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第2章 水の都アクアエデンと氷の城
ファーレンの葛藤
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第二の街、アクアエデンについたスイたちは予定にしていたクランハウスを手に入れた。
思っていた以上に豪華なお宿に全員が尻込みしていたが、それも条件を聞いて満場一致で可決。
他にも候補はあったが、ここが一番いい場所で全員が気に入ったので即決を決めたカガリ。
部屋割りも決めてそれぞれがお宿の中を見て回っている時、ファーレンは決めた自室でベッドに座り周りを見渡していた。
部屋は天体をモチーフにしているらしく、壁や天井が星空になっている。
室内の家具も青や白で統一されていて、ソファの柄も星空、テーブルはクリアで星座が書かれていた。
「ファーレン、いるかしら?」
ノックの音と共に聞こえた声にファーレンははっと扉を見て慌てて駆け寄った。
「……アレイスターさん?」
「ええ!食べ物持ってきたわよー!お邪魔していいかしら?」
ちょっと困ったように笑って言ったアレイスターに、ファーレンは一呼吸置いてから扉を開けて中に促した。
「あら!素敵な部屋ね!!」
「星空、綺麗ですよね」
眩しそうに天井を見上げて言ったファーレンを見てからソファに座りテーブルに飲み物や食べ物を取り出した。
籠に入れられた焼きたての焼き菓子がいい香りを放っている。
「…………ゲーム、どう?クランにも慣れたかしら」
ジュースをとって聞いたアレイスターを見て、ファーレンはちょっと考えながら対面にあるソファに座った。
「…楽しいです。みんなでやるクエストとか、特に!」
クエストを思い出しているのか笑顔で言ったが、すぐに表情を暗くする。
「…みなさん、すごいなーって思います。前タクさんにもっと盾の動きを覚えるべきってチームで動いてる意識をって言われて意味わかんなかったんですけど、変則クエストしてなんとなくわかった気がします。」
「どう思ったのかしら」
「自分だけ独断で動いても迷惑かかるし、チームプレイが出来ない。それに、盾は守る役割なのに抜かされたり逆に守られたり。そう思うとたった1人でやってたカガリさん凄いですよね」
「カガリはねぇ、何よりみんなでするのが好きだから余計かしら。当たりきついかもしれないけどねぇ」
ふふっと笑って言うアレイスターはクッキーを口に入れた。
青いクッキーはココア味。
「あら、ココアだわー、ほら、食べてみて」
「…………おいしいです」
「良かったわ!」
サクサクと軽い音で口の中で溶けるようなクッキーをファーレンは見ていた。
「俺、あいつと同じでゲームちゃんとしたのこれが初めてなんです。チョコチョコしてたけど……その、リアルでできる状態じゃないので」
だから………
理解してない所もいっぱいある
そうじっとクッキーを見て言った。
「だから、ほんとはあいつをあんなバカにした言い方しちゃダメなんだけど。ちょっとあいつが、あいつの存在が………」
言葉を途切れさせたファーレンに、ゲームだし、あまりリアルを聞いてはいけないとアレイスターはどこまで踏み込むべきか考えていた。
「……………すいません、せっかく無理言って入れてもらったのに。」
「みんなが心配してるってことは、わかってるみたいだしねぇ。ただ、このクランでは仲良く!が絶対条件よ。そこは忘れちゃだめよ?」
「………はい」
「……………………仲良く、か。」
ゆっくりと目を開けた先は真っ白な病室だった。
病室のベットに横になりすぐ横には車椅子がある。
つい最近、無菌室から出てきた所だった。
両足のない少年は、なんとかベッドの柵をつかみ上半身を起こしただけで息が切れる。
少年は昔事故にあっていた。まだ、5歳の時である。
テレビで見たプロのサッカー選手に憧れた少年は、事故で足が潰れ救出までに時間が掛かった為、足を切断しないと命を落とす、そんな状態に陥っていた。
切り落とされた足、さらに感染症を患いもう片方の足も切り落とした。
少年はそれから無菌室に入ることになった。
まだ幼い少年には抵抗力が少なく、すぐに感染症を引き起こすのだ。
治ってはまた病気に、それを繰り返していた少年は、15歳で初めて一般病院へと移動した。
しかし、初めて無菌室から出た少年の体は弱っていてやはり病気とは離れられない。
「人間関係って難しいんだなぁ……」
年上の人の話をただハイハイと聞いていた少年は、上手くコミュニケーションが取れなくテレビでみた情報を元にゲームを楽しんでいた。
上手く自分をコントロールできないのだ。
動けないから、ゲームの中で動ける職種にした。
頼られるカガリが眩しく見えたから盾職に変更した。
あの、公式でみたフェアリーロードの仲間を思って戦い笑い合うあの姿に強烈に惹かれた。
だからこそ、そのフェアリーロードに贔屓されるスイに強烈な嫉妬と劣等感を覚えたのだ。
ファーレンである少年は、上手くやりたいのに出来ない葛藤にグッと胸元のパジャマを握った。
「……………謝らなきゃなぁ……わかってるんだけどなぁ………」
ぽすりとベッドに倒れた少年は窓から外を見た。
やっと見れた外の様子に美味しい食べ物。
クッキーは、あのアレイスターがくれたのが初めてだった。
「……美味しかったなぁ」
少年はある少女を思い出していた。
入院していた時、事故で運ばれてきた学生だった。
腕の怪我で大好きな楽器が弾けなくなった少女だった。
でも、切断はしなくていいし無事完治して退院していった。
「楽器かぁ、テレビでしか見たことないけどー」
入院中、運ばれた翠を見ていたこの少年は知らず知らずに翠と同じく現実に出来ないことをゲームでやろうとしていたのだった。
思っていた以上に豪華なお宿に全員が尻込みしていたが、それも条件を聞いて満場一致で可決。
他にも候補はあったが、ここが一番いい場所で全員が気に入ったので即決を決めたカガリ。
部屋割りも決めてそれぞれがお宿の中を見て回っている時、ファーレンは決めた自室でベッドに座り周りを見渡していた。
部屋は天体をモチーフにしているらしく、壁や天井が星空になっている。
室内の家具も青や白で統一されていて、ソファの柄も星空、テーブルはクリアで星座が書かれていた。
「ファーレン、いるかしら?」
ノックの音と共に聞こえた声にファーレンははっと扉を見て慌てて駆け寄った。
「……アレイスターさん?」
「ええ!食べ物持ってきたわよー!お邪魔していいかしら?」
ちょっと困ったように笑って言ったアレイスターに、ファーレンは一呼吸置いてから扉を開けて中に促した。
「あら!素敵な部屋ね!!」
「星空、綺麗ですよね」
眩しそうに天井を見上げて言ったファーレンを見てからソファに座りテーブルに飲み物や食べ物を取り出した。
籠に入れられた焼きたての焼き菓子がいい香りを放っている。
「…………ゲーム、どう?クランにも慣れたかしら」
ジュースをとって聞いたアレイスターを見て、ファーレンはちょっと考えながら対面にあるソファに座った。
「…楽しいです。みんなでやるクエストとか、特に!」
クエストを思い出しているのか笑顔で言ったが、すぐに表情を暗くする。
「…みなさん、すごいなーって思います。前タクさんにもっと盾の動きを覚えるべきってチームで動いてる意識をって言われて意味わかんなかったんですけど、変則クエストしてなんとなくわかった気がします。」
「どう思ったのかしら」
「自分だけ独断で動いても迷惑かかるし、チームプレイが出来ない。それに、盾は守る役割なのに抜かされたり逆に守られたり。そう思うとたった1人でやってたカガリさん凄いですよね」
「カガリはねぇ、何よりみんなでするのが好きだから余計かしら。当たりきついかもしれないけどねぇ」
ふふっと笑って言うアレイスターはクッキーを口に入れた。
青いクッキーはココア味。
「あら、ココアだわー、ほら、食べてみて」
「…………おいしいです」
「良かったわ!」
サクサクと軽い音で口の中で溶けるようなクッキーをファーレンは見ていた。
「俺、あいつと同じでゲームちゃんとしたのこれが初めてなんです。チョコチョコしてたけど……その、リアルでできる状態じゃないので」
だから………
理解してない所もいっぱいある
そうじっとクッキーを見て言った。
「だから、ほんとはあいつをあんなバカにした言い方しちゃダメなんだけど。ちょっとあいつが、あいつの存在が………」
言葉を途切れさせたファーレンに、ゲームだし、あまりリアルを聞いてはいけないとアレイスターはどこまで踏み込むべきか考えていた。
「……………すいません、せっかく無理言って入れてもらったのに。」
「みんなが心配してるってことは、わかってるみたいだしねぇ。ただ、このクランでは仲良く!が絶対条件よ。そこは忘れちゃだめよ?」
「………はい」
「……………………仲良く、か。」
ゆっくりと目を開けた先は真っ白な病室だった。
病室のベットに横になりすぐ横には車椅子がある。
つい最近、無菌室から出てきた所だった。
両足のない少年は、なんとかベッドの柵をつかみ上半身を起こしただけで息が切れる。
少年は昔事故にあっていた。まだ、5歳の時である。
テレビで見たプロのサッカー選手に憧れた少年は、事故で足が潰れ救出までに時間が掛かった為、足を切断しないと命を落とす、そんな状態に陥っていた。
切り落とされた足、さらに感染症を患いもう片方の足も切り落とした。
少年はそれから無菌室に入ることになった。
まだ幼い少年には抵抗力が少なく、すぐに感染症を引き起こすのだ。
治ってはまた病気に、それを繰り返していた少年は、15歳で初めて一般病院へと移動した。
しかし、初めて無菌室から出た少年の体は弱っていてやはり病気とは離れられない。
「人間関係って難しいんだなぁ……」
年上の人の話をただハイハイと聞いていた少年は、上手くコミュニケーションが取れなくテレビでみた情報を元にゲームを楽しんでいた。
上手く自分をコントロールできないのだ。
動けないから、ゲームの中で動ける職種にした。
頼られるカガリが眩しく見えたから盾職に変更した。
あの、公式でみたフェアリーロードの仲間を思って戦い笑い合うあの姿に強烈に惹かれた。
だからこそ、そのフェアリーロードに贔屓されるスイに強烈な嫉妬と劣等感を覚えたのだ。
ファーレンである少年は、上手くやりたいのに出来ない葛藤にグッと胸元のパジャマを握った。
「……………謝らなきゃなぁ……わかってるんだけどなぁ………」
ぽすりとベッドに倒れた少年は窓から外を見た。
やっと見れた外の様子に美味しい食べ物。
クッキーは、あのアレイスターがくれたのが初めてだった。
「……美味しかったなぁ」
少年はある少女を思い出していた。
入院していた時、事故で運ばれてきた学生だった。
腕の怪我で大好きな楽器が弾けなくなった少女だった。
でも、切断はしなくていいし無事完治して退院していった。
「楽器かぁ、テレビでしか見たことないけどー」
入院中、運ばれた翠を見ていたこの少年は知らず知らずに翠と同じく現実に出来ないことをゲームでやろうとしていたのだった。
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