好き逃げ! = 好きですけど、逃げていいですか? × 俺の許容範囲は限界です!(連載版)

m.sei

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好きじゃない

3 オープニング③ 罪悪感

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(無理無理無理無理無理無理)

 勢いよく開けた扉を今度はそっと閉め、呪文のように繰り返す。

 我知らず小刻みに震える手は握りしめたノブから離れてくれず、身動きができないまま扉に額をつけ考え込む。

(な、なんで?……なんでこんなことに⁈)

 回らない頭で、昨夜の事を思い返してみる。

(昨日は飲み会があって、それで――)

 途中までは覚えている。

(そうだ……間違えて、酒を)

 気づいた時にはもう遅く、直後にぶっ倒れた。その後の事が、曖昧でよく憶えていない。

 誰かと会話をした記憶はあるが、断片的で、所々抜け落ちている。

(――そういえば、吐いて、た……)

 はっ、と顔を上げ、辺りを見渡す。

(服。服は、もしかして――)

 寝室をちゃんと探していなかった。ここになければ、もう一度入らないといけないと思ったが、振り向いた先のソファの上で見つけた。

 スーツの上下とネクタイは、シワにならないように置かれていた。ワイシャツと靴下は洗われ、ワイシャツにいたってはアイロンがかけられているようだった。

「……」

 罪悪感が湧いてくる。

 このまま逃げていいものかと一瞬ためらったが、頭から寝間着パジャマを脱ぐと、肌触りのいい生地がスルリと床に落ちた。

(うわ~、これってシルク? もしかしてこれも自分で洗ってるのか?)

 こんな時にもかかわらず、変なところに興味が湧く。

 だがすぐに〝そんなわけはないよな〟と思い直し、急いでスーツパンツを穿き、ワイシャツだけ羽織ると、そのまま放置することもできず、高価たかそうな寝間着を素早く丁寧に畳んでソファの上に置いた。

 ゆっくりしている時間はなかった。

 いつ起きてくるかも分からない相手と今、顔を合わせるのは無理だ。気まずいということもあるが、二人きりになるのは極力避けたい。

(これ以上は、俺の心臓がもたないっ)

 ソファの傍らに置かれた鞄に、ネクタイと靴下を詰め込む。

 ベルトとスーツの上着を無造作に掴み取ると、急いでリビングを出て玄関へと向かった。

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