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第2章 ライムの酸味とあの日のこと
第9話 彼が去った理由
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「ごめん、あのとき――行けなかった。」
律希のその言葉は、モヒートのグラス越しに、不意に投げかけられた。
私は息を呑んで、彼の顔を見た。
夜の空気が少しひんやりとしていて、フェスの灯りがゆらゆらと彼の横顔を照らしていた。
「駅前のカフェ。……手紙、見たよ。」
「……え?」
律希はうなずいた。
「奏が帰ったあと、すぐ店に入って。スタッフの人が“お連れさまでしょうか”って……」
思わず、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
「じゃあ、どうして――」
「その前に電話が来た。専門学校の面接、急きょ日付が変わって。ちょうど、その時間だったんだ。」
律希の声には、悔しさと、言い訳にしたくないという誠実さが滲んでいた。
「間に合うかも、って思った。でも、行けなかった。
本当は、手紙じゃなくて……会って、“ありがとう”って言いたかった。」
私の中で凍っていた何かが、少しずつ溶けていく。
ずっと責めていたのは、自分だけじゃなかったのかもしれない。
「……律希は、私のこと、どう思ってたの?」
恐る恐る聞いたその声に、彼はほんの少し驚いた顔をして、それから静かに答えた。
「好きだったよ。ずっと。」
シンプルなその言葉が、時間を遡って胸に届いた。
「でも、君の目はいつもまっすぐで。ちゃんとした将来を見てたから、俺は……」
「そんなの、関係なかったのに。」
やっと出たその言葉は、まるで十七歳の自分がようやく口を開いたみたいだった。
律希がそっと、氷の溶けかけたグラスを差し出した。
「じゃあ、これからは。……どうかな。」
私が答えを出す前に、グラスの中のミントが、静かに揺れた。
律希のその言葉は、モヒートのグラス越しに、不意に投げかけられた。
私は息を呑んで、彼の顔を見た。
夜の空気が少しひんやりとしていて、フェスの灯りがゆらゆらと彼の横顔を照らしていた。
「駅前のカフェ。……手紙、見たよ。」
「……え?」
律希はうなずいた。
「奏が帰ったあと、すぐ店に入って。スタッフの人が“お連れさまでしょうか”って……」
思わず、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
「じゃあ、どうして――」
「その前に電話が来た。専門学校の面接、急きょ日付が変わって。ちょうど、その時間だったんだ。」
律希の声には、悔しさと、言い訳にしたくないという誠実さが滲んでいた。
「間に合うかも、って思った。でも、行けなかった。
本当は、手紙じゃなくて……会って、“ありがとう”って言いたかった。」
私の中で凍っていた何かが、少しずつ溶けていく。
ずっと責めていたのは、自分だけじゃなかったのかもしれない。
「……律希は、私のこと、どう思ってたの?」
恐る恐る聞いたその声に、彼はほんの少し驚いた顔をして、それから静かに答えた。
「好きだったよ。ずっと。」
シンプルなその言葉が、時間を遡って胸に届いた。
「でも、君の目はいつもまっすぐで。ちゃんとした将来を見てたから、俺は……」
「そんなの、関係なかったのに。」
やっと出たその言葉は、まるで十七歳の自分がようやく口を開いたみたいだった。
律希がそっと、氷の溶けかけたグラスを差し出した。
「じゃあ、これからは。……どうかな。」
私が答えを出す前に、グラスの中のミントが、静かに揺れた。
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