君の希望なら叶えてあげたいと思うのだがね…
でも、せっかく手に入れた《勇者》を不健康な食事で損なうのは勿体ないし、悪いと分かってる物を食事として出すのは私としても罪悪感がねぇ…」
「いや、別にずっと食べたいってわけじゃないよ。間食程度の量で満足するからさ」
「君、元の世界でどういう生活をしていたのか本当に心配になるよ…
ちゃんとした食事はしてたのかね?」
なんか親みたいな事言うな、この《魔王》…
本来敵であるはずの《勇者》の健康状態を心配するとは、この《魔王》余裕である。まぁ、そもそも僕では彼に勝てる気すらしないが…
「まぁ、私も生前は煙草を嗜んでいたし、酒も楽しんでいた身なので君に偉そう言える立場ではないのだがね…
まぁ、私も異世界の食事には興味はなくはないが、やはり嗜好品とはいえ身体に良くないものを用意するのは抵抗があるな。それに食べ物は私には体験できないからな…」
あ、多分最後のが一番本音だな…
うーん、異世界の食糧事情でジャンクフードはハードル高いな…
僕も居候だから我儘を通すのも気が引ける。
「まぁ、なんだ。《ジャンクフード》とか言うものは用意できないが、君もこの世界に来たんだからこちらの珍しい料理でも楽しんだらいいじゃないか?
案外、その《ジャンクフード》にまさるとも劣らない物が見つかるかもしれないぞ?」
「そりゃそうだけど…」
「よし、分かった。宿題だな。
嗜好品ならこの国にも部族の数だけ存在する。試しに自分で探してみるといい。元の世界の食べ物と比べてレポートを作って提出したまえ。
それでも納得できないなら、私も君のために《ジャンクフード》とやらを提供しようじゃないか?」
なにそれ?
「え?本当に?」
「不本意だがね。でも私が君をこの世界に呼び出したんだから、その責任も一応感じているよ。
この世界の食べ物だっていいものだ。それでも満足できないなら、その不摂生な食べ物に寄せたものを用意させようじゃないか?」
アンバーは自身の発言に責任を持つタイプの人間だ。
軽々と果たす気のない適当な約束をするような人じゃない。
内心ガッツポーズを取りたくなったが、一拍置いてアンバーの前置きを思い出した。
ん?レポート?提出?宿題って言った?
「…えっと…アンバー…ちなみにどのぐらいのレポートなら受け取ってくれる?」
「そうだな…最低20から30食ぐらいは調べて欲しいな。今まで食べた物は除外してほしい。新たな発見という方が面白いだろう?
ちゃんと自分でも食べて感想をよろしく頼む」
しれっと言ってるけど、それって結構大変じゃ…
おいおい、マジかよ…
ついボソッとこぼした一言で大変なことになった。まさに《口は災いのもと》である。
「まぁ、レポートは言いすぎだが、私は《勇者》である君に私の国を好きになって欲しいのさ。知ることは第一歩だ。その後の発展は君に任せるよ」
「それって、丸投げじゃ…」
「まぁまぁ、いいじゃないか?君らしく自由にやり給え。
それとも事細かに条件を増やしたほうがいいかね?」
「う…それはそれで嫌だ…」
「だろう?だから、君の好きなようにやり給え。
今日はこの辺にしておこう。君の集中力はすでに限界みたいだからね。そろそろ昼食の時間だ。宿題の提出を楽しみにしているよ」
アンバーはそう言って座学の時間を締めくくった。
そのタイミングでちょうどお昼の合図の鐘が鳴った。
「食事ができるということは良い事だね。羨ましい限りだよ」
懐かしむようにしみじみと呟くアンバーは、自分に必要なくなったその生きるための活動を懐かしんでいるように見えた。
✩.*˚
「…というわけなんだよね」
「他人事だな…
陛下との約束をそんなに軽々しく扱うのはどうかと思うぞ」
僕の話を聞いていたルイは呆れたような感想と一緒にため息を漏らした。
アンバーが座学の先生なら、ルイは実習の先生だ。
彼自身戦士であり、この国で唯一軍隊と呼べるアンバーの親衛隊の隊長でもある。
本来なら戦って攻略すべき相手だが、僕は先生としても友人としても彼のことが気に入っていた。
真面目で信頼できる人柄だし、何より面倒見が良い。
「ルイの部族の珍しい食べ物って何があるの?」
「私は参考ならんぞ。リュヴァン族は食にはこだわらないからな」と、彼は僕の質問を一蹴した。
まぁ、その見た目だから分かるけどさ…
そう思いながらルイの顔を盗み見る。
屈強な男の人の体の上に乗った狼の頭…
腰の辺りには人間が進化の過程で無駄と省いた存在が残っていて、時折生き物のように動いていた。
そう。彼は人間から狼男と呼ばれる存在だ。
狼男って言うと、どうしても恐ろしげな存在という悪役のイメージがあるが、彼にはそのイメージは当てはまらない。
口からはみ出ただらりと垂れた舌は犬っぽくて愛嬌がある。よく動く耳や尾は表情からは読み取れない感情を教えてくれる。
口から覗く牙は狼のそれだし、身体は大きくて筋肉を隠すようにみっしりと生えた毛は人間とはかけ離れているが、そんなの僕らの友情には関係のない話だ。
そんなことより、今は食文化の情報収集中である…
「リュヴァン族の食事ってだいぶシンプルだもんね。大体、シンプルな肉食べてる感じ」
「まぁ、間違いではないがな…肉は新しいなら生でも食べれるし、毒性のある植物以外は食べられる。ほぼお前の食事と変わらないが、生の玉ねぎやニンニクは好まないな…香辛料も苦手だ」
「そうなの?」
「私は葉物の野菜は好んで食べるぞ。食感が好きだ」と、彼は僕の知らない情報をサービスしてくれた。
あぁ…そういえば野菜好きな犬とかいるもんな…
まぁ、嗜好なんて人それぞれだもんな…
「ヴォイテクは何でも食べるが、彼は嗜好品が好きだな。私に相談するより、ヴォイテクに話を訊いたほうがいいんじゃないか?」
「そうなの?熊って蜂蜜好きなイメージしか無い」
ヴォイテクはフィエン族の獣人で、見た目はそのまんま熊である。見た目はマスコットみたいだが、ルイが一番信頼を置いている部下だ。見た目からは分からないが、かなりの高齢らしく、親衛隊の中では一番の古参らしい。
「蜂蜜か…確かに甘い物は好きだったはずだな。他にも麦酒や臭いの強いものも好きだったはずだ」
「それなら彼にも後で話し聞こうかな」
ルイのアドバイスに相槌を打っていると、少し離れたところからこちらに歩いてくる友人に気づいた。
「二人で何の話ですか?」と気さくに声をかけてきたのは、これまたルイと同じく狼男のシャルルだ。彼はルイの従兄弟だそうで、ルイと同じくリュヴァン族の戦士だが、ルイに比べると少しシャープな印象で、毛並みも少し違う。
蒼い毛並みはルイのものより少し長く、巻いていて優雅な印象だ。
彼は何か口に入れているのか、口をもぐもぐさせている。
「陛下からの宿題だと…」とルイが答えるとシャルルは「なるほど」と理解したような返事をして頷いた。
彼は《宿題》には興味無いようだ。でも僕には彼の口の中に興味がある。
「ねぇ、何食べてるの?」と《宿題》のネタになりそうな気がしてシャルルに訊ねた。僕の質問に、彼は意外な食べ物の名前を口にした。
「歯がむず痒いので《ガム》を食べてるんです。行儀悪くてすみませんね」
「え?《ガム》?」確かに、そう言われればそんな感じの動作をしている。
僕が《ガム》という単語に反応したのが意外だったのか、キョトンとした様子でシャルルがルイを見た。
「人間も《ガム》を食べるんですか?」
「無理だろ?あんな貧相な顎で…」と、ルイには何やら馬鹿にされてたが、《ガム》ってあの《ガム》だろ?
「僕の世界にも《ガム》はあるよ。嗜好品だ。暇つぶしみたいに食べたり、歯をキレイにする目的なんかもあるよ」
「そうなんですか?そう聞くと同じもののようですね?人も食べるなんて何か意外ですね?」
そんなに不思議がるようなことかな?
そう思っていると、シャルルは巾着から何か取り出して、二つに折るとルイと僕に分けてくれた。
礼を言って受け取ったが、受け取った物を見て目が点になった。
「…何、これ?」
受け取った物をいろんな角度で見てみるが、僕の知っている《ガム》じゃない。いや…確かに《ガム》なのかも…?
白い少しねじれた板状の固形物。臭いは少し生臭い干し肉みたいな臭いがする…
これってお菓子売り場のやつじゃなくてペットショップのほうの…
ルイに視線を向けると、彼は既にもぐもぐしていた。
やっぱりここは異世界だ…
「《ガム》ですよ。人間も干した牛の筋を食べるなんて意外でした。これは結構手間をかけて作られているものですので歯ごたえは抜群ですよ」
「うむ。なかなか良いものだな。味も良い。しっかり肉の味がするな」
《ガム》を食べるルイはご満悦のようだ。
いや…せっかくもらったし…もしかしたら実はものすごく美味しいのかも。ビーフジャーキみたいな?
自己暗示をかけながら《ガム》の一部を折って小さい方を口に運んだ。
…うん…何か思ってた通り過ぎて笑える…
かくして僕のレポート第一号は《リュヴァン族のガム》となりました…
✩.*˚
結局|《ガム》は途中でギブアップした…
そうだよなぁ…そんな訳無いんよ…異世界ルールの事忘れてたわ…
口の中の生臭さを消すために紅茶をもらったが、なかなか《ガム》の主張が強い。
「もう一杯いりますか?」と僕の世話をしてくれるメイドのベティが紅茶を勧めてくれた。
彼女は僕に紅茶を勧めながら口をもぐもぐさせている。
彼女は人間じゃない。豹族の母親と人間の間に生まれた魔族と人間のハーフだ。元々、希少種として人間のブローカーに捕まっていた所をアンバーが保護したらしい。
見た目は人間に近いが、彼女の身体能力は母方の血を色濃く受け継いでいた。
僕が持ち帰った《ガム》に興味を持っていたので、彼女にあげたら喜んでいた。
あの《ガム》を涼しい顔で食べるとか顎強っ!
「それ、顎大丈夫?」と、恐る恐る訊ねると、彼女は美味しいおやつを食べた時の女子みたいに目を輝かせて答えた。
「噛めば噛むほど味がします。とっても良いものです」
お気に召したようで何よりです…
ぶっちゃけ、捨てずに済んだので僕としては助かった。せっかくもらったのに、食べれないとか申し訳ない。せめてベティが喜んでくれたならそれで多少は救われる。
「それにしても、陛下も随分不思議な宿題を出されましたね。まだだいぶ掛かりそうですが、私もお手伝いしたほうがよろしいですか?」
「うん。何か思いつく物があったら教えてほしいかな。ベティの好物とかでも良いけど」
僕には土地勘が無いから、他の人に教えてもらうのが早い。そういう意味ではコミュニケーションを計る目的などもあるのだろうか?
とりあえず、アンバーの課題達成にはまだまだほど遠い。
なにか無いかと一緒に考えてくれていたベティが、急に思い出したように手を叩いた。
「あ!良いものあります!卵なんてどうですか?」
「卵?それって珍しいの?」割と毎日食べてる気がするんだけどな…
僕の考えを他所に、彼女は卵について語った。
何も思わずに食べていたけど、基本的にこの世界では卵は高級品らしい。
日本人の僕からすると安くて使いやすいものの代名詞なんだけどなぁ…
「いつも食べてるのは飼育可能な鶏の卵ですが、私のおすすめの珍しい卵は《カラカラ》という大型のトカゲの卵です。
岩場に住むトカゲで、産んだ卵に鉱石を貼り付けて隠します。滋養効果が高くてすごく元気になりますよ。黄身の色が深い緑色で《エメラルド・エッグ》なんて呼ばれるくらい綺麗なんです」
「へぇ!それは見てみたいな!」
トカゲの卵っていうのは何か気になるけど、卵なら《ガム》よりは食べやすいだろう。
「分かりました!陛下から外出の許可を頂戴してきます!」
元気にそう言い残して、ベティは足早に部屋の出入口になっている綴織に姿を消した。
すごく張り切ってるな。僕のためにあんなに頑張ってくれるなんてありがたい。
「…よろしいんですか?」と、それまで部屋の隅で静かにしていたアレンが呟いた。
彼は魔族では無い。ここでは珍しいが僕と同じ人間だ。
彼はオークランド王国という別の国から来た魔導師だ。元々は《勇者》である僕を人の国に取り返すために必要になるアーケイイックの地図を作ることだった。
任務に失敗して魔族に捕まってしまったが、アンバーの計らいで、僕の家庭教師みたいなポジションに収まっていた。
そして、ずっと喋らないけど、この部屋には実はもう1人人間がいる。
「外出の許可って言ってたけど、出かけるならアドニスも一緒に来る?」
「私はミツル様の護衛ですのでお供いたします」
壁を背に立っていた青年が僕の問いかけに静かにそう答えた。
彼はアレンと同じくオークランド王国の貴族の家出身の騎士だった人だ。この世界では《祝福》と呼ばれる特殊能力を持った人で、人の国では《英雄》と呼ばれる存在だったらしい。
《勇者》が魔王に召喚されたと知って奪還に来たが、僕はオークランド王国の人間至上主義みたいな考え方に納得できなかった。
その結果喧嘩みたいになってしまいギリギリ僕が勝った感じだ。今思えば良く勝てたな、という感じだが、その時に僕が彼の《祝福》を奪ってしまったから、今は剣の腕の立つただの人間だ。
僕と関わってしまったので彼らは帰る場所を失ってしまったが、オークランド王国という国の闇を知ってしまった僕はそれで良かったと思っている。
「二人は《カラカラ》って知ってる?」と訊ねたが、オークランド人の二人には聞き馴染の無いものだったようだ。
「お話は聞いてましたが、《カラカラ》というトカゲは知りませんね」と、答えるアレンにアドニスも頷いた。
珍しいトカゲなんだろうか?
少し嫌な予感がしてくる…ここは僕の知ってる世界の常識が全く通じない異世界だ…
「まさか…ドラゴンみたいなのとか?」
「可能性は無くは無いと思いますよ。アーケイイックは未開の地で、珍しい生き物の宝庫ですから」
嫌な可能性を否定せずにアレンは能天気に笑ってみせた。
やっぱりここは異世界だ…
軽はずみに決めた事を後悔したが、アンバーのところに行っていたベティが戻ると同時に「許可いただきました!」と報告したことで逃げ場を失った…
✩.*˚
罪悪感…すっごい罪悪感…
「…ベティ…まさか、このトカゲが《カラカラ》?」
思ってたより小さい。岩の色に紛れるような茶色と灰色の迷彩柄のようなトカゲは尻尾を入れても30センチもない大きさだ。
鋭い爪や牙があるわけでも無く、動きは鈍い。それというのも身体には鱗が伸びたものと思われるトゲが無数に生えているから、その弊害で動きづらいのだろう。
これの卵って、もしかしてウズラの卵みたいなのじゃ…
「はい。それは正確には《カラカラ》のオスです。メスは貴重なので殺さないでくださいね」
「何でメスが少ないの?」という僕の質問に答えたのは、何故か一緒に着いてきていたアンバーだ。
「《カラカラ》は女王以外はすべてオスなんだ。稀に同じ群れでメスが生まれることもあるがそれは時期女王候補だ。
基本的に女王がいる限り他のメスは繁殖能力を持たない。女王がそういうフェロモンを出していると考えられる。
今回は特別に捕獲を許可するが、女王は必ず生け捕りにしてくれ。
ちなみに女王は鉱石を食べる習性があるから、その食べた餌の鉱石によって見た目が異なる。神銀を取り込んだ個体は《ミスリルリザード》などと呼ばれ、神秘的な銀色の鱗はそれは美しい。自然の作り出す芸術品だな」
「ふーん…まぁ、明らかにオスとは違う見た目なのね?」
「うむ。それだけじゃない《カラカラ》の女王は食べるもので見た目が異なるから、鉱脈を探す時の目安になる。
獣人の一部では食用とされるが、ドワーフ族にとっては無くてはならない存在だ。今回は卵を採取するという目的だからできるだけ傷つけずに捕獲してほしい。
一般的に、卵を産む周期は個体差があるが、だいたい一月に一回、三から十くらいを産むという話で…」
アンバーはその他ずっと《カラカラ》について解説をしていたが、欲しい情報はあらかた理解した。
先行するベティに着いて行く形で洞窟を進んでいると、明かりの届かない洞窟の奥から何やらゴソゴソと物音が聞こえてきた。
止まって音を確認するが、どうやら物音はこちらに近づいてきている様子だ。
「ど、どうしよう…明かり消して隠れる?」
ビビりながらメンバーに確認したが、ベティに「無駄です」と僕の考えは一蹴された。
「相手は暗闇に慣れてる生き物ですから、見えなくて臭いなどを頼りに襲ってきます」
そう言いながら彼女は既に戦闘態勢で拳を握っていた。ベティの戦闘用の手甲に刻まれた魔法陣からは薄っすらと光を滲んでいる。
今までずっと会話に参加せずにいたアドニスも剣を手に僕の前にでた。
その間にも物音は近づいてくる。
小さい小石を蹴飛ばすような音やザッザッという足音に、地面を引きずるような重々しい音が重なる。
音の主はついに明かりの届く範囲に姿を見せたが、その姿を見て僕は言葉を失った…
「おぉ、立派な《カラカラ》のメスだな」と言うアンバーの呑気な台詞に耳を疑う。
これが?!オスと全然違うんですけど!!
オス30センチくらいしか無かったじゃん!
ちゃんと測ってないけど、メスは大きめのワニぐらいの大きさだ。全長7メートルほどの身体は黄色くキラキラと輝いている。
「…あ、アンバー…これは何食べたらこうなるのさ…」
「ふぅむ…白金かな?でもこれはまた違うような…」
アンバーの分析が終わる前にベティが《カラカラ》に仕掛けた。
飛びかかろうとした彼女を牽制するように、《カラカラ》の女王がどぎついピンク色の口をガバっと開いた。
「カカッ!」と笑うような鳴き声の後に女王の口から何かが飛び出た。
「ベティ!」慌てて彼女に声をかけたが、彼女は既の所で《カラカラ》の攻撃を躱していた。
女王の意外な攻撃に、アンバーは「なるほど」と一人で頷いていた。
「魔石を食った個体のようだな。と、いうことはこの鉱脈は魔石の鉱脈か…」
「い?!ま、魔石とか食べるの?!」
この世界では《魔石》というものが存在する。僕も詳しくは知らないが、この世界では一部の例外を除いて、魔法を使うために必要なものだ。
簡単にいうと魔力が電流として、魔法の発動が豆電球が光る事とすると、その電流を流す回路となるのが魔石の役割だ。
「魔石とはいえ、鉱石だからな。ありえないことはないが、珍しい個体なのは確かだ」と呑気に分析しながらアンバーはベティに向かって声をかけた。
「一人で大丈夫かね?」と言うアンバーの問いかけに、ベティは余裕そうに返事を返した。
「剛山羊より楽な獲物です。ミツル様をお願いします」
「承知した」
《カラカラ》の女王をベティに任せて、アンバーは何やら呟くと彼を中心に地面に魔法陣が広がった。うっすらとした膜のようなドームが頭上に完成する。
「この中なら安全だ」とアンバーが言っていることから、この魔法陣は結界のような役割を持っているようだ。
トカゲと戦っているはずのベティに視線を向けると、彼女は持ち前に身体能力でトカゲの口から放たれるビームのようなものを躱していた。
彼女はトカゲの攻撃を躱しながら接近すると手に持っていた何かを投げた。
「ガー!」と怒り狂ったように《カラカラ》の女王が吠えた。
よく見ると、女王は後ろ足を軸に動けなくなっていた。ベティが投げたのはこれだろうか?
「魔獣の捕獲用に用意した固定剤だ」
「固定剤?」
「うむ。粘度のある植物のエキスに麻痺効果を付与した魔法道具だ。元々はエルフたちが貴重な生き物を傷つけずに捕らえる目的で使用する道具だが、これは私が改良を加えた最新版だ」
自作の魔法道具を自慢するアンバーは得意げだ。
そんな話をしている間に、ベティは《カラカラ》の女王を戦闘不能にして戻ってきた。
さすが仕事が早い。この位はベティにとって朝飯前といったところみたいだ。
「お疲れ様。卵は採れそうかね?」
アンバーの問いかけにベティは大きく頷いた。
「地上を目指していたのでおそらく産卵前と見受けられます」
「ふむ。なら卵を産むまで少し待とうか?」と言って、アンバーは心做しかいつもより眼窩の奥で光る視線を輝かせながら《カラカラ》に歩み寄った。
「ふふ。魔石を食べた個体とは興味深いね。持ち帰りたいくらいだ」
そう言いながら女王を観察するアンバーは楽しそうだ。
メジャーのようなものを取り出して大きさを計ったり、何かをメモしたりと珍しい《カラカラ》の女王を堪能している姿はちょっと異様だ。
終いには洞窟の奥に入って行って女王のものと思われる糞を拾ってきた…しかも異様にテンション高い…
「これはすごいぞ!小さいが希少な《竜結晶》だ!しかも魔石を凝縮した滅多にお目にかかれない珍品だ!」
うんこから出てきた物を喜ぶとかマジか…正直、引くわ…
でも、世界一高いコーヒー豆と言われる《コピ・ルアック》もジャコウネコの糞から採取するからそういうものなのかも、と無理やり自分を納得させた。
それからそのまま半日くらいテンションの高い魔王に連れられて洞窟探検して、魔石の鉱脈まで発見できた。
クタクタになって戻ってきた頃には《カラカラ》の女王は卵を産んでいた。
鶏の卵より少し大きいくらいの大きさだが、爬虫類の卵らしく、薬のカプセルのような形状で少し細長い。
とりあえずミッション成功だ。
《カラカラ》を捕獲した第一功労者は垂涎ものの顔で卵を眺めていた。
とりあえず女王の産んだ七個のうち二個の卵を頂戴して女王を逃がした。
残された卵はすぐにオスが集まってきて、咥えてどこかに持って行った。そういう習性らしい。
僕らも城に帰って、ワクワクしながら早速卵を割ってみた。
「…あれ?」
出てきた卵を見て首を傾げた。
ベティの話では深い緑のはずの卵は普通の色をしていた。むしろちょっと赤みが強い印象で、緑要素はどこにも無かった。
「変ですね?《エメラルド・エッグ》じゃないですね?」とベティも首を傾げていた。
持ち帰ったもうひとつの卵も同じ色だ。
緑の卵が見れると思っていただけになんだか拍子抜けしてしまった。
「特殊な個体だったから、卵の黄身の色が変わったんじゃないか?こういうこともあるんだな…」というアンバーの話だが、これはこれでなんか釈然としない…
結局卵は僕の晩御飯になった。
確かにまったりとして甘くコクがあったが、まぁ、卵だ…
こういうところは常識通りなんだなぁ、などと少しだけガッカリして、《カラカラの女王の卵》のレポートを書くことになった。
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