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触れられたいっ★
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透が水野家に戻ってくれて早一週間……。
前と変わらない生活が戻ってきた。
「おはよう泉っ」
目を覚ましてキッチンに行くと既に透が起きて朝食を作ってくれている。
「おはよう透……起きるの早いね」
エプロンをつけた透はにっこりと笑う。
「なんか、目が覚めちゃって……真実は早朝のマラソンに出掛けたよ。そろそろかえってくるんじゃないかなあ?」
そう言いながら目玉焼きを焼き終えた透は壁に掛けてある時計を見上げた。
6時半……か……
今日は休日なのだからゆっくりしていてもいいのに……透は今日もバイトなのだろうか?
気になったので聞いてみる。
「今日は休みだから家にいるよ。泉、よかったら勉強見てもらっても良い?」
そう言われて、私はもちろん頷いた。
透と一緒に勉強……何かいいことでも起きるかもしれない。
★
「泉……ここって……」
良かったら私の部屋に来ない?そう言ったのだが透がなぜか困ったような顔をして……結局リビングで勉強することにした。
透の横に座って課題を解く。
時折こっそり横を見ると、すぐ近くで透が真剣な眼差しで教科書と睨めっこをしていて……なんだかとても微笑ましい。
透って……柔和な顔つきの、とってもハンサムさんだと思う。
優しげな目元に、かわいい形の耳……でももうしっかりと男の子で……いつの間にかに喉仏が目立つようになっている。
出会ったばっかりの頃は中性的で、男の子か女の子か分かりづらい体つきだったのに……ここ何か月で急に大人っぽくなった。
そんな事を考えながらついぼんやりと透に見惚れていると不意に透が振り返った。
「泉?どうかしたの?」
そう言われて慌てて透から視線を逸らす。
かあっと顔が赤くなるのがわかった。
「ううん、なんでもないよ。ちょっと考えてただけ……」
「ふうん……分からないところあったら言ってね。まあオレも分かんないかもしれないけどさっ」
透が微笑んで、再び勉強を再開したのでホッとしながら私は気を入れ直した。
……せっかく一緒に勉強してるんだから頑張らないと。
……絶対に透と同じ大学に進学したい。
お互いに分からない場所を教え合いながら進めていると、シャワーを浴び終えた真実が通りかかった。
「進んでるか?」
真実はペットボトルの水を飲みながら私たちを見つめる。
「うん……まあ。シンジも一緒にどう?」
透はそう言いながら背伸びをする。
「そうだな……折角だから一緒にやるか」
真実はそう言うと、一旦その場を離れて学校で出された課題を持ってやって来る。
……んー、どうせならこのまま二人っきりでも……
視線を上げるとちょうど真実と目があった。
真実が何を考えてるのかは分からなかったが、何か言いたげに私を見つめた後に透の正面の席に座った。
……もしかして、二人で勉強したいって考えてたことに気づかれてしまっただろうか?
……私の邪な考えを真実は見抜くのが上手いのだ。
密かにため息をつき、参考書と向き合った。
★
3人揃って宿題や課題を済ませ、ちょうどお昼頃になったので休憩する事にした。
お昼を作ろう……そう思ったところで食材が足らない事に気づき、買い物に行く事にした。
「オレ行ってくるよ?」
透はそう言ってくれたが、二人になりたかったので一緒に行く事にした。
スーパーまでの道のりはそんなに長くはない。
天気は良くはなかったが、曇り空で日差しがあまりなかったので暑くはない。
海がいた間は殆ど一緒にいられなかったので、透と二人で外を歩くのは久しぶりで嬉しかった。
どちらからともなく手を繋いで歩く。
「そういえば泉ってファンタジー小説とかも読むの?」
透がふと、そんな事を言い出して、本の趣味についての話をする。
「うん、ファンタジー小説好きで集めてたりするよ。存在しない空想の動物とか、世界観が好きなんだ」
そう言うと透は微笑む。
「あ、それは分かるかも。もし自分が今とは違う世界で生まれていたらって考えると怖いような、楽しそうな気がするよね」
「透がもし生まれ変わって、世の中を自分の好きなように変えられるとしたら、どうする?」
そう聞くと透はうーんと言って真剣に考え始めた。
「そうだなあ……苦しいこととか悲しいこととかがない世界で、誰も死なない世界……暴力とか戦争とかもなくて……みんなが幸せになれる世界……って言ったら盛り込み過ぎかなあ?」
苦笑する透。
そんな透を見ているとなんだか切なくなった。
「考えるのは自由だよ。誰にもそこまでは制限なんてできないし。……みんなが幸せになれる世界って良いね」
そう言うと透は頷いた。
「泉は?泉だったらどんな世界にする?」
逆にそう聞かれて、私は戸惑う。
「ん~。どうしようかな……」
言葉を濁しながら私は考えるふりをした。
……私が好きなようにできる世界……
私の願いが叶うなら、私は透と幸せに暮らせる世界がいいな……
そう思いながら、透と比べたら酷く小さな願いだと気づいた。
★
お昼ご飯を食べたら眠くなってしまい、午後は自由に過ごす事になった。
たまたま付けたTVでホラー映画をやっていたので観ていたら、透も興味を持ったようで一緒に観る。
真実はホラーものが苦手なのか、くだらないと思っているのかは分からないが部屋に戻ってしまった。
……日本のホラーはおどろおどろしい演出とジワリジワリと恐怖や不気味さが蔓延していくものが多い。
反対に海外のホラーは突然出てきたり、大きな音や派手な演出で恐怖を煽るものが多い気がする。
今日見ているものは日本物で、少し前に話題となった作品だった。
……そろそろ出そう……
来たっ!!
幽霊が画面一杯に現れた瞬間私は視線を落とし、TV画面が視界に入らないようにした。
隣に座っていた透がビクッとし、隣に座っていたわたしにもそれが伝わってくる。
「……い、今のすごかったね……」
透が私に同意を求めてくるが、私は画面を見なかったので分からなかった。
「……うん……」
とりあえず返事はしたが……しかし画面を見ていなくても恐怖は伝わってくる。
……これは……幽霊が画面に出るのを見ちゃうと後で怖くなるやつだ……そう実感した。
ホラー映画を見るのは好きだが、私は幽霊そのものを見るのは嫌いだ。
作り物だとしても見てしまったらそれが脳裏に焼き付いて、きっと後になって夢に出てくるだろう。
そんなに怖いなら見るのをやめたらいいと思うのだが、なぜかやめられない。
物語は進み、音と演出で再び幽霊が出るのだと分かる。
隣にいた透の腕にしがみつき、幽霊が出る直前に視線を落とす。
女の子達の悲鳴がTVから聞こえ、透が再びビク付いた。
やっぱり……今幽霊が出ているのだろう。
物語は佳境に入り、どうやら幽霊と対決しているようだ。
気づけば透にピッタリとくっついて、震えていた。
★
「んっ……泉……」
透の声で目を覚ます。
どうやら映画を見ながらソファーで寝落ちたようだ。
ソファーの背もたれに寄りかかりながら眠っている透に抱きつくようにして、私は寝ていた。
……透……あったかい……
まだ眠り続ける透の胸に顔を押し付ける。
ゆっくり深呼吸すると、胸いっぱいに透のにおいが入り込んできて、とても幸せな気分になれた。
……さっきまであんなに怖い思いをしていたのが嘘みたいだ。
付けっぱなしになっていたTVをそっと消して、再び透に抱きつく。
……大好きっ……
ひとりでにやにやしながら透に抱きついていると、なんだか身体が熱くなっていく。
この前はもう少しのところで真実のジャマが入ってしまったし……
正直……透を独占したい気持ちは治まってはいない。
透に触れられたいし、抱きしめられたい……
この前は……キスだけでも気持ち良かった……
透にもっと触れて……触って貰いたい……
そう思ってしまう自分がいた。
前と変わらない生活が戻ってきた。
「おはよう泉っ」
目を覚ましてキッチンに行くと既に透が起きて朝食を作ってくれている。
「おはよう透……起きるの早いね」
エプロンをつけた透はにっこりと笑う。
「なんか、目が覚めちゃって……真実は早朝のマラソンに出掛けたよ。そろそろかえってくるんじゃないかなあ?」
そう言いながら目玉焼きを焼き終えた透は壁に掛けてある時計を見上げた。
6時半……か……
今日は休日なのだからゆっくりしていてもいいのに……透は今日もバイトなのだろうか?
気になったので聞いてみる。
「今日は休みだから家にいるよ。泉、よかったら勉強見てもらっても良い?」
そう言われて、私はもちろん頷いた。
透と一緒に勉強……何かいいことでも起きるかもしれない。
★
「泉……ここって……」
良かったら私の部屋に来ない?そう言ったのだが透がなぜか困ったような顔をして……結局リビングで勉強することにした。
透の横に座って課題を解く。
時折こっそり横を見ると、すぐ近くで透が真剣な眼差しで教科書と睨めっこをしていて……なんだかとても微笑ましい。
透って……柔和な顔つきの、とってもハンサムさんだと思う。
優しげな目元に、かわいい形の耳……でももうしっかりと男の子で……いつの間にかに喉仏が目立つようになっている。
出会ったばっかりの頃は中性的で、男の子か女の子か分かりづらい体つきだったのに……ここ何か月で急に大人っぽくなった。
そんな事を考えながらついぼんやりと透に見惚れていると不意に透が振り返った。
「泉?どうかしたの?」
そう言われて慌てて透から視線を逸らす。
かあっと顔が赤くなるのがわかった。
「ううん、なんでもないよ。ちょっと考えてただけ……」
「ふうん……分からないところあったら言ってね。まあオレも分かんないかもしれないけどさっ」
透が微笑んで、再び勉強を再開したのでホッとしながら私は気を入れ直した。
……せっかく一緒に勉強してるんだから頑張らないと。
……絶対に透と同じ大学に進学したい。
お互いに分からない場所を教え合いながら進めていると、シャワーを浴び終えた真実が通りかかった。
「進んでるか?」
真実はペットボトルの水を飲みながら私たちを見つめる。
「うん……まあ。シンジも一緒にどう?」
透はそう言いながら背伸びをする。
「そうだな……折角だから一緒にやるか」
真実はそう言うと、一旦その場を離れて学校で出された課題を持ってやって来る。
……んー、どうせならこのまま二人っきりでも……
視線を上げるとちょうど真実と目があった。
真実が何を考えてるのかは分からなかったが、何か言いたげに私を見つめた後に透の正面の席に座った。
……もしかして、二人で勉強したいって考えてたことに気づかれてしまっただろうか?
……私の邪な考えを真実は見抜くのが上手いのだ。
密かにため息をつき、参考書と向き合った。
★
3人揃って宿題や課題を済ませ、ちょうどお昼頃になったので休憩する事にした。
お昼を作ろう……そう思ったところで食材が足らない事に気づき、買い物に行く事にした。
「オレ行ってくるよ?」
透はそう言ってくれたが、二人になりたかったので一緒に行く事にした。
スーパーまでの道のりはそんなに長くはない。
天気は良くはなかったが、曇り空で日差しがあまりなかったので暑くはない。
海がいた間は殆ど一緒にいられなかったので、透と二人で外を歩くのは久しぶりで嬉しかった。
どちらからともなく手を繋いで歩く。
「そういえば泉ってファンタジー小説とかも読むの?」
透がふと、そんな事を言い出して、本の趣味についての話をする。
「うん、ファンタジー小説好きで集めてたりするよ。存在しない空想の動物とか、世界観が好きなんだ」
そう言うと透は微笑む。
「あ、それは分かるかも。もし自分が今とは違う世界で生まれていたらって考えると怖いような、楽しそうな気がするよね」
「透がもし生まれ変わって、世の中を自分の好きなように変えられるとしたら、どうする?」
そう聞くと透はうーんと言って真剣に考え始めた。
「そうだなあ……苦しいこととか悲しいこととかがない世界で、誰も死なない世界……暴力とか戦争とかもなくて……みんなが幸せになれる世界……って言ったら盛り込み過ぎかなあ?」
苦笑する透。
そんな透を見ているとなんだか切なくなった。
「考えるのは自由だよ。誰にもそこまでは制限なんてできないし。……みんなが幸せになれる世界って良いね」
そう言うと透は頷いた。
「泉は?泉だったらどんな世界にする?」
逆にそう聞かれて、私は戸惑う。
「ん~。どうしようかな……」
言葉を濁しながら私は考えるふりをした。
……私が好きなようにできる世界……
私の願いが叶うなら、私は透と幸せに暮らせる世界がいいな……
そう思いながら、透と比べたら酷く小さな願いだと気づいた。
★
お昼ご飯を食べたら眠くなってしまい、午後は自由に過ごす事になった。
たまたま付けたTVでホラー映画をやっていたので観ていたら、透も興味を持ったようで一緒に観る。
真実はホラーものが苦手なのか、くだらないと思っているのかは分からないが部屋に戻ってしまった。
……日本のホラーはおどろおどろしい演出とジワリジワリと恐怖や不気味さが蔓延していくものが多い。
反対に海外のホラーは突然出てきたり、大きな音や派手な演出で恐怖を煽るものが多い気がする。
今日見ているものは日本物で、少し前に話題となった作品だった。
……そろそろ出そう……
来たっ!!
幽霊が画面一杯に現れた瞬間私は視線を落とし、TV画面が視界に入らないようにした。
隣に座っていた透がビクッとし、隣に座っていたわたしにもそれが伝わってくる。
「……い、今のすごかったね……」
透が私に同意を求めてくるが、私は画面を見なかったので分からなかった。
「……うん……」
とりあえず返事はしたが……しかし画面を見ていなくても恐怖は伝わってくる。
……これは……幽霊が画面に出るのを見ちゃうと後で怖くなるやつだ……そう実感した。
ホラー映画を見るのは好きだが、私は幽霊そのものを見るのは嫌いだ。
作り物だとしても見てしまったらそれが脳裏に焼き付いて、きっと後になって夢に出てくるだろう。
そんなに怖いなら見るのをやめたらいいと思うのだが、なぜかやめられない。
物語は進み、音と演出で再び幽霊が出るのだと分かる。
隣にいた透の腕にしがみつき、幽霊が出る直前に視線を落とす。
女の子達の悲鳴がTVから聞こえ、透が再びビク付いた。
やっぱり……今幽霊が出ているのだろう。
物語は佳境に入り、どうやら幽霊と対決しているようだ。
気づけば透にピッタリとくっついて、震えていた。
★
「んっ……泉……」
透の声で目を覚ます。
どうやら映画を見ながらソファーで寝落ちたようだ。
ソファーの背もたれに寄りかかりながら眠っている透に抱きつくようにして、私は寝ていた。
……透……あったかい……
まだ眠り続ける透の胸に顔を押し付ける。
ゆっくり深呼吸すると、胸いっぱいに透のにおいが入り込んできて、とても幸せな気分になれた。
……さっきまであんなに怖い思いをしていたのが嘘みたいだ。
付けっぱなしになっていたTVをそっと消して、再び透に抱きつく。
……大好きっ……
ひとりでにやにやしながら透に抱きついていると、なんだか身体が熱くなっていく。
この前はもう少しのところで真実のジャマが入ってしまったし……
正直……透を独占したい気持ちは治まってはいない。
透に触れられたいし、抱きしめられたい……
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