見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

珠宮さくら

文字の大きさ
8 / 53

しおりを挟む

幼なじみといっても付き合あいが、学年が上がるたびに薄くなっていけば、そこまで気を使うこともなかった。彼本人に気を遣っていたわけではないが、そこから小中高校と同じところに通うことになったのだ。

千沙都は、一希と同じところをわざわざ選んだわけではない。小中学までは仕方ないとしても、高校は別々になることを期待していたが、高校をどこにしたと前々から話してはいなかったが、合格してから同じところに行くとなって、千沙都は……。


(最悪すぎる)


まず、最初にそう思ってしまった。でも、その次にこうも思った。


(……これは、丁度いいと思うべきかな)


深く考えても、別の高校に行く気がない千沙都は幼なじみと高校も同じことを諦めることにしたのが早かった。

小中学とずっと同じクラスだったこともあり、家族ぐるみで仲良くなったのは、極々自然なことだった。そう、仲良くはしていた。非常に仲良くはしていなくとも、幼なじみの親同士として、それなりの付き合いはしていた。

何せ、幼なじみなだけでなくて、この2人がずっと同じクラスとなったことで、運動会や文化祭でお互いの家族がタイミングよく出会ってしまうのが原因だった。それなりに会うのだから、仲良くしていた方がいいと思ってのことに過ぎなかった。

子供たちが同じクラスになり続けているのにお互いの家族が険悪だったりしたら、千沙都たちの仲も同じく距離を取らずにはいられなくなっていただろうが、そんなことにはならなかった。

途中で、千沙都は幼なじみのことを愛称呼びから、名字呼びになった。あちらも、名字呼びで偉そうに呼ぶことも増えたが関係性は幼なじみのままだ。

そんな2人は幼稚園からの腐れ縁で、どちらかが相手に片思いしているとか。両思いで付き合っているとか。これから、そういう方向に向かうような恋愛感情が、双方にあるわけではない。少なくとも、千沙都には欠片もない。持つ気もない。

2人の関係性をしっくりくる言葉で表現するなら、血の繋がりのない姉弟みたいな感じだ。誕生日からしたら、一希の方が早く生まれているのだから、あちらが兄なのかも知れないが、千沙都としては日々が姉の気分だった。それか、従姉弟同士のような感覚で接していた。幼なじみというより、身内感覚が強かった。

でも、そうなると血の繋がりがあるのだから、姉弟とか従姉弟とかと思うより、近所のお姉さんとかの方がいいのかも知れない。血の繋がりがあるような位置づけだと精神的にキツイところがある。

昔からよく知っているだけの幼なじみ。一希にカノジョができるなら、彼のことや彼の家族のことやらをそちらに任せるだけのことだ。


(今日は、忘れずに散歩したみたいね)


平日の日は、朝に家族から連絡が来るのをスマホで確認するのが、千沙都は日課となっている。これは、小学生の頃からの日課だ。

一希の家族は、みんな犬好きな人たちなのだが、どんなに犬好きでもちょっと問題がある人たちなのだ。犬を抜きにしても、問題が多いところがある人たちだから、わざわざ仲良くしたいと思う者は稀だろうが、仲良くしたいわけではなくて、ただ、飼われている犬のことが気になって仕方がないだけなのだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

❤️ 賢人 蓮 涼介 ❤️
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

処理中です...