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しおりを挟むペネロペイアが、国から居なくなって、最初に起こり始めた異変は魔法の不調だった。
いつでも絶好調だったギルバートは、他より酷く感じたものだ。新たに婚約したペネロペイアの妹のジャスミーナも、魔法の威力が普段よりも数段下がっていた。それが、魔法を使う者たちに現れた最初の兆候だった。
だが、プライドの高い彼らは、それをひたすら隠し続けて、何でもない顔をしていた。周りが同じようになるまで、何が原因かを突き詰めることもしなかった。
あの国から出たペネロペイアは、それまでが嘘のように魔法が使えるようになっていた。ペネロペイアは、至る所で人助けをしているうちにそれを聞きつけた国王に呼び出されて、緊張で吐きそうになっていた。
「そなたが、あの有名な魔法使いの子孫だったのか。だが、なぜ、この国で人助けをしているのだ?」
「それが、恥さらしだと国から出て行くように言われてしまいまして……」
「そなたを恥さらしと……? その話、詳しく聞かせてもらえぬか?」
国王に話すことになるとは思わなかったが、ペネロペイアは全部を話すことにした。魔法が全く使えなかったのが不思議なほど、国を出たら使えるようになり、どうせなら人助けに使おうと心に決めて魔法を使って旅していると。
戻る気はないと聞いて、ならばと王子との縁談をとすすめられ、ペネロペイアは断り続けた。
だが、魔法に興味があるという王子が何かと理由をつけては、ペネロペイアに会いに来てくれ困っていた。
(良い方なのは、わかるのだけど……)
「お似合いですね」
「え?」
「そう思うかい?」
「えぇ、みんなも、そう思ってますよ」
街行く人たちに外堀を埋められ始めてしまい、ついにはペネロペイアと王子は婚約者となってしまうことになるまで、そんなに時間はかからなかった。
(だから、何かと私について回っていたとか?)
「ん? どうかしたかい?」
「いえ、何でもありません」
外堀から埋められた気がしなくもないが、ペネロペイアのことを大事にしてくれているのも、同時にペネロペイアはわかっていて元婚約者たちのように嫌な気はしなかった。
むしろ、素敵な人と婚約できたのだと思い始めるのも時間の問題だった。
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