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しおりを挟む大学生になり、長期の休みに実家に帰った時に再び先輩に再会することになったのも、猫がきっかけだった。
母が呼んでも、まだ外に居たい時は塀の上から動こうとしないのだが、口笛を吹くとすぐさま帰宅するのだ。まるで、犬のようだが、小学生の頃に私がそう教えたのだが、残念なことに母は口笛が吹けなかったのだ。
よって、どうしても家の中に戻ってほしい時には、私が口笛を吹くのだが、大学で一人暮らしを始めたことで、母と猫は口喧嘩が勃発する頻度も高いようだ。
「猫ちゃん……?」
「え?」
久々にあだ名を呼ばれて驚いて振り返ると先輩が、驚いた顔をして立っていた。以前より、大人びて益々、かっこ良くなっている先輩との出会いに喜ぶより、複雑な思いの方が大きかった。出来るなら、会いたくなかったという気持ちの方が大きかったのは確かだ。
そんな私の気持ちなど、猫はお構いなしに私をすり抜けて先輩の足元にすり寄って身体を擦りつけていた。
(相変わらず、愛想がいいな)
さっきまで、家になんて入りたくないのにと不満タラタラの顔をしていたのが、嘘のようにそれなりの歳ということすら隠しきった見事な猫被りを披露していた。
数年ぶりに会った先輩は、そんな猫をしゃがみこんで頭を撫でていた。ゴロゴロと喉を鳴らす猫が、私は憎らしくも思えてしまった。
気まずい雰囲気なのを逃げようと猫を回収しつつ、先輩に挨拶して家に入ろうとして、先輩に腕を掴まれてしまった。
どうやら、転校するのを知らせようとしていたのに避けまくったことを先輩は、ずっと後悔していたらしい。
(そんなこと蒸し返されても……)
だが、頭を下げられてしまえば、許さないわけにもいかない。
「あの、私、何か、先輩にしましたか?」
「あー、いや、避けまくったのは、その、」
どうやら、避けまくった理由は嫌われたからではなかったようだ。
むしろ、好きだと自覚してしまい、そういうのに疎かった先輩は、どう接していいかがわからず逃げ惑ってしまったらしい。その挙げ句、私がいつの間にやら転校したことを知って、物凄く後悔をしてしまったのだとか。
そこから、お互い彼氏も彼女も居ないのを確認して、連絡先を交換することになったのだった。
怒涛の展開に私の頭がショートしかけていたのだが、先輩を見送って、連絡先を見ながら悶えていると猫が、スマホを隠すように乗っかって来た。
「……」
「……」
しばし猫と見つめ合う私。
「……わかった。明日、買って来るよ」
それで通じたらしい猫は、家族にしか聞かせない猫らしくない鳴き声で鳴いた。
先輩に再び会え、誤解も解けたのは、誰のおかげだと猫は言いたかったのだ。
が、次の日、すっかり忘れてしまった私に珍しく猫は、噛み付いてきて慌てふためいてご褒美のオヤツを買いに走ったのは、猫と私だけの秘密だ。
あれから、先輩と正式に付き合うことになって、長期休暇の間にデートを満喫した。一人暮らししているところが近いだけでなく、まさか、同じ大学に通っていたとは思わなくて、2人でびっくりしたのを覚えている。
お互い遠距離恋愛になるのを覚悟していて、中々どこに住んでいて、どこの大学に通っているかを聞けなかったのが、間抜けに思えてしまったほどだ。
(不思議だな。学部が違っても大学で会えなかったのに。猫の縁結びって、あるのかな?)
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