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第二章 夢と魔法の国
16.運命の?お茶会。now.3
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間もなく殿下がいらっしゃいます、と、お城の侍女さんが私たちのテーブルに伝えに来て、あっという間に殿下の席を作る。無難にヒンター様とマークス様の間に。さすがだ。
グローリア様はパアッと顔が輝いてウキウキし始め、片やイデアーレ様は緊張を思い出したようだ。私も改めて気を引き締める。
「……やっぱり」
殿下が近づいてきたところで、マリーアがボソッと呟くのが聞こえたが、上手く聞き取れなかった。
「マリーアお姉さま?どうかしましたか?」
「いえ、何でも。気にしないで」
いや、気になりますけれど。少し前にもヒンター様に怪訝な顔をしていらっしゃいましたが………………殿下にも、なかなかな顔をされていらっしゃるのですよ。どうした、マリーア!彼女は理由もなくこんな顔はしないはずだけれど。このままだと、さすがに…
「マリーア嬢。今は頼む」
と思って私が声をかけるより先に、ヒンター様がマリーアに声を掛けた。
「……失礼しました。承知致しました」
マリーアはそう言って、彼に優雅に微笑んだ。うん、美人。
すごく綺麗な笑みだ。……なのに何か怖いような……?
ーーーうん、私は触れないことにしよう。
これぞ正しく『君子危うきに近寄らず』だな。……マリーア相手のつもりはなかったのだけれど……。何事も想定外はつきものよ。仕方ない仕方ない。
「皆、お茶会は楽しんでいるかな?」
そうこうしているうちに、殿下がやって来て、優雅に腰かける。グローリア様が「はい!サーフィス様!」と満面の笑みで応え、私たちも「はい」と続く。
「ここは本当に賑やかだったよね。ヒンターがあんなに笑うなんて珍しいもの。わたしも知りたいな」
「サバンズ侯爵令嬢ご姉妹も、ドゥルキス伯爵令嬢も、王太子妃になる気がないというお話ですわ」
「グローリア!」
「何ですか?ヒンター兄さま。本当のことでしょう?」
「それは……」
殿下の爽やかな問い掛けに、さらっとグローリア様は爆弾を落とした。ヒンター様が慌てて止めるが、ツンとして返す。ちょっと強がりも感じるけれど、彼女はガッツリ王太子妃を目指しているのだろうから、当然と言えば当然だろう。
でも、確かに王太子妃は避けたいが、別に王家に逆らいたいとか協力しないとか、そんなつもりはないので……あんまり挑発的なのは困るんだよなあ。
「へぇ?そうなんだ?……わたしの婚約者などまだまだ決めるつもりはないが」
あら、そうなの?
「でも、是非とも理由を知りたいよね?わたしに魅力がないのなら仕方ないが」
きゃー!!やっぱりそうなりますよね?はっ、大変、また隣でイデアーレ様が倒れそうになっている!
殿下の気持ちも分かりますが、とりあえずそのヒンター様と同じような裏のある笑顔をやめて貰ってもいいですか?!
「……フィス。そうじゃない。彼女たちは自分で仕事をしたいらしい」
ヒンター様が額に手を当てながら、諦めたように言った。その言葉に少し目を見開く殿下。
「仕事?」
「そう、仕事。彼女たちは結構な才女だろう?」
そう切り出し、ヒンター様は先ほどの話を綺麗に纏めて説明してくれた。ありがとう、説明上手。決して私たちが王家がどうのと言いたい訳ではないことも、さらりと話してくれた。助かります。
「なるほどね。お嬢様方の気持ちは分かったよ」
やったー!これは大きな一歩では?
「ありがとうござ……」
「でも、陛下が納得するかは分からないよ?特に、リリアンナ嬢」
「はい?」
お礼を言って畳み掛けようとすると、殿下に話を遮られた上に、名指しされる。えっ、怖い。
「だってそうだろう?……君は知ってる?紫光ほどの魔力量なんて、50年は王家でも出ていない。このわたしの濃紺でさえ、かなり久しぶりなんだ」
「さ、ようでございますか……。それは不勉強で」
知らんかった。大神官様が最近はいないって言うから!もうっ、年寄りの最近を真に受けたらいかんやつだった!
「微弱とはいえ、マリーア嬢の聖魔法も言わずもがな、だがな?」
殿下が爽やかと意地悪のギリギリの、つまり嫌な笑顔でニヤリとそう話す。顔に似合わず、いい性格してそうだな。
「イデアーレ嬢も魔力量も充分だし、何より天才だしな?……皆、この席の意味を全く考えなかった訳ではないだろう?」
殿下の言葉に沈黙が落ちる。さっきまでの賑やかさが嘘みたいだ。「まあ?わたくしも青光ほどの魔力量がございますし?公爵令嬢ですし?」と、グローリア様だけが元気だ。
「フィル、そうだけどまだ……」
「王家は……いいえ、このファーブル王国は、そんなに魔力量第一主義の考え方ですの?」
挑発されているような気がしないでもないけれど、何か、何だか、わたくし、ちょーっとばかし気に入らないですわ。
グローリア様はパアッと顔が輝いてウキウキし始め、片やイデアーレ様は緊張を思い出したようだ。私も改めて気を引き締める。
「……やっぱり」
殿下が近づいてきたところで、マリーアがボソッと呟くのが聞こえたが、上手く聞き取れなかった。
「マリーアお姉さま?どうかしましたか?」
「いえ、何でも。気にしないで」
いや、気になりますけれど。少し前にもヒンター様に怪訝な顔をしていらっしゃいましたが………………殿下にも、なかなかな顔をされていらっしゃるのですよ。どうした、マリーア!彼女は理由もなくこんな顔はしないはずだけれど。このままだと、さすがに…
「マリーア嬢。今は頼む」
と思って私が声をかけるより先に、ヒンター様がマリーアに声を掛けた。
「……失礼しました。承知致しました」
マリーアはそう言って、彼に優雅に微笑んだ。うん、美人。
すごく綺麗な笑みだ。……なのに何か怖いような……?
ーーーうん、私は触れないことにしよう。
これぞ正しく『君子危うきに近寄らず』だな。……マリーア相手のつもりはなかったのだけれど……。何事も想定外はつきものよ。仕方ない仕方ない。
「皆、お茶会は楽しんでいるかな?」
そうこうしているうちに、殿下がやって来て、優雅に腰かける。グローリア様が「はい!サーフィス様!」と満面の笑みで応え、私たちも「はい」と続く。
「ここは本当に賑やかだったよね。ヒンターがあんなに笑うなんて珍しいもの。わたしも知りたいな」
「サバンズ侯爵令嬢ご姉妹も、ドゥルキス伯爵令嬢も、王太子妃になる気がないというお話ですわ」
「グローリア!」
「何ですか?ヒンター兄さま。本当のことでしょう?」
「それは……」
殿下の爽やかな問い掛けに、さらっとグローリア様は爆弾を落とした。ヒンター様が慌てて止めるが、ツンとして返す。ちょっと強がりも感じるけれど、彼女はガッツリ王太子妃を目指しているのだろうから、当然と言えば当然だろう。
でも、確かに王太子妃は避けたいが、別に王家に逆らいたいとか協力しないとか、そんなつもりはないので……あんまり挑発的なのは困るんだよなあ。
「へぇ?そうなんだ?……わたしの婚約者などまだまだ決めるつもりはないが」
あら、そうなの?
「でも、是非とも理由を知りたいよね?わたしに魅力がないのなら仕方ないが」
きゃー!!やっぱりそうなりますよね?はっ、大変、また隣でイデアーレ様が倒れそうになっている!
殿下の気持ちも分かりますが、とりあえずそのヒンター様と同じような裏のある笑顔をやめて貰ってもいいですか?!
「……フィス。そうじゃない。彼女たちは自分で仕事をしたいらしい」
ヒンター様が額に手を当てながら、諦めたように言った。その言葉に少し目を見開く殿下。
「仕事?」
「そう、仕事。彼女たちは結構な才女だろう?」
そう切り出し、ヒンター様は先ほどの話を綺麗に纏めて説明してくれた。ありがとう、説明上手。決して私たちが王家がどうのと言いたい訳ではないことも、さらりと話してくれた。助かります。
「なるほどね。お嬢様方の気持ちは分かったよ」
やったー!これは大きな一歩では?
「ありがとうござ……」
「でも、陛下が納得するかは分からないよ?特に、リリアンナ嬢」
「はい?」
お礼を言って畳み掛けようとすると、殿下に話を遮られた上に、名指しされる。えっ、怖い。
「だってそうだろう?……君は知ってる?紫光ほどの魔力量なんて、50年は王家でも出ていない。このわたしの濃紺でさえ、かなり久しぶりなんだ」
「さ、ようでございますか……。それは不勉強で」
知らんかった。大神官様が最近はいないって言うから!もうっ、年寄りの最近を真に受けたらいかんやつだった!
「微弱とはいえ、マリーア嬢の聖魔法も言わずもがな、だがな?」
殿下が爽やかと意地悪のギリギリの、つまり嫌な笑顔でニヤリとそう話す。顔に似合わず、いい性格してそうだな。
「イデアーレ嬢も魔力量も充分だし、何より天才だしな?……皆、この席の意味を全く考えなかった訳ではないだろう?」
殿下の言葉に沈黙が落ちる。さっきまでの賑やかさが嘘みたいだ。「まあ?わたくしも青光ほどの魔力量がございますし?公爵令嬢ですし?」と、グローリア様だけが元気だ。
「フィル、そうだけどまだ……」
「王家は……いいえ、このファーブル王国は、そんなに魔力量第一主義の考え方ですの?」
挑発されているような気がしないでもないけれど、何か、何だか、わたくし、ちょーっとばかし気に入らないですわ。
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