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しおりを挟む高校に入った頃に気になっていた先輩と話すきっかけを作ってくれたのは、この猫だった。
「その猫、君のとこの猫?」
「っ、」
あまりに突然のことで、頷くことしか出来なかった。夕日に照らされていたが、きっと顔が真っ赤なのは、先輩にもバレバレだっただろう。
声は出ないが、コクコクと頷くことはできた。
先輩は、私と猫の目の前まで来て、クスッと笑った。
「可愛いね」
「!?」
「にゃー」
不意に先輩が言った言葉に心臓が跳びはねたが、返事をしたのは腕の中の猫だった。
しかも、驚くなかれ、この猫は普段、にゃーなんて可愛らしく鳴いたことなんてしたことがない。それが、よそ行きの声で鳴いたのだ。
(何だろう。飼い猫に負けた気がする)
先輩は、可愛いを繰り返して、ゴロゴロと喉を鳴らして甘える猫を撫でて、ついでに私の頭もポンポンと撫でて帰って行った。
とりあえず、色々言いたいことはあったが、猫のおかげで、先輩と話せたのだ。猫の好きなオヤツを次の日、密かに貢いだ。
「もしかして、前から先輩と知り合いだったりするの?」
何を猫に聞いているのだろうと思ったが、返事はあった。それは、聞き慣れた鳴き声で、にゃーなんて可愛いものではなかったが。
(猫を被るって、本当だったんだ)
その返事が、YESだったことを知ったのは、二度目に先輩に会った時だった。
本当に前々から、飼い猫と先輩は知り合いだったらしく、あの調子で愛想を振りまいて猫を被っていたらしい。
首輪をしているから、どこかで飼われているのだろうと思っていたら、同じ高校の私の家で飼っているとわかって思わず、声をかけたらしいのだ。
しかも、なぜか、先輩は私を学校で見つけるたび、“猫ちゃん”と呼び、頭を撫でるものだ。
(猫扱いされてるよね??)
何でか。それが、そのまま、あだ名のように周りにも定着してしまい、学園祭では猫耳をつけてメイドのコスプレをさせられて、接客させられてしまったほどだ。
猫ちゃん呼びで慣れたのもあり、先輩には喫茶店をやるから来てくださいと言ってしまっていたが、まさか、猫耳つきのメイドのコスプレをさせられるとは思っていなかった私は、先輩が来る前に逃げ出そうとしていたのだが、先輩は律儀にも友達を連れ立って来てくれ、私の格好に目を真ん丸にして驚いていた。
その後、何故か、先輩から避けられることになってしまい、私はそれに物凄いショックを受けてしまったのは言うまでもない。
(あんな格好したから、嫌われたんだ)
本気で、私はそう思っていた。
友達は、何かと励ましてくれたが、そんなこと耳に入って来なかった。何を言われても慰めにならなかったのだ。
しばらくして、私は転校することになり、避けられまくった私は先輩と話す機会もないまま、お別れすることになってしまった。
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