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しおりを挟む(変な令嬢ね。あんなところで何をしているのかしら?)
シレーネは、生け垣に座り込む令嬢を見つけて怪訝な顔をしていた。
「シレーネ様。どうかなさったの?」
「あの方、どなたか、ご存じ?」
「……あぁ、男爵令嬢のイヴ様ですわ。何がしたいのかわかりませんけど、関わり合わない方が無難ですわ」
「……」
イヴは奇行がすぎるせいで、みんなが遠巻きにするのは無理もないことだった。
シレーネは、隣国へと留学していて戻って来たばかりで初めて見たこともあり、びっくりしてしまっていた。
(新しく流行っていることが、あんなことなのかと思ってしまったわ。違うのならいいわ)
「シレーネ」
「殿下」
婚約者の王太子殿下が、満面の笑顔でシレーネに歩み寄ろうとしたところで、イヴが茂みから飛び出したのだ。
「っ!?」
シレーネは、それに物凄く驚いたが、王太子は寸前のところで綺麗に避けてぶつかることはなかった。
(何なの。あれは?!)
「シレーネ。久しぶり、しばらく会わないうちにまた綺麗になったな」
「あ、あの……」
王太子の後ろで、シレーネの幼なじみの子息で側近の一人が首を横に振るのが見えた。
長年の付き合いから、話題にしてはいけないとシレーネはイヴのことは見なかったことにして黙ることにして、当たり障りのない会話をした。
周りの者たちもイヴなど居ないかのようにしていた。
するとワンテンポ以上も遅れて声がしたのだ。
「いったぁ~い! 転んじゃった~」
「さぁ、教室に行こうか!」
シレーネは、男爵令嬢が気になって、チラッと見た。ゾッとするような恐ろしい形相をしていて、すぐに目を逸らした。
すると王太子が、シレーネの戸惑いを察知してすぐに耳打ちしてきた。
「関わったら、面倒なんだ」
「そのようですわね」
それからというもの。シレーネに意地悪されたと騒ぎ立てたり、怪我させられただのと言うのだ。だが、シレーネとはクラスも違えば、近くに来たところでイヴが勝手に転んで居るだけなのは、みんなが知っていることだった。誰も、イヴの話を取り合うことはなかった。
逆に迷惑を被っていると多くの家々から授業の邪魔だと苦情や抗議が男爵家に殺到することになったようだ。
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