弟にドレスを贈ってきた人と婚約を申し込んできた人は別なのに目的は私だったようですが、私の将来は売約済みなので無敵です

珠宮さくら

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(デボラ視点)


暗殺が一番下手だったから、それを本業にしていた。得意なことを伸ばすなんて、考えもしなかった。

ユルシュル様の側付きメイドとなれて、至福でしかなかった。一生の主を見つけたことに私がどれだけ心を躍らせたことか。

それなのに初めて、調べることが上手くいかなかった。こんなこと初めてだったが、それによってユルシュル様はあの家と縁を切ることになった。

悔しくて、調べ直したらあっさりと誰がしていたかがわかった。あの国の王子がしていたことだった。しかも、あのメイドの雇い主も、その王子だった。あっさりと調べられたことにびっくりしてしまった。

なぜ、あの時、調べられなかったのか。よくわからなかった。


「どうかしたの?」


そんな私にユルシュルの養母となられた公爵夫人が声をかけて来た。私としたことが、ぼーっとしてしまっていた。


「いえ、それが……」
「もしかして、調べ直したの?」
「っ、」
「あなた、とても優秀みたいだから、やるとは思っていたけれど。そう、たどり着けて無事なら、あなたは合格ってことでしょうね」
「? あの」


公爵夫人は、にっこりと笑った。


「あなたは、ユルシュルの側付きメイドよね? ユルシュルが興味をなくしたことを調べ直すことはしなくていいのよ。ユルシュルは、我が家の娘になったのだから。あの家で起こったことを掘り起こすことはないわ」
「はい」


私は、それにハッとした。そうだ。ユルシュル様が、あの家にいる間は、どうにかするとおっしゃったが、縁が切れているのに掘り返すことはなかったのだ。

つい、ができなかったことが気になりすぎて悔しくて調べてしまったが、私は間違えていた。

そこから、言われた通りの側付きのメイドとして完璧を目指した。

するとユルシュル様の婚約者が現れて、それに物凄く驚いてしまったが、その秘密を暴く気にはならなかった。

いや、暴いたら側付きとして働けなくなりそうだったから、やめた。


「ユルシュル様が幸せなら、それでいい」


婚約者の隣で、普段目立たないようにしていたユルシュル様が輝かんばかりの笑顔を見せているのを見て、私も嬉しくなった。






デボラは、ユルシュルの婚約した人物に一目置かれたのとそれ以上にユルシュルが気に入っているのが大きくて、命拾いしていることに気づいていなかった。

そもそも、デボラの思考はぶっ飛んでいる。苦手だから暗殺の仕事をしていたのだ。完璧になりたくて、他のことも努力を惜しんだことはない。

そんな彼女が、ユルシュルと出会ったことで人生が一変した。彼女の婚約者が特殊すぎて、そちらの種族に彼女は大いにモテた。

だが、デボラ本人はユルシュル一筋で、そちら方面に疎すぎたことで、ユルシュルとその婚約者に面白そうに見られていることには全く気づくことはなかった。

それでも、ユルシュルが幸せそうで楽しそうにしているのはわかって、デボラも笑顔が曇ることは滅多になかった。


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