私は仕事がしたいのです!

渡 幸美

文字の大きさ
71 / 92
番外編

ソフィアとシャロンの日常1

しおりを挟む
「シャロン~!辺境伯領うちから届いた薬草、ここに置くわね?」


「ありがと~、ソフィア!あ、こっちはこれ!ソフィアが試したがっていたデゼルト国の丸薬!仕入れられたわ」


「やったあ、ありがとう!」


「ちょっと集中して、実験しましょう」


「そうしましょう」


二人は満面の笑顔を交わし、それぞれ研究に没頭し始めた。


ここは王立病院内にある、薬学研究室。学園卒業後、ソフィアとシャロンが共に勤めている。


ソフィアの実家、ゴートン家はは辺境伯領なので、王都からは結構遠いが、広大な森と自然に囲まれており、薬草の宝庫だ。一方シャロンの実家、ルイーダ家は中堅商家。元々、他国の薬に強い。『ルピナスシリーズ』への参加で、更に手広く取引先が拡がった。


そんな二人の、お話。




「ソフィア、シャロン、そろそろランチの時間よ?休憩しましょう」


赤髪に琥珀色の瞳の、キリッと美人の女性が声をかけてくる。聖エミ出の同僚のフォレだ。


「ああ、もうそんな時間?フォレ、いつもありがとう」

ソフィアが手を止めて振り返る。

「ありがとー」

シャロンも続く。

「いいえぇ!二人のことは、エマ様に任されていますからね!」

イタズラっぽくウィンクするフォレ。見た目のイメージと違う少しのツンデレ感がいいわよね、と、二人は思っている。




「ん~!!病院内の食堂もいつも美味しい!ローズとエマ様々よね!」

魚介のパスタを頬張りながら、ソフィアが言う。


「ほんとよね。3つもお店入ったしね。二人が厳しいから、栄養のバランスもいいし」

シャロンは、野菜たっぷりのサンドイッチだ。


「この、お米も美味しいよね。遠い国の食材でしょ?よくご存知よね、お二人……」

フォレは、おにぎりセットだ。最近は、お味噌汁なるものまで付く。素晴らしい。


「はあ、それにしても先日のラインハルト殿下とエマ様の結婚式、素敵だったわよね!」

フォレがうっとりと思い出しながら話し出す。そう、3日前が二人の結婚式だった。

「フォレったら、毎日言ってる」

クスクスと笑いながら、ソフィアが言う。

シャロンも楽しそうだ。


「しばらく言うわよ!すっごく綺麗だったもの!お二人共幸せそうで……特に殿下のあの笑顔がもう!」

まあ、ハルト様はね、かなり待ったでしょうからね、と思いつつ、二人は笑顔で聞いている。


「二人は学園も同じだし、見慣れているだろうけれど!私にとっては想像もしていなかったもの!教会の中に入れて、お二人を見ることが出来るなんて!」

「うんうん」

「あ~、流してるわね、シャロン!私、『ルピナスシリーズ』に関われて、すっごく感謝してるのに!」


「流してないわよぅ、私たちだって感謝しているもの。『ルピナスシリーズ』と、そしてフォレに会えたこと」


「ほんとよね。両方とも大感謝よ」


「ちょ……そんな言われると、照れるじゃない…」


やっぱり可愛いな、と、二人は思った。


「でも私こそ、二人にも感謝よ。こんな対等に扱ってもらえるなんて、それこそ想像していなかったもの」


「「仕事仲間よ。当たり前だわ」」

二人が同時に言う。

「「それに、友だちだしね!」」


「ありがとう。やだ、昼間から泣きそう」


「ふふ、私たちは泣かれ慣れてるから、構わなくてよ~」

「シャロンたら。でも、確かにそうね」

「そうなの?!誰を?気になるけど!」

「可愛いエマとか……」

「エマ様?」

フォレが聞き返すと同時に、お昼終了の緩やかな鐘が鳴る。


「ああ、気になるのに~!」

「続きは今度ね。あ、今日、三人で夕食に行かない?明日はお休みだし、久しぶりに!」

「いいわね!行きたい!」

「行く!」

シャロンの言葉に、二人が賛成する。


「久しぶりに、懐かしの話でもしましょうか」

「そうね。それで、フォレの話も聞かせてね」

「わ、私?そんな面白くないわよ?」

「またまた~!聖エミで大人気だった話を小耳に挟んだわよ?」

ニヤッと、ソフィアが聞く。

「ええっ?!ない、ない!」

「まあまあ、お楽しみは夜に♪」

否定しようとするフォレを、更にニヤニヤ顔のシャロンが止める。



三人は、きゃあきゃあしながら、研究室に戻る。


長い夜は、これからだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。 エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。 ※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。

処理中です...