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しおりを挟む(シャルル視点)
父さんがやらかしたことで一時はどうなるかと思ってしまったけど、姉さんのおかげで侯爵家は王太子の逆鱗に触れずに済んだ。
その代わりのように姉さんが、養子になってしまったが仕方がない。
そう思って見送った後で、クローゼットに押し込んだモノに気づいてしまった。
「っ、し、しまった! 姉さんにこれが、誰からなのかを聞いてなかった」
だが、びくびくしていても、次はなかったことにホッとしていた。
きっと、嫌がらせだったに違いない。
そう思って、忘れることにした。忘れるならクローゼットのドレスなんて捨てておけばよかったのだが、捨てるのを忘れたせいで、王子に女性と思われて想いを寄せられていたのをひた隠しにしていたと思われることになったのは、それからしばらく経ってからだった。
「大変だったな」
「いや、そんなことは……」
「お前、女顔すぎるもんな」
周りにはげまされ、慰められてしまったが、令嬢たちの中には……。
「王子からの贈り物をクローゼットに大事にしまっていたそうよ」
「相思相愛だったのね」
王子に想いを寄せられて満更ではなかったと誤解されていて、それにびっくりして誤解を解こうとすればするほど……。
「大丈夫ですよ」
「そうですよ。ちゃんとわかってますから」
「でも、王子がご病気になって療養することになって、さぞ心配でしょうね」
完全に誤解している令嬢たちに王子との仲を引き裂かれることになって可哀想とばかりにされてしまった。
それを払拭するために婚約したのだが、彼女は侯爵家の跡継ぎが頼りなさすぎるのにイライラしてばかりいた。
「しっかりしてください! あなたのせいで、私が恥をかいてしまいます」
「っ、」
王子の想い人うんねんは、ずっと言われ続けることになった。
それを耳にするたび、結婚した妻の機嫌がすこぶる悪くなるため、極力怒らせないようにするのに必死だった。
「そんなんだから、婚約者の子息が令嬢と破棄したり、解消したりして、密かにあなたに想いを寄せていたんですよ。しっかりしてください!」
「っ!?」
妻の言葉にぎょっとした。女顔で庇護欲を誘うせいで、学生時代にそんなことになっていたことなんて知りもしなかった。
両親は相変わらず頼りないままで、いつの間にか歳だからと古株の執事が辞めてしまい、侯爵家はてんやわんやすることになった。
「姉さんが、ここにいてくれたら」
結婚してからも、姉がいたらよかったのにと思うことをやめられなかった。
そんなことを考え続けているから、嫁にガミガミ叱られることになったが、自分がやるより姉がやった方が何事も卒なくこなしていたことを知っていれば、そう思うのは無理ないと思うことをやめることはなかった。
シャルルは、姉が養子に行っていなかったら、自分はもっと幸せになれていたはずなのにと思っていた。
そこに自分でどうにかしようとする気概や気力はなかった。そのせいで幸せになれないのではなくて、姉がいなくなったことで面倒なことをしなければならないと思い続けるばかりで、そんな姿が憂いを帯びた可愛らしい女性にしか見えないことに気づくことはなかった。
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