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しおりを挟むもちろん、ユルシュルがカンブルラン公爵家の養子となるのがわかってデボラは、ユルシュルについて来た。置いて行けるはずがない。そんなことをすれば、本業を昔に戻してしまいかねない。それに拾った時に約束したのを違えるなんてことをユルシュルは考えていもいなかった。
ブリュエットもついて来ようとしていたが、祖母の面倒があるだろうからとやんわりと断った。かなりしつこくされたが、断った。あれを叔母のところにいや、養母のところに連れて行ったら、凄い目で見られるのは、ユルシュルだ。養母にその程度なのかと思われることになるのは、是が非でも避けたかった。
執事はユルシュルに着いて行くとは言わなかったが、年齢を理由にして辞めて、ユルシュルのところに来るはずだ。
そうなるのが、ちょっと考えればわかることではあったが、残る面々が今回のことが大事にならなかったことに安堵していて、これから先のことを全く考えていないおかげで、あの家から解放されることになった。
「ユルシュル。待っていたわ」
「叔母様」
「ユルシュル。これからは、私はあなたの義母よ」
「そうでした。養母様、これからお世話になります」
「いいのよ。あんな頼りない兄の代わりをずっとして来たのだもの。ここでは、わがままを言ってくれていいからね」
「母上。わがままではなくて、甘えていいと言った方がよいかと」
シャルルと違い、頼りになる従兄がそこにいた。それを見て、叔母もとい養母の時以上に嬉しそうにユルシュルは笑顔になった。
「オーギュスト兄様!」
「うん。前よりうんと綺麗になってて、びっくりしたよ。疲れただろ? 父上が、戻るまでゆっくりするといい」
勢いよく抱きついても、オーギュスト・カンブルランはしっかりと抱きとめてくれた。こちらでは、ユルシュルがひた隠しにして我慢しなければいけないことも、早々には起こらないだろう。
「そうね。疲れたわよね。全く、自分のした後始末まで娘にさせるなんて、信じられないわ」
叔母は、いや、養母はずっと怒っていたようだ。まぁ、それはそうだろう。
ユルシュルが、ちらっと見るとオーギュストは苦笑していた。オーギュストは、部屋に案内してくれて、そこでお茶をすることになった。
「兄様」
「父上は、面倒くさい方の姪っ子のしでかしたことで遅くなるけど、ユルシュルのせいじゃないから気にしなくていい」
「何か、ありましたか?」
「我が家の誰もが、ユルシュルのことを気に入ってるから、嫌な婚約の話をぶち壊すために利用したのを国王が知って、父上が何があったかを説明してる」
オーギュストの言葉にユルシュルは、目を瞬かせた。
「……あれは、我が家にというより、私に嫌がらせをしたかったのですね」
「そのようだ」
「なら、シャルルにドレスを贈って来たのも、王女殿下……?」
「は?」
オーギュストは、ユルシュルの言葉に目を丸くして驚いていた。その顔を見るのは、ユルシュルは初めてだった。彼は、公爵家の跡継ぎだ。滅多なことでは、驚くことをしない。ユルシュルには笑顔を見せてくれるが、他の令嬢に勘違いされるようなことは簡単に見せない。
「ドレスは、流石にしていないとと思うが……。あいつ、女顔だから本当に間違われたとかではないのか?」
「それも否定できません。ぴったりのサイズでしたから」
「っ、」
それを聞いて、オーギュストは過呼吸になるほど笑っていた。
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