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亜利馬、カメラを回して目も回す
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しおりを挟む『渋谷で亜利馬くん発見! 一人でアイス食べてて笑ってしまった。思い切って声かけたら快く写真撮らせてくれました。握手とサインもありがとう! 亜利馬くんマジで応援してます!』
昼前の会議室。そんなSNSの投稿を俺に見せてくれたのは山野さんだった。
確かに昨日の帰りにソフトクリームを買って食べていた時、一人の男性に声をかけられたのを覚えている。すごく熱心に俺のDVDについて語ってくれたから、俺も嬉しかったんだ。
「着実にファンを増やしてるな。いい調子だぞ、亜利馬」
「何か信じられないです。俺の写真がこんな風にネットに出るって、不思議な気分」
山野さんがパソコンを閉じて言った。
「隠し撮りをアップされる場合もあるからな。お前は特に問題ないとは思うが、見られて困ることをしている瞬間を撮られたら最悪なことになる」
「見られて困るって、……うーん、不倫現場とか、賄賂の受け渡しとか、麻薬取引とかですか?」
「ドラマの見過ぎだ」
山野さんが説明してくれたのは、だいぶ前から今でもたまにSNS問題として取り上げられている、店舗などでの迷惑行為や、俺の場合は未成年の飲酒・喫煙などだ。
「俺は酒も煙草もやらないし、お店でそんな迷惑行為しませんよ」
「もちろん信頼しているさ。ブレイズでの飲み会もお前と大雅はコーラばっかり飲んでるしな」
そこで。……と、山野さんが俺に企画書を差し出した。
『突撃! 亜利馬のハッピー・ブレイズ・サプライズ』
「……何ですか、これ?」
「次の企画だ。サプライズをテーマに、ブレイズメンバーの隠し撮りを行なう。お前自身がカメラマンになって、メンバーの秘密を撮影してきてくれ」
「えぇっ! 隠し撮りって、そんな……盗撮は犯罪ですっ」
驚いて椅子の上で飛び上がると、山野さんが呆れたように溜息をついた。
「本物の盗撮な訳がないだろう」
「あ、じゃあメンバーは予め撮られるってこと知ってるんですか?」
「隠し撮りとは知らせていないし、メンバーが何をするかはお前には教えない。お前はカメラを片手に盗撮っぽく撮ってくれればいい。撮り終えたらネタバラシをしてくれ。当日はスタッフがお前のアシストをするから心配ない」
ドッキリ企画ということだろうか?
企画書を見る限りだと、第一日目のターゲットは獅琉。彼が撮影部屋で一人になったところを突然複数人の覆面男が乱入し、襲い掛かるという内容だ。俺は隠れてその様子を撮り、獅琉が射精したら出て行く。それだけなんだけど……。
「だ、大丈夫ですかね? 獅琉さんびっくりして相手を殴っちゃうんじゃ……」
「獅琉には『今日の撮影は突然行なわれるから気を抜くな』と伝える。ビックリ系には慣れている獅琉だから大丈夫だろう」
「なるほど……」
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