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しおりを挟むぶっちゃけると千沙都は、幼稚園の頃から長い付き合いとなることになった幼なじみの一希のことを長らく女の子だと思っていた。
それほど、見た目だけは可愛らしい子だったのだ。幼稚園の間、ひたすら千沙都は一希を女の子として接していた。
そして、性別の勘違いに気づいたのは、小学生の入学式の日だった。あれは、千沙都は今も忘れられない出来事だった。
(え……? おんなのこじゃないの?? あんな
にかわいいのに。おとこのこだったの……?)
入学式の時に幼なじみが男の子だとわかり、ガチガチに緊張していたのが、一気に違うことで頭の中がいっぱいになってしまった。
名前から考えて、どうしたら間違えるのかと思うだろう。小さい頃は、彼のことを愛称で呼んでいたため、気づかなかったのだ。まぁ、その驚きは凄まじいものがあったが、その勘違いについては幼なじみにも、千沙都の家族にもバレてはいないはずだ。……そう思いたいところだ。
「今日の一希くんは、可愛いというより、かっこよかったわね。やっぱり、男の子ね」
「そ、そうだね」
母親には気づかれていた気がする。いや、あれは絶対にバレていた。それでも、千沙都は自分が間違えていたことを頑なに隠すことにした。母は察してくれたようで、一希のことを男の子だと千沙都に何度も言うことはなかった。
そういえば、幼稚園で一番可愛いのは、一希だと言っていた気がする。そのたびに母が……。
「千沙都。本人には内緒にしておきましょうね」
「? なんで??」
「可愛いって言われて、嫌な子もいるのよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
「そうよ。だから、内緒にしておきましょうね」
「わかった」
あれは、男の子に可愛いを連呼して、幼稚園で一番なんて言うとその後が大変だと思ってのことだったに違いない。それを千沙都は、言われていた時に全く気付けなかった。
だが、それ以外の家族にはバレてはいないはずだ。名前からして、男の子で間違いないはずの幼なじみを可愛さだけで女の子だと決めつけていたなんて、知られたくない。
(こんな勘違いを兄さんに知られていたら、一生言われるとこだったわ。とんでもない弱味を握られるところだった。そんなことになっていたら、カノジョのことで、助けようなんてしてはいなかったわ)
千沙都としては酷い勘違いをしたものだと思っていても、それで幼なじみや周りを傷つけたことはなかった。母に言われた通りにそれを本人には伝えてはいなかったことで、被害は拡大することはなかった。
月日が経ってからの千沙都は、どうしたらそんな勘違いができるんだと自問自答して、自分の凄まじい勘違いを拗らせないようにするのに気をつけることくらいしかできなかった。二度と同じ過ちは繰り返すわけにはいかない。
(そんな私が、見た目で色々と誤解されるとは皮肉なものがあるわよね)
でも、おっとり見えるだけなのだ。もっと早くから、そう見えていて体育の時にはっちゃけさえしなければ、運動部に入らずにマネージャーなんてことをしていたかも知れない。
それこそ、男子の運動部のマネージャーをしていたら、モテまくっていたであろう容姿をしている自覚も彼女には全くなかった。
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