私が好きなのは王子様ではございません

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第一章 結婚なんてしたくない

六話 (エルノ視点)

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「………アリスが婚約破棄で国外追放…だから…」

 あの後調べたらすぐに見つかった。婚約破棄をされ、国外追放となったらしい。
 なんと馬鹿なことだろうかと僕の親であろうが弟であろうが嘲笑う。

「…それが弟であろうと、許さない」

 僕が本当にただの根暗王子だと思ってるの?

      ☆   ☆
「失礼します、学園長」
「どうしたのじゃ、お主が訪ねてくるなんて珍しい……」

 仕事で山積みだろうに、突然夜押しかけてきた僕のことを素直に入れてくれた学園長はとても良い人だ。
 この人は、僕が信頼できると思った人。この学園の全体を回している学園長、ホークス・アル・カシシナ。

「……前、僕は頼みましたよね。学園長に僕の成績隠蔽を図るようにと」
「……あぁ、言われたの。だからそうしてるのじゃが……」
「あれの取り消し、お願いできますか?」

 その言葉に面を食らったかのように驚いた表情を浮かべ、一瞬暗い表情へと移り変わる。
まぁ座れ、その一言をいい向かい合わせのソファを指差す。僕はそれに応じ、ふかふかなソファへ腰を下ろし、真剣に向き合った。

「ほぉ……じゃが、いいのか?お主は昔言ったの「目立ちたくない」だから成績、個人情報隠蔽を頼んだのじゃろう?」

 昔、入学する時、子供みたいなわがままを言ったのを覚えている。どうか、言わないでくれ、自分の個人情報をできるだけバラさないでくれと。簡単な話、目立ちたくなかったから。
 僕は一呼吸つき、話を進めた。

「……なら学園長、アリスの事どう思いますか?」
「……良い子じゃな。悪名高くて有名じゃが、こんな老いぼれにも悪意もなく優しくしてくれる……聖女かと思ったわい。わしも助けてやりたいのは山々だったが、王家は権力を駆使してしもうての。謝りに行こうと思ってたんじゃ………あぁ、なるほどの。お主はアリスに惚れたのか」

 少し考えたあと、するすらと言葉を述べた。僕は最後に図星をつかれ、う…っと密かにダメージを受けた。
 その様子に学園長はにやにやしながら、青春じゃのと言葉を零す。

「とにかく、アリスは何もしてません。無罪です。だから、王家が権力を振るうと言うならば、僕だって権力を振るって、アリスを取り戻します」
「それは、わかっていってるのか?お主だって王家の人間だ。王家の人間が王家に歯向かうのじゃ」
「承知の上です。あの人達は腐っている」
「………確かに、じゃ。お主が王になるのをわしは見てみたいの。よし、手伝おうではないか」

 にこっと優しい笑みを浮かべる。どうやら納得してくれたようだと一安心した。学園長もこれは良くないと思い始めたのだろう。

「まず、僕の実力を証明します。その為に、隠蔽の取り消しをお願いできますか」
「もちろんじゃ、だがその後はどうする」
「僕がお前らより上だと教えるまでです」
「はー…っ、若者にはついていけんわい」

 あー、いやじゃいやじゃと空を仰ぎながらため息をつく。こっちは苦笑いする事しかできなかった。

「ま、お主の個人情報を見たら誰でも拍子抜けするわな。魔法の実力、剣の実力、薬剤の実力、座学の実力、それらが全て賢者レベルじゃよ」

 はぁーとまた体を定位置へ戻した。僕は基本的に座学だけが優秀だと思われているが、そうではない。
 僕の得意分野は全てだ。誰よりも、何よりも引けを取らない。だから、自分に自惚れるのだけは嫌で、外側だけで女性が寄ってくるのが嫌で、僕は学園長に隠蔽してもらっていた。
 座学は入学試験の時平均点がわからず、高得点を取ってしまったので諦めていたというわけだ。

「嘘だと言って殴りかかってくる奴らは蹴散らします」
「あれはどうする?色に関しては」
「魔法を使います。色がよく理解できないので、色を作るのは不可能でしたが、物の色を文字で表すことには成功しました」
「……お主が王になったら将来この国は安泰じゃな……応援するぞ」
「ありがとうございます、アリスの無罪を晴らしてまいります」

 席から立ち、そのご厚意に感激し一礼をする。学園長はまた微笑んだ。

ーーーこれで、手駒は整った。
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