ハバナクラブ・モヒートは、あの日のまま

Nuit et Verre

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第3章 まだ、間に合うなら

第13話 フェスの灯りと、すれ違いの余韻

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風鈴のように、グラスの中の氷が微かに鳴った。
 フェスの会場には、色とりどりのランタンが灯りはじめ、空にはほんの少しだけ星が滲んでいた。

 「変わったな、奏。」

 律希がぽつりとつぶやく。

 「どこが?」

 「言葉にできるようになった。」

 私は笑って、グラスを指先でくるりと回す。

 「大人になったんだよ、少しだけ。」

 ほんの少しの沈黙が、優しい余韻になってふたりを包んだ。
 けれどその中に、ひとすじの“すれ違い”の影が混じっているのを、私は感じていた。

 十七のとき、私は言葉を呑み込んだ。
 そして、律希もまた、それを待つことなく去った。
 お互いを見ていたのに、見ようとしていなかった時間。

 「もしかして、今こうして話せてるのって、奇跡なのかな。」

 私がそう言うと、律希は首を横に振った。

 「奇跡じゃない。……きっと、どこかで待ってたんだよ、お互い。」

 そう言った彼の声に、少しだけ揺らぎがあった。

 「でも、それがもし一日違ってたら? 私がここに来なかったら?」

 「それでも、どこかで会ってた気がする。」

 私はその言葉を、信じたかった。
 でも、同時に思ってしまう。
 ――この一夜が、ただの再会で終わってしまったらどうしよう。

 グラスの中のミントが沈んでいく。

 「律希、これから、また……会えるかな?」

 彼はグラスを拭く手を止め、少しだけ目を細めた。

 「それ、俺のセリフだよ。」

 ふたりの言葉が交わるたびに、十七の頃の距離が少しずつ埋まっていく。
 でも完全には重ならない。
 それが、“今”を生きる私たちのリアルな余白なのだと、どこかでわかっていた。

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