僕らの運命

ミキノ

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僕らの運命--2--

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 その日は休日で、好きなだけ眠っていたから目が覚めた時はもう昼過ぎだった。空腹に耐えかね、部屋を出てリビングにおりる。
 人の気配を感じず、一瞬首をかしげるがすぐに思い出した。母さんは、ばあちゃんの様子を見に出かけてる。父さんはたぶん休日出勤。俺は途端にわくわくした。久々に一人だ。夕方までは俺が王様。
 とりあえず、何か食べよう。そう思ってキッチンに向かう前、テーブルに大きな封筒が置かれているのが見える。近寄って覗くと俺の名前が書かれていた。その下には病院の名前。

「なんだろ……ああ……」

 何のことはない。バース検査の結果だ。おうちの人と一緒に見てねと担任が言っていたが、特に気にせず封筒の上部分をベリベリ開ける。中に入っていたのは紙切れ一枚。よく分からない単語と数値がずらりと書かれていて、最後には『β』の文字があった。

「くだらねっ」

 分かりきっていたことだ。漫画やドラマみたいな、自分が特別な存在で運命の出会いがあるなんて、そんな事ありえない。俺は散々思い知ったんだから。
 湯を沸かした後、引っ張り出してきたカップ麺を啜りながら、空になった封筒を見る。大体、もしαやΩだったら、もっと分厚い書類が送られてくるはずだ。
 きっと優次はそうだろう。
 一体どんな内容が書いてあるのか。発情期とか抑制剤とか保健で習う以上のこと。家族以外にバース性を話すなって言われているけど、あいつなら聞けばうっかり話すかもしれない。嬉しそうに……むかつく。
 そんな事を考えていたからか。俺の頭にふとした考えが浮かんだ。
 魔が差したって言葉通りの、最低なジョーク。
 気づけばスマホを手に口の端が歪んでいた。一方的に送りつけられていたメッセージに返事をする。一分も経たずに反応が返ってきた。予想通りの食いつきに、俺はますます笑みを深めて立ち上がった。
 久しぶりに家に呼ぶんだから、ちゃんと準備しないとな。 



「おじゃまします! ほんと久しぶり」

 そう言って優次が懐かしそうに玄関の置物を眺める。実際、小学生ぶりだった。広くて何でもある優次の家との差を感じて、呼ばなくなったし行かなくなったから。

「適当にくつろいでて、飲み物取ってくる」
「うん」

 さっさと優次を自分の部屋に案内して飲み物を用意してる間、俺はどうやって話し始めるか考える。罪悪感は心の片隅に追いやられ、異様な興奮が胸いっぱいに広がっていた。


「へえ、すごいじゃん」
「ありがとう。亮くんに褒めてもらえるのが一番嬉しい」

 はにかむように笑う優次に、精一杯優しい顔をしてみせる。とにかく優次の好きそうな話題を振っては褒める。その繰り返し。不思議と苦にならない。これからの事を考えれば。

「なあ優次」

 俺は椅子から立ち上がり、ベッドに寄りかかる優次の隣に座った。きょとんとした顔が目に入る。

「なに?」
「もう届いた?」

 わざと遠回しな言い方をしてみたが、優次はすぐに気付いたみたいだった。さっきまでの楽しげな表情が曇る。

「それって、あの……バース検査?」
「そう」

 短く言って俺がじっと見つめると、ためらいながらも小さく頷く。どくどくと心臓がうるさい。

「優次は……なんだった?」
「その……話しちゃいけないって」
「知ってる。でもそれってさ、周りにバラしたりするからだろ」

 俺は眉間にシワを寄せて、真面目な顔をしてみせる。

「俺は誰かに話したりなんかしない。なっ?」
「亮くん……」

 しばらくの間、優次が俯いて考えこむ。俺は今か今かと待ち構えていた。次の言葉はどうせ決まってる。早く……早く……。

「あのね……僕はαだった」

 聞いた瞬間飛び上がって喜びたいくらいだった。俺は笑わないように口元に力を入れる。何でもないような表情で優次にもたれかかった。

「亮くん!?」
「やっぱな、良い匂いするもん」
「え……」
「俺、Ωだから」
 
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