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しおりを挟む(オーギュスト視点)
ユルシュルが婚約をすることになった。相手は……。
「あの、あれって、もしかして……」
「流石は、私の息子ね。でも、口にはしないほうが身のためよ」
「……大丈夫なんですよね?」
「気に入った者とその人物が大事に思っている人間には優しいわよ」
「……」
つまりユルシュルに好かれていると大丈夫だが、そうでない者には優しくないということだ。
はたして、私はユルシュルにどう思われていることやら。
そう、元は侯爵家の執事をずっとしていた初老が、魔王子として現れたのだ。彼は魔王の息子だったというわけだ。
そんなのが、何で侯爵家の執事をしていたのかと思うが、嫁探しをしていたらしい。魔族は、寿命が人間よりかなり長いから、嫁になりそうな娘が生まれる何世代前から、着々と準備をするようだ。
「私が選ばれそうだったのよ」
「え、母上が?」
「でも、違ったらしいわ」
母は懐かしそうにしていたが、息子としては気が気ではない。
ちらっと見ると父がいて、ぎょっとしたが知っている話だったようだ。かなり複雑そうな顔をしている父を初めて見た。
そんなのにユルシュルは気に入られてしまっていたようだが、ここに養子に来たのも実家との縁を切らせたのも、魔王子の策略のようだ。
寿命の違いも、婚約者になってから色々と変わるようだが、ユルシュルがここに来た時より幸せそうにしているのを見れば、変な心配をする気にはならなかった。
だが、義兄としては、複雑なものがなくなったわけではない。
「本当にお似合いですね」
婚約者が、ユルシュルたちを見てそう言うのを聞いて、不意に彼女と同じものを見た。確かにそこには、魔王子と笑い合うユルシュルがいた。
ユルシュルの家族が住まう国から嫁に行くから、この国のみんなも喜んでいる。魔族と呼ばれているが、魔を退ける一族だ。
そんな一族が、向こう数百年はこの国の民を気にかけ続けることになるのだ。それにみんな喜んでいた。
逆に縁を切ったユルシュルの実家と生まれ育った国の方は、大変なことになっている。
「そうだな」
ユルシュルが幸せで、自分も両親も、幸せならそれでいいことにした。あれこれ思い悩んでも、仕方がない。
ただ、あちらの国が、魔族は悪い連中みたいに言っているのが、イラッとした。恩恵を受けた国とそうでない国では、魔族に対して真逆なように取られるのも、色々あるからのようだ。
かくいう私も、勘違いしていたことが恥ずかしくなっているが、ユルシュルがこの国に来て、義妹となってくれたことで、益々幸せになれるとは思いもしなかった。
彼女に感謝しない者は、この国にはいない。
そんなこんなで、オーギュストは魔王子の花嫁となって、末永く幸せになることを約束されたユルシュルは、魔族の花嫁となって長寿が約束されたことで、美しい姿を長く保つことになった。
それによって、ユルシュルが魔女と呼ばれるようになったが、それを悪く言うのは恩恵に預かることができなかった国の者たちだった。
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