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しおりを挟む人ではないとユルシュルは気づいてはいたが、まさか魔王の息子とは思っていなかった。
しかも、魔王子だとまでは思いもつかなかった。
養父母と義兄と家族になれて喜んで、新しい生活を満喫していたら、何となくどこかで見たことがある人物が留学して来た。
それが、侯爵家の長年執事をやっていた初老だと気づいたのは、婚約の話をされた時だった。婚約を申し込まれた時に魔王子だと言われたユルシュルは、首を傾げた。
「魔王子……?」
「どうした?」
「いや、なんか、どっかで見たことある気がして」
じっと見ていると魔王子は、ふいっと視線をそらした。その仕草を思い出したのだ。
「もしかして、侯爵家で執事やってた?」
「……何で、ここで思い出すんだ」
「仕草が同じだから。……そう、あなた、年取るとあんな感じになるのね」
「……他にないのか?」
「魔族が何気に出てくる小説ばかり読ませていたあなたが言う?」
そう、執事が選んだ本は何気にそういうものばかりで、ユルシュルはその物語が好きだった。
「あれは、魔族を誤解している面々が多いから、そんなことないと出しているやつだ」
どうやら、その辺からユルシュルは魔族に偏見をもたないようにされていたようだ。
魔を退ける一族。そのため、長寿を約束されているが、恩恵のない国の偏見によって悪いイメージがつきまとうのをどうにかするために色々頑張っているようだ。
ユルシュルは婚約してから、あのドレスが誰からの贈り物だったかを風の噂で知ることになった。
王女の狙いと同じく、ユルシュルだったようだが、王女のやろうとしたのを知って利用しようとして、ユルシュルにいい格好をしようとしたようだが、そんな王子は好みの相手が女顔をしたシャルルだったということになっているようで、それに何とも言えない顔をしてしまった。
「私を狙うのにみんなシャルルを狙っていたのね。私の弱点だとでも思っていたのかしらね」
「なんだかんだ言って、シャルルの頼みを聞いて、どうにかしていたから、ブラコンだと思ったのかも知れないな」
魔王子の言葉にユルシュルは、そんなことあるのかと思ったが、もう縁も切れているし、生まれ育った国に行く気もない。
ただ、運命の相手と出会い、どこで見かけても仲睦まじくしていてお似合いだと言われて続けて、人間の時より遥かに長い時間を生きることになっても、侯爵家にいたような退屈を感じることも、自分を押し殺すこともすることはなかった。
その美しさを見た恩恵を受けていない国の者たちに“魔女”と呼ばれても、気にすることはなかった。
ただ、幸せそうに笑顔溢れる日々を謳歌し続けた。
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